an Imagination Color -上田麗奈1stLIVE感想記事-
わたしが受け取ったあなたの色
2021年3月14日に,上田麗奈さんの1st LIVE Imagination Colorsが開催されました。僕は地方マンなのでオンライン配信でその日の公演を視聴したわけです。
ほんとに素晴らしかった!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ので,自分がどう感じていたかというのを残したい,と思ってこれを書いています。
セットリストの順にそれぞれ書いていこうかなと思います。
海の駅
白い服,白い靴,白いネイルという白一色で登場した上田さん。最初はデビューミニアルバムRefRainの一曲から。ライブが始まる前に会場ではさざ波の音が流れていたので,来るだろうと思ってました(オンラインだと会場写ってすぐに始まるんですけどね)。
これがリリースされるタイミングで上田さんがそれぞれの曲についてコメントを残していられるのですが(今でもlantisの上田麗奈さんのHPで見ることができます),そこで上田さんはこの曲を「私自身の体内リズムに,すごくフィットしている気がしています。」と評していました。
あとでも少し触れますが,歌が苦手だ,ライブもずっと緊張していたのをラジオでも仰っていたのを見る限り,最初になじませる?と言っていいのか。そういう導線のためにもある曲なのかなと思っています。
sleepland
「チーム上田麗奈が作る,みんなが作る,夢の世界」,海の駅のMCの後,本を掲げながらそう言い,最初に歌った一曲。つまり物語の始まりです。
lantis祭りと同様,椅子に座って本のページをめくっていきながら,本を読み聞かせていくように歌う形。
「どこにもない国へ 旅に出るの」
という歌詞からも物語の始まりを想起させる曲でした。
fairy taleの明けに
前の曲が終わって,目を閉じ,さて次の曲は何かな,と考えていました。
最初の1音を発音した瞬間に空気が変わったのを感じました。
最初のフレーズを歌ってからマイクを手に持ち,ステージ上を動き回りながらまるでミュージカルの舞台のように歌いあげていく上田さんをみて,これは普通のライブとは少し違うぞ?違うんだな?と,改めて覚悟を決めさせられましたね。
誰もわたしを知らない世界へ
シリアスな表情だった前の曲から一転し,希望にあふれたような表情,声でした。さっきの表情がまるで嘘だったみたいで,「手を振って もう戻らない」を手を振りながら歌う上田さんがとても可愛かったです。
ずっとマイクスタンドの後ろにあった舞台が開き,その向こうに少し高めに浮いていた木が降りてきた時の衝撃たるや。やっぱり舞台だった......
今までの三曲は同じシングルに入っていた曲で,同じ空想的な雰囲気が「物語」とマッチしていたなーと思っていました。また,「始まる」,「新しい」といった歌詞も入っていて,この三曲で始まりを表現したのかな,みたいなImaginationです。
花の雨
ここで暗転し少し間が空いていました。その間小鳥のさえずりがバックグラウンドで流れていました。今思うと花の雨につながるので自然な繋がりですね。ここから「花の雨」,「たより」,「きみどり」と続くのも,緑を感じる共通点を感じ取れる気がします。また,想う相手の距離の近さもまた同じところかな~とか思ったり。
花の雨はできるにあたってのエピソードもあったりして,とても心がほぐれる曲です。とても穏やかな歌い方をしているなとCD音源でも思っていましたが,ライブでは表情も実際に見れて,とても優しい笑顔でした。
細かいところだと,この曲はベースがよく効いてる曲ですね,試聴の時からのお気に入りポイントです。基本的にダンスミュージック大好きマンなので。この曲がリリースされる前後のタイミングで上田さんが最近はベースがブンブンなってる曲が好きと仰っていたので,その影響なのかなーとかいう妄想をしています。
たより
こちらも花の雨と同じような心地になる曲ですね。CD音源で聞いていたときはどっちかというと快晴ではないぐらいの晴れた空をイメージしていたのですが,ライブで聞いてみると夜だったな,と思います。伴奏がピアノとアコギだけで,照明も落ち着いていたので,静かさをよく感じた一曲でした。夜とピアノってなんであんなによく似合うのだろうとよく考えます。ドビュッシーの月の光とか。
「急ぐ声があばれ出しそうだ」
を本当に心があばれ出しそうに歌う上田さんが素敵でした。
