友人が嘘をついていたことが結婚式で発覚した件
人生山あり谷あり。自分が今、山の方にいるのか谷の方にいるのか、自分で分からなくなることもよくある。
そういう話をする。
①ナナコの彼氏
私は、中学生の頃にコバルト文庫の「ちょー」シリーズが好きになり、HPで二次絵や二次小説を漁っていた時期があった。そのときに、ファンHPを主催していたナナコ(仮称)と知り合いになり、同じ年齢であることが分かり、会って遊ぶようになり、とても仲の良い友達になった。
ところが仲良くなって数年後、ナナコからビックリするような告白をされる。ナナコには、発達障害や知的障害、統合失調症や癲癇などの精神疾患があり、障碍者手帳も取得していると言うのだ。
とはいえ、障碍者と友達になったわけではなく、友達が障碍者だっただけで、それからも今まで通り仲良く過ごしていた。ナナコに障碍者っぽいところがあるわけでもなく、私は何ならナナコが障碍者だっていうことを忘れていることすらあった。
そしてある日、私はナナコから、「彼氏が福井に引っ越すことになったから、私も一緒についていこうと思うの」と教えてもらう。私は、「よかったね、それって結婚前提の同棲ってこと?」と言うと、ナナコは「結婚まで考えてくれているかは分からない…」と不安そうに言うので、良かれと思って、「私が彼氏を押してあげるよ!」と安請け合いした。
そして渋谷の居酒屋で、私とナナコ、そしてナナコの彼氏と初顔合わせがあった。
宴もたけなわになった頃、私は「ナナコと福井で同棲するって聞いたんですけど」と切り込んだ。
ナナコの彼氏は、「同棲するっていうか、一緒に住むのもありかなって」と訳の分からないことを言ったので、「それを同棲って言うんじゃないですかw同棲するってことは結婚まで考えていらっしゃるんですか?」と聞くと、ナナコの彼氏は「えっ結婚?あ、そうか…それもいいかもね」と驚くことにかなり前向きな姿勢を見せた。そして私はナナコに「良かったね」と言ってニコニコ3人でお鍋をつついてお酒を楽しんだ。
②異変
ナナコが彼氏と福井で同居し始めてからしばらくして、結婚式を沖縄でする、参加してくれないかとナナコから連絡が入った。私は「もちろん、喜んで!」と伝えた。ただし、一つ気になっていたことがあって、それはちゃんとナナコに聞いた。「最低でも彼氏には、障害のこと話しているんだよね?」ナナコは服薬が不安定だったので、一緒に暮らすようになったら彼氏のサポートがあったほうが絶対によかった。
ナナコは明るく、「もちろん話したよ!彼氏の親にも話したよ」と言ったので、私は安心して結婚式に参加することにした。
結婚式まで何度も他愛もない話を電話して、しばらくすると、なんとナナコは、「彼氏がSHINOと喋りたいことがあるって言ってるんだけど、何の用なの?」と言い出した。結婚を控えた友達の彼氏と仲良くする女友達って、地雷でしかないと思った私は、「えっ、ナナコに話せないような用はないよ!私からナナコの彼氏に話したいことはないし、遠慮するね」と答えた。
それなのに、それから何度も、ナナコを通して、「彼氏がSHINOと話をしたいって」と言われた。あまりにも何度も言ってくるので執念のようなものを感じて、一体何の用だろうと電話に出ることにしたところ、「あ、今はいない」と言われ拍子抜けした。「それならもう結婚式のときしか時間ないと伝えて」とお願いして、結婚式前日に沖縄入りした。
③発覚
結婚式当日はすごくいい天気で、沖縄の海がきれいに映えた。ところが会場で、私は変な話を聞くことになる。
それは会場スタッフさんたちが話していたことなんだけど、なんでも「新婦のドレスのランクを最低のままにした夫婦の結婚式…」「それがなんだか…」という話だった。ん?まさか、ナナコのこと?
