【犬山紙子】もうドラマだって、恋愛をテーマにしていたって、政治がその世界に出てくることは自然なこと
前作の「Lの世界」を20代の夏私は齧り付くように見て、「Lの世界 ジェネレーションQ」を娘が寝たあとアイス片手にこっそりみる夏の夜。
Lの世界シリーズはその名の通り、レズビアンの女性たちを中心にアメリカの「現在」が描かれています。ストーリーが面白いのはもちろん、スタッフが「あのトピックスも」「この問題も取り上げなきゃ」と前のめりにドラマを作っていることが伝わってくるんです。今作でも、政治、フェミニズム、同性愛とカトリック、オピオイド問題、人種問題、アルコール依存、娘の人生を支配しようとする父親、子どもを持つかどうか、そしてスラップル(三人婚)……トピックスが盛りだくさん。大事な点として、トランスジェンダーの俳優がトランスジェンダーを演じているのも支持できます。
日本の遅れを感じることもあります。前作からの登場シェーン(様!)は離婚届を手にした状態でスタートです。離婚届を手にできるってことは同性婚が認められているってことですね。ああ、日本も早く! そう言えば前作でアリスがカップルカウンセリングをライトに利用している描写から「そういう方法もあるな」と私もカウンセリングを夫と受けたのでした。
そして、今作一番大きなトピックスは政治です。前作から登場するベッドが同性愛者として初めて市長選に立候補しているんです。これを当時のアメリカの政治と重ね合わせると……ヒッリヒリします。ベッドと対抗男性との討論も見ものだし、彼女だって清廉潔白じゃないですから、自分の過去と、そして思春期の娘とどう向き合うのか、そこも大きな見どころ。もうドラマだって、恋愛をテーマにしていたって、政治がその世界に出てくることは自然なんですよね。
アリスは自分の番組を持って多様性とフェミニズムをゲストと訴えるのですが、このゲストがフィクションではなく、本当にミーガン・ラピノーやロクサーヌ・ゲイがやってくるんですよ! 私も「え!?ラピノーさま!?」「バッドフェミニストに私も救われたんですが!」なんてテレビに向かって興奮しました。
新しいキャラクターではフィンリーの姿が心にこびりつきます。明るくてめちゃくちゃだけど、家族に認められず、自分を肯定できないフィンリー……。
まだまだ伝えたい魅力はたくさんあるのですが見なくちゃ始まらない! 2021年、しんどさが続く夏ですが、私は彼女たちのガールズパワーを借りることにします。
text/犬山紙子