きみどり
アルバムでは「いつか,また。」の後に来て「Another」,「aquarium」と続く曲なので,アニメのシリアスシーンが終わった後の少し穏やかな場面みたいな(?)イメージを持っています。
対してライブではこういうセトリだったので,今まで思っていたよりもすっきりとした気持ちで聞くことができたなと思います。
「側で君がいつも 笑うたびに 私は少しだけ強くなれる」
の「強く」を強く歌ったり,
「君がくれた 私の青」
の後の大切に抱えているような動きは,他の曲でも言えますが,歌詞をとても大切にしているな,と感じられて好きなポイントです。
Falling
いわゆるインタールードですね,まさか本当に舞台の幕間となるとは。声の素材を使ってインスト曲のようなものを作ってるやつ。大好物です。CD音源と違うところは上田さんの声の音源が抜かれているところですね。
この後のもう一曲のインタールードでは声が入ってたので,何か意図があるのかな,と思っていましたが,まだあまりわかっていない......声の音源ではあまい夢の歌詞「I may be」なども入ってるので,あまい夢からのつながりではないのよ,みたいなことなんでしょうか。でもティーカップの「深呼吸で」も抜けている......あまり考えないでおこう。
配信のカメラでは木にかなり近づいたカメラの映像などが映されていて,感覚が少し狂いそうでした。上田さんはラジオで不思議の国のアリスが穴に落ちていくシーンのことを話していましたが,まさにそんな感じだなと。じゃあ次の曲はあれでしょう。
ティーカップ
これはまだこの曲がどう披露されるのか全く想像だにしていなかった私です。愚かですね。
圧倒されてしまいました。1コーラス目はCD音源に近い,もしくは僕がイメージしていた風景でした。あれは変な夢を見ていたんですねぇ......
1コーラスが終わって間奏に入り,上田さんの顔にあった笑みがスッと消えた瞬間。これはやばいやつだと思ったのを覚えています。まるでここはどこかという風に周囲を見回し,2コーラス目の頭は青いライトが反射した木を背景に歌い始める。この曲が始まった瞬間のやけに明るいライティングが嘘のよう。終始疑問符が見えるような表情で歌い,
「おいかけてみたいだけど わからないの」
のあたりから声色と表情に絶望の感情が乗っていく。ラスサビは後ずさりながら。とうとう最後は座り込んでしまって
「ティーカップから」
と少しかすれるような小さな声で締め,そのまま暗転。
凄まじかったです。元々,抜け出せない,わからないということを表現している曲ではありましたが,ここまで変わるとは思っていなかったです。未だにこれ以上の言葉が出てこないですね。あとはステージ上部カメラからの画は上田さんの像が少しボケていて,ミニチュアのようになっていたのがティーカップをのぞき込むのを表現しているのだなーと見直していてわかりました。
aquarium
僕の大本命と言っても過言ではなかった曲です。同じ水を歌った「海の駅」とは異なって,水の重さが表現されており,月の遠さに嘆きながらなお水面を目指してもがく曲。画面も一曲を通して揺らぐように不安定な画を映していました。収録時も全身が筋肉痛になるくらい集中して歌唱していたらしい上田さんですが,今回もやはり感情の込め方が凄い。表情は苦しさが感じられ,各コーラス終わりで「Ah」と歌うところは,まるでそのまま崩れ落ちてしまうのではないかというくらいでした。それでも崩れ落ちなかったのは,この曲がもがく曲だったからなのでしょうか。
旋律の糸
暗転し,曲が始まる前に一瞬だけ,右から階段から降りる上田さんが見えました。
曲が始まり,照明がつきます。色は白色。CD音源では何もない白い空間を想像していたので,白色のライトは予想通りだ!と思いました。他に目につくのは,上田さんが羽織っている白いコートと葉がすべて取れた木の枝です。まるで冬になったようでした。曲自体もピアノと上田さんの声だけなので,静寂が際立つ曲です。
「そっと触って そっと抱きしめ そっと締め付け 殺してく 並んだ糸を一つ 切り離そう 私と世界を」
そう歌いながら少しずつ手を首元に近づけ,笑みを浮かべる光景に息を呑みました。
「"素晴らしい新世界"あともう少しで着くから...」
で映される白い光で"素晴らしい新世界"を示しているのも印象的です。
