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子供の頃、マンガに登場する様な超能力者になりたいと思ったことありませんか?

私はあります。いい大人になった今も思ってます。そして私の能力を使い、世の中をあらゆる固定概念をひっくり返し世界を混沌の・・・・


申し訳ありません、ちょっと白熱してしまいました。

私は突然そういう思いに駆られた時、海岸線の磯に生息する大量のフナムシを見に行きます。

なぜ大量のフナムシがいる場所に?と思うかもしれません。しかしこれにはちゃんとした理由があります。


大量の群れで動くフナムシ達は、人間が踏もうとするとどういう訳か遠くに逃げようとせず、その人間の足形と全く同じ形だけ空間を空け、それ以上動こうとし無いのです。

単純に大量にいるせいで動くスペースが無いのか、それとも私と同じで怠け者なのか、理由は分かりません。

ですがこの様な性質を持つフナムシの群れの中を歩いていると、何だか自分がフナムシを潰さないように、思うがままに操っているような気持ちになるのです。

言うなれば冒頭で言った、マンガの超能力者の様な気分になれるんですよね。


去年も私は人生に対する不満を超能力者になって解消するべく、毎年行っている大量のフナムシのいる磯場に向かいました。

例年通りフナムシは沢山いた。大きいのや小さいのフナムシが、絨毯の如く岩場を埋め尽くしています。足の踏み場がありません。

その中を私が闊歩すると、やはりフナムシは足形と同じ形に避けて行きます。

ポケットに両手を突っ込み、物思いに耽る様な物うつげな表情で歩いていると、段々と能力者気分になってきます。

このフナムシを使って街を襲い、徹底的に蹂躙してやる。俺の家族を殺した社会に報復してやるのだ・・・・!

そんな小学生の様な妄想に耽りながら磯を歩いていると、少し遠くの海の方に何にかボールの様なものが浮かんでいるのが見えました。

よくよく目を凝らして見ると、人の頭が浮かんでいました。


老人の頭。


その頭は段々と並行移動でこちらの岩場に近づいて来ます。

水死体・・・いや幽霊か?

私は驚き、その老人の頭から目を離すことが出来ませんでした。頭が岩場に近づくにつれ段々と上半身を表し始め、ついには完全に陸地に体を見せました。

一見海水パンツを身に付けた唯の老人に見えました。しかし全身を海水に濡らし、年老いて皮膚の弛んだ姿で歩く姿は何か妖怪じみています。

海から上がった老人は岩場をノソノソと歩いて行きます。

そこで私は驚愕の光景を目にすることになりました。

どういう訳か老人が歩いてもフナムシは動こうとせず、老人に踏まれるがままになっているのです。

私は何だか今見ている光景が現実の様に思えませんでした。突然海から現れた老人も、一度も踏まれることのなかったフナムシが、何の抵抗もなく踏まれて行く様子も。

マンガで言うならフナムシを操る能力者である私の力を、平然と打ち破られた様なそんな心持ちでした。同時に自分より強い人間がいる事を知って、世界の広さに愕然するキャラクターの様な心境にもなりました。

老人はそんな私を気にする様子もなく、磯を抜けて隣接する国道の方へ歩いて行ってしまいました。


老人が歩いていた岩場に言ってみると、やはりフナムシ達が踏まれた後がありました。

やはり幻ではなかった。

そんな踏まれたフナムシ達を見ながら、このままじゃ死んでいった家族の復讐が出来ない。もっと、もっと強くならなければ・・・!と私は決意するのでした。


今年の夏、あなたも超能力者になってみませんか?










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