住めば都
もうすぐ大分市を離れる。
約半年間、大分のボロアパートで生活した。
ワンルーム4畳半くらい。入居して2日目でゴキブリが5匹出た部屋。
外には蜂の巣があって、エアコンは効かないし、風は出るが黒い塊が落ちてくる。
トイレは水漏れ、風呂場の換気扇からは黒い汁。
台所は元々生ゴミの臭い。
そんな部屋。
そんな部屋でも半年も過ごせば、もっと言えば3ヶ月も暮らせば自分の城になる。
自分の城になれば愛着も沸く。
近所の飯屋も俺の城下町に。
そして近所の風景、匂い、そして夕方の学生たちの下校姿もさえ、1つの記憶になる。住めば都よ。
以前、熊本県の田舎にある元空き家のボロ家で数ヶ月生活したことがある。そこに住んでた事情は複雑だから端折るが、元廃墟を自分と知り合いとで改装して住めるようにした。回りは田畑と荒れ地の小ジャングル。
んで元廃墟なだけあって、所々ガタがあって、そこも雨漏りや虫はよく出た。大分の部屋より全然マシだが。
でも数ヶ月も暮らせばそこは俺の城。自分の生活パターンの形に部屋のあれこれが当てはまってくる。
部屋はあくまで柔らかい粘土。そこで生活してたら次第に自分の形に部屋は出来上がってくる。
家や部屋が人に合わせてくれるのだ。
今でもあの時の蒸し暑さ、夜の虫の鳴き声と広い夜空を覚えている。
また以前。一人暮らしで田舎ではそこそこ良いアパートで暮らしてた。
3階建ての3階。綺麗な4DK。一人暮らしには勿体無い部屋。静かで落ち着いた、立派なお城だった。
やっぱりちゃんとしたアパートなだけあって、住み心地は歴代最高だった。
あれからはボロい所にしか住んでないから、なお優雅な生活をしてたような感じがする。
俺は人生で7回も家を移ってて、綺麗な家もボロい家も元廃墟でも暮らしてきたが、それでの結論は、住んでたら慣れる。住めば都だということ。
もちろんゴキブリが出るようなボロ家にはもうあんまり住みたくないが(笑)
まあ住んでみるとなんとかなることも分かっている。
色んな経験をしてみると、知ることが出来る。
知ることが出来ると不安がなくなる。
不安がなくなると選択肢が増える。
選択肢が増えると生きやすくなる。
住めば都。