この曲は少し後悔があります。Empathyは上田さんがいままで演じてきたキャラクターへの共感を元に作られたアルバムだそうで,この曲はおそらくハーモニーの御冷ミァハなのだろうと思っています。おそらくと言っているのでわかると思いますが,ハーモニーをまだ読めてない,観られていないのが唯一の後悔です。先日虐殺器官を読んで観終わったところで,絶賛読み進めている最中なのでした。
毒の手
悲しさを感じるストリングスの音と同時にステージが赤く染まりました。赤く染まった木の枝はまさに「毒の手」でした。
絶望や苦しみを感じさせる曲調でありながら,2コーラス目からは柔らかい表情での歌唱となり,
「無かったことになんてしたくない」
以降の目に希望と決意が宿ったような上田さんの表情が印象的でした。
車庫の少女
これもRefRain収録曲の中では重めの曲にあたる,三拍子が特徴的な曲です。公式HPの"RefRain" Letterでもコンプレックスを歌ってる曲とあり,このセトリでここに組み込まれるのも納得の曲です。
しかし,RefRainの曲の中でも一番CD音源との違いが表れた曲と言えるのではないでしょうか。上のような暗めの感情を書いた曲ですが,今回のライブでは反対に全体的に明るい表情を見せながら歌う上田さんがいました。RefRainは2016年の12月に発売されたミニアルバムで,もう4年の月日が経っている作品です。その時間の経過を感じさせるパフォーマンスだったと思います。
Another
二曲目のインタールードです。先ほども書きましたがこっちは声が入っています。
「Another」というタイトル,このライブではまた別の色が見える,なんて意味も考えられそうですね。
いつか,また。
「Empathy」視聴時に様々な人に衝撃を与えたであろう曲です。自分が好きなものを閉じ込めて殻に閉じこもった少女がその殻を破る話ですね。
「そうやってすぐみんな変わっちゃうの どうして?」
「どうして?」の歌い方がCD音源より切実さを増していて,心に響きました。
「さぁ目を覚まして 始まる」で,殻が破れるようにステージがパっと眩い光に包まれるカタルシスはCD音源以上のものでした。「世界はまだ少し眩しいけれど」という歌詞そのままに上田さんに当たった光は本当に眩しそうでした。
アイオライト
「晴れ渡るこの空 雲ひとつなくて」から始まるこの曲は「Empathy」の一曲目ですが,「いつか,また。」とこんなに綺麗につながるとは。
スカートをひらひらさせたりステップを踏んでいたり楽しそうに動いている上田さんも可愛らしくて素敵でした。
ラスサビの「色付け世界 こぼれ出した光は 煌きだした カラフルに」
に合わせてカラフルに色づく木も圧巻でした。
あまい夢
見たことない人は見ましょう。
見た?可愛いよね。可愛い。ライブも客席の方へ視線を向けながら可愛い上田さんを堪能できるステージでした。
「I may be あまい夢をみてる 目にうつるもの全部 まぼろしみたいだ」
歌が苦手で,ライブも当初はする予定がなかったことを考えると,まさにこの光景は奇跡とも言えますね。本当にありがとう。
ワタシ*ドリ
「あまい夢」が相手を遠いところから眺めている,自分視点の曲とすれば,ワタシ*ドリは相手に見える自分について思いを馳せる曲。
元々は相手に見える自分がどう見えているのか,不安が混じったようなニュアンスで歌われている曲なのかなと思っていましたが,今回は純粋に
「うれしい気持ちになってたら,いいな」
「ちょっと変わっていく 私があなたの瞳 映ったときどんなだろう(意図的に...は省きます)」
と感じているような歌になっているのかな。この後のMCでも「皆さんには私の楽曲は,それぞれ何色に見えたんでしょうね」と仰っているように,この曲ではそういう気持ちがこもっていたと想像しています。実はsleeplandからここまで一切MCなし。恐るべし。
「一緒にいってみる?」
の口調もCD音源よりも柔らかいものでした。
マニエールに夢を
リズムがすごく好きな曲です。RefRainの曲の中でも特にリフレインしていた曲かもしれません。
「晴れた空なんて,久しぶりに見た 見渡す限りの青に目がくらむ」というように夢から覚めた風景を描いていますね。
「気づいてしまうと 変わっていくことを知っている だから今日も明日も 同じ道を歩くの?」
というCメロは,夢から覚める,殻を破ってもなお問い続けなければならない問題なのかもしれません。
あなたの好きなメロディ
上田麗奈さんのアルバムのエンディングは「RefRain」も「Empathy」も映画を観終わったような,穏やかさと爽やかを持っていて好きなところです。そんな「RefRain」の最後の曲がこの物語の最後の曲でした。
