プラスチック汚染とは 第3章「世界の現状」
皆様こんにちは、
「Human Natures(ヒューマン・ネイチャーズ)※」です。
Human Naturesは「仕事・身体・地球の環境を改善する」をテーマに製品の企画及び開発を行っております。
以前より『プラスチック汚染』と題し、投稿を行っております。
今回はその第三弾の発信となります。
現在の状況を知る上で大変興味深い話ですので、最後まで読んでいただければ幸いです。
ー 目次 ー
第3章「世界の現状」
└(1)先進国によるプラごみの輸出
└(2)レジ袋・ポリ袋規制
└ [a] アメリカ
└ [b] ヨーロッパ
└ [c] 規制が厳しい国
└(3)世界のリサイクル事情
└ [a] ドイツ
└ [b] スウェーデン
└ [c] スロベニア
└ [d] アメリカ
└ (4)進まないリサイクル
└ [a] アップサイクル・ダウンサイクル
└ [b] 多種多様
└ [c] 複合樹脂
第3章 「世界の現状」
(1) 先進国によるプラごみの輸出
プラスチックを自国で作るには、石油プラントの建設が必要です。
ただそれよりもプラごみを輸入して再生した方が効率が良いため、1990年代以降、アジアやアフリカの一部の国々は、欧米や日本から資源として、プラごみを輸入し続けてきました。
なかでも中国はプラごみの輸入大国で、1992年から2016年までのプラごみの全世界輸入量のうち、45%を中国が占めていたといいます。
2016年のみのデータを見てみましょう。
1年間の中国のプラごみ輸入量は713万トン。
日本をはじめ、先進国はプラごみを輸出に頼っている(押し付けている??)事がわかります。
※タイは先進国から輸入したごみの一部を再度中国に輸出した結果、上位になっていると思われます
しかし、輸入されたごみの中には、
・汚れているもの
・分別されていないもの
など、そのままではリサイクルできないものも多く含まれていたといいます。
リサイクルを行うために、洗ったり、分別し直したりする作業は基本的には人の手で行う作業になりますが、量が多すぎて放置されるものも多かったようです。
結果、輸入したものの処理しきれなくなってしまったプラごみは…
・野焼きにされた結果、有害物質を発生させる
・川に流れ出て海洋汚染の原因となる
など、深刻な状況が何年も続いていました。
そのようの状況に加え、急激な経済成長で自国のプラごみへの対処に追われ出したこともあり、中国は2018年から廃棄物の輸入規制に乗り出し、2021年からはすべての廃棄物の輸入を禁止しています。
しかし、
一部の地方では環境保護より経済発展を優先する考えが根強く、利益のために海外ごみの密輸に走る悪質企業も絶えず、規制後も密輸や不正輸入が横行しています。
一方、
中国の規制によるしわ寄せで、プラごみ輸入が増えた東南アジア諸国では…
・多くのリサイクル工場が環境規制を守らないまま稼働
・違法工場が密集する地域で水質汚染の深刻化
など、様々な問題がでてきていました。
これに伴い、東南アジア諸国も次々と輸入禁止を発表しています。
また、「輸入された廃プラスチック」による環境影響の問題を受けて、2019年の国際会議での決定により「リサイクルに適さない汚れたプラスチックごみ」は、国外へ輸出する事ができなくなりました。
(輸入国の許可があれば可能)
これにより、今までプラごみを輸出に頼っていた先進国は、自国でのプラごみの処理を行わなくてはいけなくなり、対応を迫られています。
両者ともに、廃プラや紙くずといった廃棄物を固めてつくられた燃料で、その発熱量や価格の低さ、石炭と比べて二酸化炭素の排出量が少ないことから、石炭の代替燃料として注目されており、大手製紙会社や鉄鋼会社などで既に利用されているといいます。
(2) レジ袋・ポリ袋規制
全世界で消費されているレジ袋は、年間1~5兆枚で、日本だけでも年間300~500億枚も使用されています。
日本ではレジ袋の有料化が2020年に始まりましたが、世界の国々はどのような状況なのでしょうか。
【世界のレジ袋規制状況は?】
2019年の時点で120か国以上の国がレジ袋の禁止・有料化を実施していると言われています。
[a] アメリカ
一人あたりの容器包装プラごみ世界第1位のアメリカは、レジ袋の取り扱いについての対応は州によって異なっています。
リサイクルの実施に重点を置いている州もあれば、無料のレジ袋配布を禁止、もしくは有料制にしている州もあります。
他にも、ワシントンDC・ハワイ州なども条例を制定・施行していますが、まだまだ規制は一部の地域に限られている現状です。
[b] ヨーロッパ
ヨーロッパではEUが加盟国に対して取るべき措置を取り決め、2015年に指令として発布しました。
具体的には、軽量のプラスチック製レジ袋の1人あたりの年間使用量を2019年までに90枚以下、2025年末までに40枚以下に削減することが求められています。
[c] 規制が厳しい国
アジア・アフリカなどの発展途上国は、「有料化」ではなくより厳しい禁止措置をとる国が多くなっています。
その理由は、途上国はごみ処理場の設備が充分ではなく、
・空き地に投げ捨てられたごみの山が崩落して、死亡者が出る事故が発生
・羊や牛が放置されているごみを食べてしまい死亡する
など様々な問題が起こっているからだと言います。
ただ、この問題を解決しようと、ごみ処理場の建設や、分別ルールの徹底を行うには時間やコストがかかってしまいます。
その結果、「ごみのもとを作らない社会をつくる方が早い」という判断をする国が多く、現在アフリカ54カ国のうち、約30カ国がレジ袋規制を導入しているとの事です。
● 世界初のレジ袋禁止国
2002年、世界で初めてポリ袋使用禁止の法律を施行したのは、バングラデシュです。
Q.なぜ、いち早く取り組んだの?
