50代で独学!日本語教育能力検定試験体験記
こんにちは。たまです。
わたしは2018年度日本語教育能力試験を受験しました。その時にいろんな方の体験記がとても参考になり、ありがたかったです。その恩返しの気持ちをこめて、50代にして独学で試験に臨んだ体験をシェアしたいと思います。少しでも参考になれば幸いです。
日本語教師になるための勉強を始めることにした
6年間介護を続けた認知症の義母がグループホームに入り、時間に余裕が持てるようになりました。これを機に、若い頃の夢だった日本語教師になるための勉強がしたいという思いがむくむくと芽生えてきました。
地域の日本語教室などでボランティアで日本語を教えるには、特に資格や条件はありませんが、日本語学校や海外で働くためには、以下のような条件が必要です。厳密には、今の日本では日本語教師の公的な「資格」はありません。今後、資格を設定しようという動きはあるようですが、今のところ、下記の条件のうち、一つを満たしていればOKというところが多いのが現状です。
1)大学で日本語教育を勉強する
2)420時間の養成講座を受ける
3)日本語教育能力検定試験に合格する
フルタイムで仕事をしつつ、地元で暮らしながら勉強するつもりでしたので まず、1)は無理です。
2)の養成講座の学校も、地元にはありません。通信講座も考えましたが、その時点で「文化庁届出受理」している通信講座は、ありませんでした(「文化庁届出受理講座」でないと、せっかく講座を修了しても採用されない場合があるそうです)。通信講座で理論を学び、実習は県外にある学校に通うというコースがありましたが、現実的ではありませんでした。しかも50~60万かかる費用には躊躇します。
そこで必然的に、3)の日本語教育能力検定試験合格を目指すことになります。検定試験対策の通信講座もありましたが、やはり初期費用に10万ほどかかるし、何より、マイペースで自分なりに勉強をしたかったので、独学の道を選びました。
さて、そう思い立ったものの、年とともに老眼がすすみ、読書力も減り、記憶力も衰えている昨今。語学の勉強を本格的にやったこともない。そんなゼロからのスタートです。
まずは、日頃使っていない脳みそを活性化させるためと、数十年ぶりの「試験」というものに慣れるために、「WEBライティング検定試験」を受けることにしました。いわばウォーミングアップです。
いきなり日本語教育の勉強を始めて、その難しさに最初から「ダメだ~」と落ち込んでしまわないよう、助走時期を設ける。自分のモチベーションアップのための、これも作戦のひとつです。
毎週日曜日の朝、数時間勉強時間を作りました。1ヶ月ほどの勉強で合格。これで、日常の中に勉強する「習慣」ができました。
具体的な勉強方法
本格的に始めたのは4月。最初に過去問をざっと1回やってみて問題形式や大体のボリュームを把握。この時点では試験範囲を見ても何が何やらさっぱりわかりませんでした。
そこでまずは全体を俯瞰するために『日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識50』(アルク)をノートを取りながら精読。試験時に見返すことができるようなノート作りを目指しました。これを読みながら、自分の苦手分野もチェック。
2冊目で『日本語教育能力検定試験合格問題集』(ヒューマンアカデミー)をやってみましたが、初っ端から全然わからなくて、がーーーん、となる。
とりあえず、それは脇に置いといて、今後も必ず必要になる文法を基礎から固めるために『考えて解いて学ぶ日本語教育の文法』(原沢伊都夫著)から取り掛かることにしました。
この頃から毎日1時間の勉強が定着してきて、だるだるのゴムみたいだった脳みそが少し引き締まってきた感じになってきました。
3冊目『音声を教える』(国際交流基金/磯村 一弘著)。自分はアクセントの聞き取りが得意なんだとわかり、少し気が楽になりました。音声学は学生の頃から好きでしたしね。
〔参考〕日本語教育能力検定試験 アクセント問題対策
6月。サッカーW杯が始まり、勉強滞る。
7月。文法と音声以外の問題については、まずは用語を頭に入れないと!ということで、『日本語教育能力検定試験に合格するための用語集』(アルク)を使って単語カードを作ってみました。カードを見返すためというより、書いて覚えるための作業でした。
8月。本職の方のイベントのため、ほとんど勉強できず。
まとまった時間がとれなかったこの頃は、インターネットで過去問や例題を掲載しているサイトを探して問題を解いたり、わからない用語を調べたり、日本語授業の動画を見てイメージをふくらませたりしていました。
9月。『日本語教育能力検定試験に合格するための記述式問題40』(アルク)に取り組み始めました。毎朝出勤前にコメダで1問ずつ解くのがとても楽しかったです。1問につき20分を目標に練習しました。本番では30分使えたので、気持ちに余裕がもてました。
この頃購入した『日本語教育のスタートラインー本気で日本語教師を目指す人のための入門書』(荒川洋平著)がとてもよかったです。それまで勉強したことが「点」だったとしたら、この本で「線」につながり「面」になり、さらに立体的に立ち上がってくる感じ。記述式問題を解きながら、この本でわからないことを確認していくことで、ぐん、とすすんだ気がします。
そうこうするうちに残り1ヶ月。ようやく問題集に着手です。ラストスパートで『日本語教育能力検定試験合格問題集』と過去問題2年分(H26とH28)なんとかやり切りました。ほんとうは本番さながらに時間設定してやりたかったのですが、そのためのまとまった時間がとれず、途切れ途切れでした。
問題を解きながら、わからないところを『日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド』(ヒューマンアカデミー)『日本語教育能力検定試験に合格するための本』(アルク)で拾い読みして確認。
