『THE HEAD』Season2配信記念!福士蒼汰×Hulu公式noteライターSYO対談
2020年に発表されたHuluオリジナルドラマ『THE HEAD』。南極大陸を舞台に、雪に閉ざされた研究施設内で発生した殺人事件の真相が暴かれていく本作は、世界約90カ国で大ヒットを記録。Season2の制作が早々に決定した。日本からその主要キャストに選ばれたのが、福士蒼汰だ。
太平洋の大海原を航行する巨大貨物船。そこでは、人類の未来を左右する極秘研究プロジェクトが進められていた。機密事項のため関係者以外は誰も知らない海上の密室で、謎の殺人事件が発生。以降、次々と恐るべき事件が勃発。犯人はどこにいるのか、その目的は!?
雪上から洋上へとフィールドを移したSeason2で、物語のカギを握る重要人物ユウト・ナカムラを熱演した福士。初の海外ドラマ出演までの軌跡と撮影の舞台裏を、Hulu公式ライターのSYOとの対談の中で紐解いていく。
SYO:はじめまして! 本日はどうぞよろしくお願いいたします。
福士:こちらこそ、よろしくお願いします!
SYO:本日は『THE HEAD』のお話を色々と伺っていければと思います。福士さんはもともと『THE HEAD』Season1を配信開始日にご覧になっていたそうですね。
福士:山下智久さんが海外ドラマに出演すると聞いたのが、作品を知ったきっかけでした。日本人が海外作品に出演することへの興味や憧れがあったので観てみたら、すごく面白くて。展開も先読みできないし、誰が犯人かもわからなくて、物語が面白かったです。しかもそこに日本でキャリアを積んできた山下さんがいるわけですから「いいなぁ」と感じていました。そのときは、まさか自分が出演することになるとは思ってもいませんでした。
SYO:『THE HEAD』はSeason1で物語がしっかり完結するので、Season2があると聞いたとき個人的には「どうやって!?」と思いました(笑)。でも実際観てみたら「なるほど、こういう手があったか」と。
福士:物語の舞台も貨物船になりますし、ジョン・リンチ(アーサー役)とキャサリン・オドネリー(マギー役)以外のキャストも一新されます。
SYO:そうですね。でも、完全にSeason1とつながっている話だからすごく面白くて。福士さんは本作が海外ドラマ初出演となりましたが、オファーを受けた際はいかがでしたか?
福士:「20代のうちに海外作品に挑戦したい」というのが大きな夢だったので、オファーをいただいた際はすごく嬉しかったです。ただ実は同時期に海外作品のオーディションも受けていて、最終審査まで残っている状況でした。
SYO:なんと! それは悩ましい……。
福士:悩みはしましたが、やっぱり『THE HEAD』をやってみたい!という想いが一番強く、お受けしました。いままでも海外作品に挑戦したい気持ちは強くありましたが、ちょうど去年の1月頃、その想いがより強くなったタイミングでもあり自分自身も「ようやく準備ができた」と思える状態になっていたところでこのお話が来たので、そうした巡り合わせも感じていました。
SYO:舞台の公演中(いのうえ歌舞伎『神州無頼街』)に、オンラインで本作のリハーサルを行ったとお聞きしました。
福士:3月から5月が公演期間で、空いている時間を見つけては必死にリハーサルをしました(笑)。これまでも英語でのお芝居のレッスンやオーディションは経験してきましたが、初めての英語作品で、しかも全世界に配信されるわけですから、余すところなく準備したかったんです。舞台中で大変な時期ではありましたが、頑張りました!
