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人事と経営企画の双方から見た「人的資本経営」のリアルな今―富士通平松氏×オイシックス・ラ・大地三浦氏と語る―

2022年は「人的資本経営元年」とも呼ばれ、経産省が「人材版伊藤レポート2.0」を公表。2023年3月期決算からは、上場企業などを対象として人的資本の情報開示が義務化され、人的資本経営は日本企業にとって不可欠なものとなってきている。しかし、経営戦略と人材戦略の連動、データ活用など、推進に向けたハードルは決して低いものではなく、多くの企業がまだ手探りで進めているのが実情だ。そこで今回は、人事と経営企画の面からそれぞれ人的資本経営をリードしている富士通株式会社 執行役員EVP CHRO 平松浩樹氏と、オイシックス・ラ・大地株式会社 経営企画本部 経営企画部 部長 三浦孝文氏を招き、HRBrain  執行役員 ビジネス統括本部本部長/人的資本TIMES編集長 吉田 達揮が人的資本経営のリアルな現況を伺いながら、そこから見えてくる気づきやヒントを解き明かす。

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人事と経営企画の双方から見た「人的資本経営」のリアルな今―富士通平松氏×オイシックス・ラ・大地三浦氏と語る―


プロフィール

平松 浩樹 氏
富士通株式会社 執行役員 EVP  CHRO
1989年、富士通株式会社に入社。主に営業部門の人事担当として、目標管理制度の運用、ローテーション制度、組合対応等を担当。2009年より、役員人事の担当部長として、指名報酬委員会の立ち上げに参画。2015年より営業部門の人事部長として、営業部門の働き方改革を推進。2018年より人事本部人事部長として、タレントマネジメントや幹部社員人事制度企画、ジョブ型人事制度の企画を主導。2020年より執行役員常務として、ジョブ型人事制度やニューノーマル時代の働き方・オフィス改革に取り組んでいる。2021年より現職。
 
三浦 孝文 氏
オイシックス・ラ・大地株式会社 経営企画本部 経営企画部 部長
大分県別府市出身。関西学院大学を卒業後、(株)D2C、クックパッド(株)での人事経験を経て、2017年1月より現職入社。HR本部人材企画室の責任者を経て、現在は経営企画本部内にて全社の中期経営計画や各部門の年度戦略の策定支援、経営にひもづく会議体の事務局など、マネジメントシステムの進化・仕組みづくりを担当。社外では兼業で(株)GlocalKの組織経営アドバイザリー、人事コミュニティ「人事ごった煮会」の発起人。
 
吉田 達揮
株式会社HRBrain 執行役員 ビジネス統括本部 本部長/人的資本TIMES編集長
新卒で東証プライム 総合人材サービス企業に入社。2020年HRBrainに入社。人事制度コンサルティング部門の立ち上げから大手企業向けのクラウド営業に従事。以後、事業企画にてゼネラルマネージャーとして全社戦略の策定・推進を担当。その後、組織診断サーベイ「EX Intelligence」を提供しているEX事業本部の立ち上げを担当。2022年4月に執行役員へ就任。2023年4月よりビジネス統括本部の本部長として全体を統括。「人的資本TIMES」の編集長も兼務。
 

富士通とオイシックス・ラ・大地の「人的資本経営」における取り組みの今


吉田:近年、人的資本経営や人的資本開示について、私たちHRBrainも色々な企業様からご相談を頂くようになりました。経営戦略と人材戦略の連動やデータ活用など実施に向けたハードルは決して低くなく、手探り状態の企業が多い現状もふまえ、今回、人的資本経営を人事と経営企画の面からそれぞれリードされている富士通株式会社の平松様と、オイシックス・ラ・大地株式会社の三浦様をお迎えし、人的資本経営のリアルな現況を伺いながら、そこから見えてくる気づきやヒントをみなさんにお届けできればと思っております。まずは平松様、富士通の「人的資本経営」で大切にしていることや、取り組みについてお聞かせいただけますか。
 
平松氏:富士通は、2019年6月に時田が社長に就任して以来、IT企業からDX企業に代わるということで、パーパスを新たに策定し、「Fujitsu Uvance」という新たな事業ブランドを立ち上げました。それを実現するための人材戦略や人事制度改革に取り組んでいるため、これまでも、人材が戦略を実現する最も重要な資産であり、価値の源泉だという想いはずっと持っていました。
 
そして人的資本の開示義務から、投資家ならびに世の中から人的資本経営の取り組みに注目が集まるにつれ、改めて人的資本経営を実践的かつ投資家だけでなくお客様や将来富士通に入社してくれるかもしれない方々に対しても、富士通の人材戦略が魅力的であるとしっかり説明したいと思っています。

具体的な取り組みとしては、2022年に富士通を含めた大手企業5社(パナソニックホールディングス、丸紅、KDDI、オムロン、富士通)のCHROにより、CHROラウンドテーブルというものを実施しました。半年間に6回、1回あたり3時間、人的資本経営を実践するうえでのディスカッションを行い、その結果を2023年4月にホワイトペーパーとして公表したのです。その中で、人的資本への投資がどのように企業の価値向上につながっているのかを可視化するためのフレームワーク「人的資本価値向上モデル」を策定しました。

吉田:富士通様ほど先進的な企業であっても、現状に慢心せずさらに改善を続けようとされていらっしゃるのですね。オイシックス・ラ・大地様も以前から人材戦略に力を入れていらっしゃると思いますが、現状の人的資本経営の取り組みについて教えてください。
 