正の感情も負の感情も全て受け入れていく。「RefRain」以上に多くの感情を抱き締めたのが「Imagination Colors」のこの曲なのかなと思います。
ラスサビでは後ろの木に桜の花がつき,花びらが舞う演出。この木も様々な表情を見せてくれました。
歌唱後,sleeplandの際に持っていた本のページを閉じた上田さん。物語の終わりを告げました。
リテラチュア
アンコール最初の曲は「リテラチュア」。新しい物語が始まるのでしょうか。冒険譚にあこがれて旅に出たイレイナのように。
「優しく吹いた風が 古いページ捲るように 振り返るけど 「ううん,いいのよ」」
まさしく今まで紡いできた物語のことを指しているような歌詞がここにはまってくるのはさすがとしか言いようがないですね。振り返るとここにしか入らないような気がしてきます。
「好きだから 選ぶ 選びながら 私になっていく」
リリース時にも思ったことですが,この歌詞は上田麗奈さんの,特にアーティスト活動のことを考えてしまいます。今回のライブも上田さんが選んだ道ですね。これからも上田さんの選ぶ道を応援していきたいです。
Campanula
上田さんの楽曲の中でも特に丁寧に素直に気持ちを歌っていると感じる一曲です。
「言いかけた言葉はあなたを困らせるだけ」
「いつも笑っていて いつでも幸せでいてね」
「もどかしい なんて言えばいいのか」
「伝えたい ごめんねじゃないよ ありがとうって」
沁みる歌詞が多すぎる。ここが好きというポイントを挙げるときりがないのですが,ライナーノーツでお花畑が広がるように歌ったと上田さんは言っていました。今回は「あなたの好きなメロディ」の時に振り落ちた花びらが辺りに残っており,花の存在を感じることができました。
個人的には「とどけ」の「け」の発音の柔らかさがとても好きです。指先からそっと離すような,優しさがこもった歌い方です。
Walk on your side
今後の活動予定にMCで触れた後,「これからもみんなと一緒に隣で歩いていけるように」と言って歌い始めた,最後の曲です。
この曲は「Empathy」の最後の曲にあたります。映画のエンディングのような,今までを背中に感じつつも希望をもって前に向かう感じが,「あなたの好きなメロディ」とはまた異なる,映画のエンディングのように思えます。
「きっかけはきっとそんなこと」
という歌詞がとてもとても大好きです。
ライブで見ていて印象的だったのは「どうしたって過ぎてく毎日をがんばりたい」の気持ちのこもり方でした。
間奏で上田さんがクラップの煽りを入れて会場みんなでクラップをする,一体感のある空間がとても暖かくて愛おしかったです。
最後に
僕が上田さんに興味を持ったのは2018年の夏ごろ,SSSS.GRIDMANが開始する前辺りでした。すぐに新条アカネの感情表現に心を奪われ,上田さんをもっと知りたいなと思い,今に至ります。ですのでそれ以前の上田さんについて,具体的には「RefRain」「sleepland」をリリースした時の上田さんがどのように曲と向き合っていたのかは十分には知れていないのかなと思っています。そこを知っていればもっと今回のライブも感じられることが増えていたかもしれないなというのは,すこし悔しいところです。
ライブ全体でひしひしと感じたことは,一曲一曲のコメントでもいくつか書きましたが,上田さんの歌詞一つ一つに込められる感情の込め方がとても丁寧で豊かであることでした。単語一つ一つに心を向け,細かい感情表現をしながら難しい曲たちを歌い上げていく様は本当に圧巻でした。全ての動作に何か意図があるのかなと思ってしまうほどでした。休憩も非常に少ない中,この演目を歌い遂げた上田さんは本当にすごい人だ,と思いました。
ラジオやインタビューで上田さんの話を聞いたり読んだりして思うのは,上田さんはコンプレックスが多い人だということでした。ラジオでも言語化が苦手だからと言語化をすることをテーマにしていられました。そんな上田さんが苦手だという歌に向き合って,こんなに素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。何かせずにはいられないな,と思い,この記事を書くことにしてみました。このライブが僕のきっかけになりました。ありがとうございます。
最後に,素晴らしいライブを開催してくださった上田麗奈さん,チーム上田麗奈のスタッフの皆様方,本当にありがとうございました。