SYO:パワフルな作風で知られる劇団☆新感線の舞台で座長を務められていたわけですから、両立はさぞかしハードだったでしょうね……。
福士:しかも、ホルヘ・ドラド監督からは「一刻も早く来て!」と言われていて(笑)。舞台が終わってすぐ撮影地のスペインに行けるように準備をしていました。
SYO:すごいな……。福士さんが英語の独学での勉強をスタートさせたのは、中学1年生の頃だと伺いました。当時から「海外作品に出演したい」という想いがあったのでしょうか。
福士:最初のきっかけは、小学校の高学年くらいの時に地球儀をなんとなく見て、日本を発見したことです。地球全体から見て日本のサイズの小ささを感じて「いつか日本の外にも出てみたいな」と漠然と思っていて。それから中学校に入って英語の勉強が始まると「英語を話せるようになれば世界中の人と話せる」と気づいたんです。
SYO:スケールが一気に広がったのですね。
福士:そうなんです。ただその当時はまだまだぼんやりと「世界に行きたい」という想いだけで、「何を通して」までは考えられていませんでした。高校のときにスカウトされて俳優のお仕事を始めて、『英語をもっと勉強して俳優として海外作品に挑戦できたら、小さい頃からの夢も叶うんじゃないか』と思うようになりました。いままでやりたかったこと――「海外に出たい」「英語を使いたい」と自分が俳優になったことが重なっていき、「海外作品に出演する」が明確な目標になっていきました。
SYO:最近だと海外ドラマ『フレンズ』のセリフを聴きながら英語の勉強をしている、というお話も伺いましたが、福士さんがもともと「こういう作品に出たい!」と思った海外作品はあるのでしょうか。
福士:最初の夢は、海外のアクション映画です。いまだったら『アベンジャーズ』シリーズにはやっぱり憧れますよね。『ジョン・ウィック』のようなキレッキレの作品にも出てみたいし、色々なジャンルの作品に挑戦したいと思っています。でもそのためには準備しないといけないこともたくさんあるので、一つひとつ学びながらチャンスを掴めるようにしていきたいなと思っています。
SYO:『THE HEAD』がそのスタートになるでしょうしね。福士さんの雄姿を観られる日を楽しみにしています。
福士:ありがとうございます。頑張ります!
SYO:しかし、『THE HEAD』Season2を拝見して思ったのは、福士さんが演じられたユウト、めちゃくちゃ“おいしい”キャラクターだなと……(笑)。
福士:そうですね(笑)。
SYO:Season1と2をつなぐ重要なポジションを任されていて、観ていてこちらまで嬉しかったです。ユウトは優秀なコンピュータ・エンジニアですが、どのような役作りをされましたか?
福士:色々なアプローチがあるんですよね。英語自体の勉強、英語でのお芝居の練習、キャラクターを深めること。キャラクターの深掘りについて話すと、ユウトはパソコンが特技なので、世界のタイピング選手権の映像を参考にしました。出場者たちを観ていたら、みんなカイロを持っていて手を温めていたんです。
SYO:なるほど、早打ちのために血流を良くする必要があるのですね。
福士:そうだと思います。冷えていると手が動かないでしょうから。そこで自分も、パソコンを操作して誰かにメッセージを送るお芝居の中で、ちょっと手をこすって温める仕草を取り入れてみました。
SYO:面白い……。本作の撮影自体は、スペインで2カ月間行われたのですよね。
福士:はい。テネリフェ島で1カ月、マドリードで1カ月でした。
SYO:現場での共通言語は、英語だったのでしょうか。
福士:そうですね。スタッフの多くはスペイン人ですが、キャスト含めて色々な国から来ていることもあってみんな英語で話していました。
SYO:当然ながら、そのコミュニケーション能力も必要になりますもんね。
福士:今回、英語の能力とコミュニケーション能力は全く別物だなと感じました。英語力だけあってもコミュニケーション力がなかったらやっぱり話せませんし、むしろコミュニケーション力をより高めていった方がいいなというのが大きな発見でした。コミュニケーション力があると、英語力の伸び率が全く違うなと。僕はどちらもまだ勉強中なので、もっとコミュニケーション力を伸ばしたいと感じました。
SYO:例えば「英語を流暢に話せなくても積極的にコミュニケーションを取っていく」といったようなマインドでしょうか。
福士:僕はそうするようにしていました。例えば、何か誘われたら絶対に行くように心がけていました。撮影終わりに「マドリードにご飯を食べに行くけど蒼汰も来る?」と誘われたら、少し疲れていると感じている時でも「行く!」と即答して(笑)。撮影以外の時間も充実していたと思います。