1988年の大洪水の一因が、捨てられた大量のポリ袋が排水管をつまらせたことだったため、早々に法律の整備が進められたとの事です。
●世界で最も厳しいポリ袋禁止令
2017年から、ケニアではポリ袋が法的に禁止となりました。
製造・販売・輸入は当然ながら、使用した場合も最長で4年の禁固刑か最高4万ドルの罰金刑となる可能性があり「世界で最も厳しいポリ袋禁止令」といわれています。
Q.なぜこんなに厳しいの?
ケニアの首都ナイロビでは、常に路上にビニール袋が散乱しており、その結果、排水口に詰まり水が流れなくなったり、飼育されていた肉牛の胃の中から大量のビニール袋が検出されるなど、市民の食にもリスクが及んだりと、常にごみ問題に悩まされていたといいます。
以前よりその対策には取り組んでおり、2007年には製造業者や輸入業者に対して、厚さ30ミクロン以上のポリ袋のみ使用可能という制限を設けました。
その4年後も、厚さ制限をよりリサイクルしやすいと言われる60ミクロンに引き上げました。
しかし、「一般市民がポリ袋の厚さの違いを判別できない」という理由で失敗に終わり、2017年の禁止令の施行に至ったといいます。
(3) 世界のリサイクル事情
世界のごみ全般のリサイクル率を比較してみると、他の国々と比べ、ヨーロッパ諸国が極めて高い事がわかります。
特に、ドイツとスウェーデンは、環境先進国として知られ、早くからリサイクルに取り組んでいます。
また最近では、スロベニアの取り組みにも注目が集まっています。
それぞれの具体的な取り組みを紹介していきましょう。
[a] ドイツ
ドイツでは、街のあちこちにごみ箱があったり、幼稚園に入る前からゴミの分別や再利用についてのしつけがされていたり、さらにデポジット制・緑のマークなど様々な取り組みが定着しています。
[b] スウェーデン
「廃プラスチックについて vol.3」にて日本のサーマルリサイクル率の高さについての投稿を行いましたが、同じようにサーマルリサイクル率が高いのがスウェーデンです。
日本のサーマルリサイクル率は約58%、スウェーデンのサーマルリサイクル率は約53%となっていますが、それぞれの中身は少し異なるようです。
● 日本の場合
日本では、ごみの排出量が多く、燃やすことが第一優先になっており、発電は二の次になっています。
そもそも現行の焼却炉はダイオキシン対策を第一の目的に約20年前に建設されたものであり、サーマルリサイクルを目的につくられたものではありません。
したがって、エネルギー効率の低いものや小規模発電所が多く、またごみ発電によるエネルギー利用も主に温水プールなどの公共施設に限られています。
● スウェーデンの場合
スウェーデンでは、ごみの輸入や廃棄は民間企業が行いますが、その過程で発生した熱エネルギーは、国が管轄するインフラを通して、各家庭に供給されます。
スウェーデンは1904年よりごみ発電始めたとされており、100年以上かけて確立されたネットワークを利用し、廃棄施設の熱エネルギーを最大限に活用できているとのことです。
具体的には、ごみ発電によりスウェーデン全体の地域暖房用熱エネルギーの20%(25万人の家庭の1年間に必要な電気)を生産しています。
また、スウェーデンではなによりも環境を優先する文化が国民の意識下にしっかりと根付いており、環境教育が4才から始まる義務教育になっています。
国としての制度も整備されており、もともとごみの排出量が少ない国である上に、上記のようにごみをエネルギーに変換するしっかりとした技術・システムがあります。
その結果、ごみの排出量よりごみ処理能力が上回っている状況が続いており、自国だけでは発電用のごみが足らず、周辺国からごみを輸入するほどにまでなっています。
[c] スロベニア
スロベニアの首都リュブリャナは、以前よりごみ問題への取り組みを行っていましたが、2014年に欧州で初めて「zero-waste」を目標に設定した事により、さらに注目されるようになりました。
リュブリャナ市では、色とりどりの四角いボックスが街なかでよく見かけられます。