問題集をやり始めた10月初め頃は、かなりキビシイ結果でしたが、ラスト1ヶ月の追い上げで20点くらいアップしたかな、と思います。
使用した参考書
「日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド」ヒューマンアカデミー
「日本語教育能力検定試験合格問題集」ヒューマンアカデミー
「日本語教育能力検定試験に合格するための本」アルク
「日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識50」アルク
「日本語教育能力検定試験に合格するための記述式問題40」アルク
「日本語教育能力検定試験に合格するための用語集」アルク
「平成26年度日本語教育能力検定試験試験問題」凡人社
「平成28年度日本語教育能力検定試験試験問題」凡人社
「考えて解いて学ぶ日本語教育の文法」原沢伊都夫著
「音声を教える (国際交流基金日本語教授法シリーズ2)」国際交流基金/磯村 一弘著
「日本語教育のスタートラインー本気で日本語教師を目指す人のための入門書」荒川洋平著
↑『教授法』は買ったけど時間がなくて読めませんでした
試験前準備
試験は休憩をはさみながら、90分、30分、120分。朝から夕方までの長丁場です。
こんな長時間、集中していられるんだろうか、ということが不安のひとつでした。この年になると、トイレも近いし。ただでさえ、緊張するとトイレに行きたくなってしまうし。
もはや体力勝負。とにかく体力温存!体調管理!食事や着るものなども調整。
1ヶ月ほど前から、試験時間に合わせてタイマーをかけて、体内時間を慣らすようにしたり、思いつくことはいろいろ試しました。
当日
試験問題が配られてから解答を始めるまでの数十分、無言で身動きせずじーっと待つ時間が地獄でした。こんな時間があるとは…。想定外でした。緊張マックスに高まって、途中でトイレに行きたくなって困った…。思ってるよりメンタルが衰えていたことを痛感しました。
試験1は、時間が余り、見直す余裕がありました。1問50秒でさくさく解く練習が役立ちました。
試験2は、得意なリスニングなのに、無言地獄の時間が長くて、緊張のあまりからだじゅうが冷たくなって、後半はほとんど集中できず・・・。無念なり。
試験3は、無言時間が短かったのと、疲れ目を温めるために持って来ていたアイマスクを丹田にあてて温めたので、比較的リラックスできました。記述問題に30分使うことができたのは大きかったです。
試験時間が長く、広範囲の試験なので「日本語教師には、気力と体力が必要」であることを試されているのでは?という声があがるほど、ハードな試験でした。
結果は・・・
結果は「合格」でした!
自己採点や、各種データによる分析をみると、か・な・り、ギリギリだった感じで、ひやひやしました。試験2の時の体調が良ければ・・・と悔やまれますが、仕方ありません。試験3は明らかに勉強不足でした。おそらく記述で得点を積むことができたのだと思います。記述問題の練習をみっちりやっておいてよかったと思いました。ちなみに試験3の記述試験はマーク式による問題の総得点の上位約60%に位置していないと採点されないということを、あとで知りました(知ったのがあとでよかったかも・・・)。
2018年度は合格率が約28%で、例年と比べても高かったようです。それもラッキーだったかもしれませんが、運を引き寄せるのも実力の内ですからね。
50代ならではの対策
フルタイムで仕事をしながら、いかに効率的に勉強するか。
なまった脳みそをいかに活性化させるか。
試験当日、6時間もの長丁場で、いかに体力・気力を保たせるか。
などなど、仕事をしている50代ならではの工夫や調整も必須でした。
学生と違って、勉強ばかりやってるわけにはいかないし、一夜漬けみたいに一気にがんばる馬力もない。体力気力のバランス考えながら、できることをやるのみです。
ふだんパソコンばかり使っているので、手を使って文字を書くことさえ、最初は疲れていました。筋トレのようにコツコツ書き続けることで、字もきれいに書けるようになっていきました。
一方、年を重ね経験を積んできたことのメリットもあります。スキーマをフル活用させることで習得がすすむことを、まさに実感しながらの学習でした。
勉強法も、今までの年月いろいろ試してきたからこそ、効率的で自分に合った方法を迷わず採用することができたと思います。
勉強法ということでいえば、新しい参考書や問題集をやる前に、必ず「フォトリーディング」をやっていました。フォトリーディングについて話すと長くなるので、ググっていただきたいですが、簡単に言えば、本の内容を潜在意識に映しこむ方法です。潜在意識に送り込まれた内容は長期記憶に保存されるのです。参考書類は1回読んだだけで読み返すことはほとんどなく、短時間で勉強できたのは、フォトリーディングのおかげだったと思います。
フォトリーディングでは、本を読む前に「アファメーション」をします。この本によって、どのような自分になりたいかを、ありありとイメージすることが大切です。
試験に合格するためにがーっと暗記して、試験が終われば忘れてしまう、という勉強ではなく、この勉強を通してどのような自分になりたいか、目的をはっきりさせてイメージする。これはどんな勉強にも通じる秘訣だと思いました。
検定試験を終えて
くどいようですが、フルタイムで仕事をしながら50代で独学で試験勉強をするのは、かなり大変でした。自分をほめてあげたいと思いましたね。しかし、日本語教師としては、実践も経験もなく、これからがスタートです。就活していると、やはり養成講座を受けられる環境があるなら、受けたほうがいいと思いました。模擬授業や教案提出などの課題は、検定試験の勉強だけでは難しいです・・・。
この試験の受験者は40%が50代以上。合格者の年齢が発表されていないのでわかりませんが、合格した50代以上の方はどんなふうに仕事をされているのでしょうか。もしお仲間がいらっしゃったらTwitter @tama_JL8にコメントいただけたら嬉しいです(^^)