SYO:『THE HEAD』って、視聴者からすると全員が怪しく見えないといけないと思うんです。ある役を演じるという行為に、「こう見せていく」という階層が加わるといいますか。役に没入して演じる“内側の意識”+見え方を意識する“外側の意識”の両方が必要なわけですから、様々な回路を使わないといけないでしょうし、そのうえ異国での英語での撮影で、疲労は凄まじかっただろうな……とも感じます。
たとえば表情なども、多くのバリエーションを撮ったのではないでしょうか。
福士:今回の撮影は大体2チーム編成で、一つのシーンのメインとなるカットを撮るチームと、その他のエキストラカットを撮るチームに分かれていました。あるときエキストラカットとして「本を読んでいる様子が撮りたい」と言われたのですが、台本上には書いていなかったので、どこで使われるかもわからないんです。「もうちょっとニヤニヤしながら読んで」「普通に楽しんで」「ちょっとたくらんでいる感じで」といったようにいろいろなリクエストがあり、複数パターンを撮影しました。
最終的に使われないことも多いのですが(笑)、メインを撮っている裏でみんなでちょこちょこ日常のようなエキストラカットを撮っているのは新鮮でした。きっと監督はそういった素材を「どれを入れてどれを入れないか」と吟味しながら、どのキャラクターを怪しく見せていくか細かく調整を重ねていったんだと思います。
SYO:なるほど。お話を伺って、新たな挑戦が詰まった現場だったのだなと感じました。そして今回、福士さんが日本語吹き替え版も担当されたんですよね。ご自身が英語で演じた役を自ら日本語で吹き替える経験はかなりレアなのでは?と思いますが、やってみていかがでしたか?
福士:とても貴重な経験でした。吹き替えの収録現場で面白かったのは、その場で作品について一番詳しいのは僕だったということです。吹き替え収録は日本で日本のスタッフの方々が収録してくださったので、撮影現場を実際に見ているのは自分だけだったんです。僕は自分が演じた役ですし、現場でどういう演出を受けたかはもちろん、元の台本も知っているからそれがどういう風に完成版に変わっていったのかを全部把握していて。吹き替え版の演出の方に「このシーンの撮影の時はどんな感じだったの?」と聞かれたら、当時を振り返って、そのときの状況を共有しながら収録を進めていきました。
SYO:ただ吹き替えるだけじゃなく、現場の監督の意図を伝えるメッセンジャー的な役割も果たされたのですね。
福士:今回は、映像の中には英語でお芝居をしている自分がいて、アフレコ収録の現場には日本語吹き替えを担当する自分もいて、特殊な状況だったと思います。なかなか経験できないので、貴重で楽しかったです。
SYO:本日はレアなお話をたくさん教えていただき、ありがとうございました。最後に、この記事をご覧になっている方にメッセージをお願いします!
福士:僕が出演したSeason2は、Season1から引き継いでいる部分もありますが、Season2から観てもちゃんとついていける内容になっています。「逃げ場のない船の中で殺人事件が起こり、犯人が誰かわからない」というスリリングな疑似体験を楽しんでいただけたら嬉しいですそして、僕の海外初挑戦をぜひ見守ってください!
SYO:福士さん、本日はありがとうございました!
福士:こちらこそ、ありがとうございました!
インタビュー&Text/SYO
撮影/中川容邦
▼「THE HEAD」Season2独占配信中!視聴はこちらから。
福士蒼汰プロフィール
1993年東京都生。2011年ドラマ『美咲ナンバーワン!!』で俳優デビュー。同年に『仮面ライダーフォーゼ』でドラマ初主演を果たす。近年の主な出演作に、映画『旅猫リポート』(’18)、『ザ・ファブル』(’19)、『カイジ ファイナルゲーム』(’20)、ドラマ『アバランチ』(’21)、『大奥』(‘23)など。11月には映画『湖の女たち』の公開を控えている。
Instagram:@fukushi_sota_official Twitter:@fukushi_staff
SYOプロフィール
1987年福井県生。東京学芸大学卒業後、複数のメディアでの勤務を経て2020年に独立。映画・アニメ・ドラマを中心に、インタビューやコラム執筆、トークイベント・映画情報番組への出演を行う。2023年公開『ヴィレッジ』ほか藤井道人監督の作品に特別協力。『シン・仮面ライダー』ほか多数のオフィシャルライターを担当。装苑、CREA、sweet、WOWOW等で連載中。Twitter・Instagram「syocinema」