三浦氏:当社も、もともと食を中心とした社会課題をビジネスの手法で解決することをミッションに掲げる企業ですから、人的資本経営という言葉が出てくる前から、自然に意識として人的資本経営で言われるような考えは根付いていたように思います。ただ、人的資本経営について明文化されていく中で、私たちとしても自社の取り組みをきちんと体系立てて棚卸しができておらず、ステークホルダーに対して整理して伝えられていなかったことは、反省点としてありました。それに加えて、私が中途入社したのは2017年ですが、それから経営統合を2回経験していく中で、改めて経営が人材という資本をどう捉えているのか、そして社員にどう伝えていくのかを、考え直すきっかけになったと思います。当社には、ビジョン・ミッションに強く共感して入社してくれた社員が集まっています。それがゆえに今までは、社員の自発的行動によって成長を実現してきた側面がありました。ここ最近では、もう少し育成という観点で、会社としてどう取り組んでいくべきか、議論を続けています。

「エンゲージメント」に関する投資家との対話


吉田:これから人的資本経営を進める中で、投資家に期待をしてもらうために、HR領域では「未来を語る」ことが重要になります。特に人材版伊藤レポートでもキーファクターとされているエンゲージメントについて、富士通様では、そのキーワードで、具体的にどのような対話を投資家と行っていらっしゃるのでしょうか。
 
平松氏:まだ具体的な対話を行うのはこれからですが、「なぜエンゲージメント向上に注力するのか」という理由を話す時に、単に「低いより高い方がいい」「エンゲージメントが何ポイント上がれば、利益は何%増える」といった説明では不十分です。それよりは、「将来の人材ポートフォリオを実現するために、人材を採用したり、既存の社員の成長を促したりする必要があるが、やはりエンゲージメントがこのくらいのポイントでなければ、人材も定着しないしモチベーションも上がらない」という背景を共有したうえで、事業戦略や人材ポートフォリオを共有しながら、エンゲージメントを高める取り組みについて説明をしなければならないと考えています。

吉田:当社もサービス提供をする中で、“数字遊び”にならないことが大切だと思っています。実際に、営業系の職種は高く出やすい、管理部門は低く出やすいという傾向もみられます。だからこそ、各企業の中でどのようにエンゲージメントをデザインしていくのか、戦略にどうつながっていくのか、そういった考え方が大事ですね。オイシックス・ラ・大地様は、人的資本開示の取り組みをする中で、投資家とどのような対話をしているのでしょうか。
 
三浦氏:当社は女性管理職の割合が25%、役員比率は38%と、他社に比べると比較的高いため、その理由を問われることが多いです。冒頭のお話のように、そこで「自然にそうなっています」と回答しても、納得できませんよね。そこは、社内に対しても投資家の方に対しても、仕組みとしてどのように今後も生み出し続けていくのか、そのためには社内にどのような機会が必要なのかを、まさに人事と経営企画、経営が議論をしているところです。
 
吉田:これまでのお話を伺っていて、やはり人的資本経営を進める中で、自社の強みに改めて向き合えることは非常に良い機会だと思います。多くの企業が足りないところにフォーカスしがちですが、改めて自社の強みに向き合いながら、その理由を探ったり、再現性を高めるにはどうすればいいかを考えたりすることの大切さを感じました。
 
三浦氏:エンゲージメントサーベイをする中で、当社では定性的なヒアリングにも注力しています。定量的な結果を社員の定性的な声で紐解いていくと、自社独自の制度や取り組みが見えてきます。そこで初めて、今まで対外的に打ち出せていなかったり、制度や仕組み化ができていなかったりするものに、意外と多く気づくのではないでしょうか。定量でとったものを定性で明らかにしていく、それを還元してまたデータを取り続けていくことが重要ですね。当社はようやくその1周目に取り組み始めたところです。

人的資本経営の肝となる「データ活用」にどう取り組んでいくべきか


吉田:人的資本経営を進める際に、納得性や開示の部分でデータは大きなポイントです。今後、データ活用において取り組みたいことがあればぜひお聞かせください。
 
平松氏:2つあります。1つ目は、社員のウェルビーイングの実感値をデータ化することです。仕事のモチベーションの原動力として、本人が良い状態であるかは、非常に大切です。そこが低いのに色々な施策を講じても、おそらく響きません。だからこそ、ウェルビーイングの状態を可視化し、高めていくことが大切です。2つ目は、ホワイトカラーの生産性のデータ化です。ここが改善すれば学ぶ時間を捻出できますし、意思決定のスピードも上がるはずです。
 
三浦氏:当社では重要な経営指標とエンゲージメントとの関連性がまだ強く捉えきれていないため、その関連性をもっと探っていきたいと考えています。こうしたデータを全社的に見なければならないところと、一方で製造やロジスティクスなどの現場は、業績だけでなく日々ミスなくオペレーションが進められることや、お客様に美味しく品質の良いものが届いていることの方に熱量が高まる社員も多いです。そういった面を、人事と経営企画でうまく連携しながら考えて、社員に対しても還元しなければならないですね。
 
吉田:データを開示していく際も、全体をなんとなくまとめたデータではよく分からなくなるため、データの切り分けは重要です。そして切り分け方には、各社の意思も現れてくるでしょうね。

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