新しい家族(瑞稀)
私、瑞稀は今日から新しい家族と暮らすことになった。
父が再婚して、新しい母と、その息子である勇気と一緒に生活する。初めて顔を合わせた勇気は、私より五歳年下の十二歳。最初はどう接すればいいのか少し戸惑ったけど、彼は私をじっと見つめながらも、少し緊張しているようだった。
「瑞稀です。これからよろしくね」
私はできるだけ優しく微笑みながら挨拶した。勇気は小さく頷いたけれど、まだ距離感をつかめていないようだった。
新しい家での生活は、最初はぎこちなかったけれど、次第に勇気と会話する機会が増えていった。私が朝起こしたり、一緒に買い物に行ったり、何気ない会話を交わすうちに、少しずつだけど、お互いに慣れてきた。
ある日、勇気が私を自分の部屋に誘った。
「あのさ、ゲーム好き?」
「うん? まあ、嫌いじゃないけど」
「一緒にやろうよ!」
渡されたコントローラーを握ると、勇気の目がキラキラと輝いているのが分かった。彼の好きなアクションゲームで対戦してみると、思った以上に楽しくて、つい夢中になってしまった。
「やった! 勝った!」
「むむっ、次は負けないよ!」
こうしてゲームを通じて、私たちは少しずつ距離を縮めていった。
そしてある日。
「勇気、今日は私の好きなゲームをしよう!」
「え? 瑞稀の好きなゲーム?」
そう言って取り出したのは、私が大好きなプロレスゲームだった。
「プロレス……?」
「うん! すっごく楽しいよ!」
最初は戸惑っていた勇気も、ゲームが始まると一生懸命プレイしていた。でも、私の圧倒的な強さの前では、全然歯が立たなかったみたい。
「ちょ、ちょっと待って! 強すぎる!」
「あはは、私、こういうゲーム得意なんだ♪」
私はソファに座り、ルームウェアのショートパンツ姿でリラックスしながら、ゲームの世界で華麗な技を決めていく。するとふと、ある考えが浮かんだ。
「よし、せっかくだし、実際にやってみよう!」
「えっ?」
ニッコリ笑ってみせると、勇気は一瞬驚いたような顔をした。だけど、私は構わず彼の腕を取り、ベッドの上に押し倒した。
「まずは、キャメルクラッチ!」
私は勇気の背中にまたがり、両腕を取って自分の太ももに引っ掛ける。そして、彼の顎に手をかけてゆっくりと持ち上げた。
「よし、いくよ〜」
最初は軽く引いたけれど、次第にしっかり力を入れていく。勇気の背中が反り返り、苦しそうに声を上げた。
「ぐ、ぐぬぬ……! く、苦しい……!」
「これがキャメルクラッチ! こうやって相手の体を反らせて降参させるんだよ♪」
私はゲームのキャラクターのように決めポーズを取るつもりで、しっかり技をかけた。勇気はじたばたと抵抗したけれど、結局「もう無理!」とギブアップした。
「ふふっ、いい感じじゃん! じゃあ次はスリーパーホールド!」
「え、待っ……!」
すぐに勇気の背後に回り、首に腕を巻きつけて締め上げた。
「スリーパーホールドはね、こうやって相手の首を締めて、じわじわと動けなくさせる技なんだよ♪」
少しずつ力を加えていくと、勇気の抵抗が弱くなっていく。彼の手が力なく私の腕を叩いたのを感じて、私は腕を緩めた。
「うんうん、ちゃんとタップしたね♪」
勇気は床に崩れ落ち、荒い息をついていた。
「た、楽しくない……」
「そんなこと言わないでよ! ね、またやろうよ!」
私は笑いながら彼を見下ろした。最初は戸惑っていた勇気も、だんだんとこの生活に馴染んできたみたい。
(うん、なんだかんだで、いい弟になりそう♪)
そう思いながら、私は新しい家族との日々を楽しみにするのだった。