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33円で絶品お料理
俺は神様だった。
家の窓から外へ飛び出すと、思った通り。
俺は自由に空を飛べた。
俺は自分の家の周りをぐるぐると飛び回り、天気を変えていった。
雪を降らす。
雨を降らす。
風を吹かせる。
近くの神社にはかわいらしい女の子が住んでいた。
その子には俺の姿が見えるようだ。
でも、俺に気づいていないふりをしている。
俺はその子のことがちょっと好きだった。
俺のこのちからは、俺のためにある。
空を駆けて、天気を変える。
それは俺のちから。
それは俺の自由。
そのちからを、誰かのために使うつもりはない。
おれが、おれのためだけにつかうちから。
目が覚めた。
夢をみていたようだ。
目が覚めて思った。
俺が自分の子供たちにしてあげられることは、
メシを食わせること。
お菓子を買ってあげること。
おもちゃを買ってあげること。
からかって、かわいがってあげること。
それだけ。
それ以外のことは、なにもしなくていい。
それ以外のことは、なにもしなくてよかった。
俺は空を飛べる。
天候を操れる。
でもそのちからを、子供たちに対して使うつもりはない。
それはおれのちからであり、
それはおれの自由であり、
それはすべておれのものだ。
子供たちはおれを見なくていい。
家族はおれを愛さなくていい。
家族はおれを好きにならなくていい。
おれを見て、
おれを好きになって、
おれを愛するのは、別の人の仕事だ。
そう、夢の中で出てきた、神社の女の子。
それは彼女の仕事。
おれを見て、おれを感じて、おれを愛するのは、
彼女の仕事。
だからおれは家族に愛されなくてもよかった。
おれのちからは彼女のためにある。
おれは彼女のためにうまれてきた。
おれは彼女と愛し合うためにうまれてきた。
だからそれ以外のことは、たいていどうでもいいのだ。
そう思えないときもあるけど。
俺は神様だった。
おれは俺のことを信仰してくれる人にだけ自分のちからを発揮できる。
そんな勝手な神様だった。