これは2008年に中心街のゴミ収集プロセスの効率化及び景観向上のために設置されたゴミ箱です。
また、2011年よりゴミ処理プロセス及びインフラ整備の近代化を加速させた結果、現在では約60%のゴミの分別回収率となっています。(EU平均は約20%)
また、リュブリャナ市には、スロベニア全体の3分の1のゴミを加工処理する大型ゴミ処理センターも整備されており、先端技術を使用したリサイクルが可能であるとのことです。
その結果、2019年には1人あたり年間ごみ排出量を115kg(日本は約350kg)に抑えています。
市民へ分別を徹底させ、ごみの大部分をリサイクルする事で廃棄量を大幅に削減することが可能である事を示したリュブリャナは、2016年に「欧州グリーン首都」賞を受賞しており、他の都市のモデルとなるとされています。
[d] アメリカ
世界有数のごみ排出国のアメリカを中心にカナダ・ロシア・中国などの国土の広い国は、リサイクル率が低く、埋め立てが半分以上を占めている国が多い現状です。
レジ袋やポリ袋の規制をカリフォルニア州・ニューヨーク州・ワシントンDC・ハワイ州などが進めるなど、ごみ政策に積極的に取り組む州や都市は徐々に増えており、特にカリフォルニア州では全米屈指のリサイクル率50%を達成しているといいます。
しかし、アメリカ全体で見てみると、まだまだ埋め立てに頼っている現状が続いており、2015年のデータによるとのプラスチックのリサイクル率はわずか9%程度にとどまっています。
また、そこにきて中国のプラごみ輸入禁止という発表があり、今まで中国に売っていた大量のプラごみを自国でリサイクルしなければならなくなり、リサイクル費用が高騰しています。
買い手が少ないため、リサイクル業者はその分減った利益を埋め合わせようと、自治体への請求額を増やしており、自治体の中には、業者に支払ったリサイクル費が4倍に跳ね上がった市もあるといいます。
このように現在のアメリカではリサイクル事業が行き詰まりをみせています。
(4) 進まないリサイクル
第1章で述べたように、全世界のプラスチックのリサイクル率はわずか9%です。
リサイクルがなかなか進まない理由はさまざまです。
[a] アップサイクル・ダウンサイクル
技術の進歩で様々なプラスチックを再生する事が可能になりました。
ただし今の技術では、再生されたプラスチックは「質の落ちたもの」になる事が多く、1,2回リサイクルされた後に、結局は処分されてしまう事がリサイクルが進まない原因の一つとされています。
このようなリサイクルを「ダウンサイクル」といいます。
それに対して、素材の品質や機能を低下させることなく、何度もリサイクルする事を「アップサイクル」といいます。
[b] 多種多様
今まで100種類近くのプラスチックが開発され、現在約70種のプラスチックが使われているといわれています。
リサイクルを行うためには、同じ種類のプラスチックを集める必要があります。
海外では分別をしやすくするように製品に1番から7番の識別コードを表示させていますが、それも国によって様々で、結局手作業で行わなくてはならないのが現状です。
[c] 複合樹脂
ただでさえ種類が多いプラスチックですが、それを複数組み合わせて作るプラスチックも多く使用されている事が、さらにリサイクルを難しくしています。
例えば、食品包装用のフィルムは、「空気遮断性のあるナイロン+防湿性のあるポリエチレン」など、中に入れる食品に応じて異なる特性をもつ素材が何層にも重ねられています。
こうしたものは、単一のモノに比べてリサイクルしにくく、またそこに添加剤なども使用されていると、リサイクルはさらに難しくなります。
本日は以上です。
次回は「バイオプラスチック」について投稿を行う予定です。
またお会いいたしましょう。
さようなら。
有本 康充
※「仕事環境・身体の環境・地球環境を改善する」をテーマに製品の企画及び開発を行っておりますブランドです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?