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忘れられない恋があるすべての人へ
Z世代のためのドラマ『ばかやろうのキス』。そこで描かれる失くした恋の痛みは、Z世代にも、それ以外の世代にも突き刺さる普遍的な輝きがあった。その魅力を解説する。
恋愛リアリティショーから始まる“2度目の初恋”
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最近、Z世代に話を聞いても、なかなか恋愛ドラマの名前が挙がってこない。代わりに頻出するのが恋愛リアリティショー。カメラの前で繰り広げられる、嘘か本当かわからない恋愛合戦に若者たちは夢中になっている。
そんなZ世代のためにつくられたのが、『ばかやろうのキス』だ。恋と青春という王道の題材に「恋愛リアリティショー」という要素を組み込むことで、新基軸の恋愛ドラマへと昇華させた。
別れた彼女が、ある日、突然、スマホの中に現れる。彼女が出演している番組は、『やり直したいファーストキス』。悲しい思い出となっているファーストキスを上書きするために、出演者たちが恋をする恋愛リアリティショーだ。自分とのファーストキスをどうして彼女は忘れようとしているのか。失くした恋を取り戻すための“2度目の初恋”が始まった…!
誰もが憧れる青春の風景が、ここにある
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物語は、主人公・久城湊人(板垣瑞生)が中学3年生だった頃から始まる。自分が無敵だと思えたあの頃。友達といる時間が、何よりも楽しかった。そんな夏の日に出会ったのが、転校生の美山李里奈(出口夏希)。転校続きの生活で閉ざされた李里奈の心の扉を、湊人の屈託のない明るさがこじ開けていく。
服のまま飛び込んだ夏の海。砂遊びをした浜辺。使い捨てカメラにおさめた笑顔の日々。そのどれもが眩しくて、甘酸っぱい憧れとノスタルジーが胸いっぱいに広がっていく。中でも鮮烈なのが、花火大会のシーン。湊人たちは特等席を狙って、使われていないプールに潜入する。びしょ濡れになりながら見上げた空。打ち上げられた大輪の花火。そっと近づく湊人と李里奈の唇。ドラマティックなファーストキスに、きっと誰もが酔いしれるはずだ。
大人たちにこそ突き刺さる、苦い後悔と青臭い自分
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だけど、この作品は決してZ世代のためだけのドラマじゃない。むしろ青春という季節から少し遠ざかってしまった世代の方が突き刺さるものがあると思う。なぜなら、このドラマの軸にあるのは、あのときもっと大切にしておけば、という後悔だから。
最高のファーストキスから一転、あることがきっかけで湊人と李里奈の心は離れ離れになる。そして別離から3年、李里奈が恋愛リアリティショーに出演したことをきっかけに、2人の運命は再接近する。
初恋は実らないことの方が多い。大人になればなるほど、やり直したい過去も増えていく。だからこそ、そんな人たちにこのドラマを観てほしい。激しい後悔と再燃する恋心の中でもがく湊人の姿は正直言って青臭い。でも、その青臭さに思い返すはずだ、誰かのことが好きで好きでたまらなかった10代の自分を。
湊人と蓮、あなたならどちらを選びますか?
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そんな湊人と李里奈の間に現れるのが、恋愛リアリティショーの出演者である園宮蓮(八木 勇征)。李里奈が湊人と蓮のどちらを選ぶかが終盤に向けての鍵となる。
明るく単純だが、ちょっと血の気が多い湊人と、クールに見えて、実は優しい蓮。演じる板垣瑞生と八木勇征が、それぞれの役の魅力を最大限に引き出している。板垣瑞生のおひさまみたいな笑顔はそれだけで心が明るくなるし、キッと睨みつける目はワイルドで男らしい。八木勇征のソフトな囁き声は王子様そのものだし、ミステリアスな蓮がコーヒーを注文するときに砂糖を頼んで照れくさそうにするところが最高に可愛い。
ポイントとなるのは、堤防から海に飛び込むシーン。怖がる李里奈の手を引き一緒に飛び込む湊人と、無理しなくていいと抱きしめる蓮。あなたならどちらを選びますか?
Text/横川良明
Zドラマ第2弾「ばかやろうのキス」はこちらから▼
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Zドラマ第3弾「やり直したいファーストキス」▼
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横川良明(よこがわ・よしあき)
1983年生まれ。大阪府出身。ドラマ・演劇・映画を中心にインタビューやコラムなどを手がける。著書に、『役者たちの現在地』(KADOKAWA)、『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(サンマーク出版)がある。Twitter:@fudge_2002