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Mr.正月
お正月が完全に終わった。
近所の大きな神社も、昨日まではギリギリ焼きそばとかたこ焼きの屋台が出ていたみたいだけど、さすがに1月8日になったら撤退するだろう。
1年に1回しかやってこない、大きなイベント。
スポーツや音楽などと違い、誰もが参加できてしまうお正月。
ひとりぼっちのおれでさえなんとなく楽しかったのだから、家族がいたり恋人がいたりした人は、もっともっと楽しかっただろうね。
けどその分、喪失感を感じている人も少なくないだろう。
会社に行きたくない。
学校に行きたくない。
そう思ってしまうのは自然な気持ちだと思う。
5月の大型連休が終わったあとも。
夏休みが終わったあとも。
学校に行きたくなくて、学生が自殺したりするよね。
会社員が会社を辞めたりするよね。
ずっと絶望してたり、ずっと苦しかったりしたら、
それが普通だからなんとか耐えられることも、
なまじ希望を見せられたり、楽しかったりしたら、
もうそこに戻れない。
絶望に戻れない。
苦しみに戻れない。
帰りたくない。
終わらせたくない。
正月を。
夏休みを。
GWを。
終わらせたくない。
終わってしまうのなら、自分も終わりたい。
正月と共に死にたい。
夏休みと共に滅びたい。
大好きな人とずっと離れたくない。
その気持ちは痛いほどよくわかる。
普通に日常に戻れたあなただって、
その気持ちはすごくよくわかるよね。
ずっとお正月だったらいいのに。
その気持ちは誰もが理解できると思う。
おれは正月を連れていくことにした。
正月は終わってしまうかもしれない。
さすがに「1月8日もまだ正月だ」とは言えない。
そんなのわかってる。
世間一般に正月は終わっていても、
おれの心は正月だ。
おれの心の中にはいつ何時でも正月がいる。
祭りは終わった。
でもおれの中では終わっていない。
ずっと一緒だよ。
1月8日も、5月6日も、9月1日も、
おれは正月なんだよ。
おれが正月なんだよ。
おれは正月の化身。
おれは正月そのもの。
1年365日、すべての日が正月なんだ。
だからおれは絶望しない。
一瞬するかもしれないけど、でもすぐにその絶望をかき消す。
なぜならおれがお正月だからだ。
絶対に離れないからな。
心から愛してるぜ。