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五感で味わうサスペンス『庭のある家』

韓国で爆発的な関心を受け、放送前に異例の世界190か国で展開が決まった注目作が遂に日本上陸! 実力派女優の共演と衝撃展開が話題のサスペンススリラー、その魅力に迫る。

キム・テヒ×イム・ジヨンの共演が、アツい!

©︎2023 KT StudioGenie.,Co.Ltd

新・旧「悪女」夢の共演である。

キム・テヒは、日本に第一次韓流ブームが巻き起こった2000年代、アジアで空前のヒットを記録した伝説のドラマ『天国の階段』にて主演チェ・ジウに嫌がらせを行う悪女を見事に演じ、一躍有名となった。また、2023年上半期、韓国で数々の授賞式を総なめし、日本でも圧倒的な人気を誇った『ザ・グローリー』にて強烈な悪女ヨンジン役を演じたイム・ジヨンの怪演は記憶に新しい。

観る者に緊張感を与え、作品を盛り上げる重要なキーパーソン「悪役」をこなし、存在感を示すことのできる俳優は、間違いない。そして「悪役」がキラリ光る作品もまた間違いないのだ。そんな間違いない実力派女優2人がタッグを組んだ至高のサスペンススリラーが、ついに日本に上陸した。

「家の庭から、死体の臭いがする」

©︎2023 KT StudioGenie.,Co.Ltd

物語は、2組の夫婦を中心に進む。

病院の院長を夫にもつジュラン(キム・テヒ)は、息子と共に家族3人で庭のある新居に引っ越してくる。誰もが羨むような家と、裕福な生活。家族との幸せな生活がずっと続くと思っていた。しかし引っ越して間もなく、彼女は庭のどこかから酷い悪臭がすることに気が付くのだった。夫と息子は「そんな臭いはしない」と掛け合ってくれない。意を決し、臭いのする場所を掘ってみると、なんとそこから人の手のようなものが出てきたのだった――。

一方、夫からのDV被害で苦しむサンウン(イム・ジヨン)は、貧しく不運な自分の人生に絶望していた。

完全に異なる人生を送っていた2人の女性が、1つの事件をきっかけに絡み合い、裏庭の異臭が、家庭の隠された真実を浮き彫りにしていく――。

二転三転するストーリー展開が、アツい!

©︎2023 KT StudioGenie.,Co.Ltd

「臭いの正体は何なのか」
「庭に埋められた死体は誰なのか」
「ジュラン家族に何があったのか」
「ジュランは、正気か」

分からないことがあると人間は不安になるものだが、この作品、序盤からとにかく分からないことだらけ。疑問が次々と浮かび、不安は増すばかり。分からないことをそのままにストーリーが展開されるとストレスが溜まって飽きが来たり付いていけなくなったりするが、このドラマの上手なところは、真相の出し方だ。毎話何か1つ明らかになっては、また新たな謎が生まれる。さらに、こちらの推測が当たったかと思えば、次はその斜め上に行ったりする。その匙加減がとにかく絶妙なのだ。

少しずつ点と点が繋がっていく過程と伏線回収が見事で、序盤に感じた多くの疑問や不安はしっかりと回収され、しこりが残ることもない。これぞまさに上質なサスペンスだ。

魅せ方が、アツい!

©︎2023 KT StudioGenie.,Co.Ltd

演出は『トッケビ』 (2016)『ミスターサンシャイン』(2018)『ザ・キング 』(2020)で共同演出を担当し、『恋愛ワードを入力してください』 (2019)『二十五二十一』(2022)でメイン演出を務めたチョン・ジヒョン監督。どれも感覚的な映像美やカメラワークが心に残る名作ばかりだ。

作中に終始漂うのは、不穏で不気味な空気感。作品を彩るはずのOSTは歌詞が一切なく、流れるのは不協和音のような独特な音楽ばかり。彩度を落とした映像やモノクロカット、セリフの少なさや会話中の「間」も目立つ。そんな暗く静かな余白が、作品にもたらす緊張感と居心地の悪さ。

イム・ジヨンの食事シーンもその1つだ。「食べる」という行為をこんなに気味が悪いと思ったことはない。人生に絶望していた彼女が、どう「食べる」=「生きる」のか、ぜひ注目して見てほしい。

作品のポイントとなる「臭い」と「食事」
庭のある家』は五感で味わう至高のサスペンススリラーだ。

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Namkoプロフィール
韓国ドラマ、韓国映画の感想を綴りつつ、渡韓し実際のロケ地を訪れて感じる情熱や躍動感を文字と写真で鮮明に届けている。 X(旧Twitter): @namko1035