とはいえ、ナナコは働くことができていない中、本人の希望通りの沖縄ウェディングだったので、彼氏がお金を全額出したことは間違いない。ドレスのランクなんかともかく、本人が幸せならいい。そう思った。
そんな不穏な話はともかくとして、結婚式は無事に終わった。
披露宴(とはいえ、新婦の友人は私だけで、一つの食卓を囲むアットホームな感じ)があり、新郎の妹がナナコを質問攻めにした。
「A大学を出た後、B大学の大学院を出られたんですよね!?何を専門にしていらっしゃったんですか?」
私はとても驚いた。なぜならその経歴は私の経歴だったから。
実は前日、ナナコが遊びに来ていて、処方薬を飲もうとしないので、なだめすかして飲ませるのに時間がかかって、あんまり寝ていなかった。そのせいで判断能力がいつもより低くて、私は言ってしまった。
「えっ、それ私の経歴ですよ。ナナコはC女子短を卒業しています」
そしたらなんと、ナナコの父親が驚くようなことを言った。
「初めて聞いた。ナナコは高校も卒業していないけど」
えっ!!!???
じゃあ、私が散々聞いた大学の部活動の話は?
大学の部活動で知り合った元カレを後輩と取り合って、後輩から「魔性の女」って陰口叩かれて泣いてた話は??
私は唖然として言葉を失った。私が今まで聞いていたナナコの話は、ほぼ全てがナナコの妄想だった。
私は披露宴の最中、新郎のご家族やご友人の顔を見ることができず、ずっと俯いていた。恥ずかしかった。友人として結婚式に参列するっていうのは、そういうことだよね。
ていうか私は一体誰と友達だったんだろう。「ちょー」のHPは、本当に彼女のHPだったのか?そこから疑わしくなった。BBSやなりチャで、ナナコが「この人は管理人じゃない」とか言われていたのを思い出してしまったから。乗っ取りってやつだったのかもしれない。
そして結婚式のすぐ後、控室に新郎から呼び出されてこう言われた。(ちなみに会場スタッフさんも一緒だったので、二人きりではない。)
「お前のせいで結婚しないといけなくなった。こんな女と結婚なんかしたくなかった。知っているのか?この女、風呂にも入らないんだぞ。どうなってんだ」
ナナコに訳を聞こうにも、この話になると「ウーッ!」と動物のように唸るばかりで全く話にならない。
私が信じていた友人は、幻想でできていたわけだ。私は、ナナコに重い障害があるということを目の当たりにして、ようやく理解した。
何度もナナコと話し合おうとして失敗を繰り返し(多分ナナコは福井に行ったことを機に服薬を完全にやめたんだと思う)、ナナコの夫に「ナナコには障害があるから、ちゃんと薬を飲ませないと大変なことになる。結婚したんだから支えてあげてほしい」と言った。ナナコの夫は、「障害があるのは見てたら何となくわかる。でもナナコの面倒を見ることはない。そんなこと言うならお前が面倒を見ろ。」
その態度にカチーンと来た。
私はナナコの夫に伝えた。「ナナコとは全然話せないし、それなのにブログとかは更新しているし、私が聞いた話は全部嘘だった。もう付き合いきれない。ナナコのことはあなたに任せる。今後電話をかけてこられるのは困るので、電話番号を変える」ナナコの夫は「それは困る」とわめいていたけど、知ったことじゃない。
私はナナコとナナコの夫の連絡先をスマホから削除し、電話番号を変えた。
ちなみに結婚式会場でスタッフさんが言っていた話はナナコの話だった。結婚式会場を予約するときから仲がこじれていたらしく、会場スタッフさんの目の前で、彼氏がナナコに「お前にかける金はない」と発言したらしい。会場スタッフさんは「破談にしたほうがマシよ!この会場で一番先行きが暗い夫婦になる」と言っていたのだった。
人間は信じたいものを信じる。そして、自分の人生は自分で責任を取るしか無いってことを、この経験を思い出す度にしみじみ痛み入るなぁ。