今到来する、【産地発ブランド】の第2フェーズ
「産地発ブランド」というカテゴリのブランドが各地で生まれてきて、ここ十数年でそれぞれに知名度のある産地のブランドができてきました。
HUISは約10年ですが、その前後で多く生まれてきたのは、まさにWEBとSNSにより本当のことを適切に伝え、適切に受け止めてもらえる時代が訪れたからです。
Facebookが生まれたのは2004年でそのピークは2010年代後半。インスタグラムが日本で始まったのは2014年で、2019年には日本人ユーザーは3000万人を超えています。
そんな中で「産地発ブランド」は今、その第2フェーズに差し掛かっている肌感覚を覚えています。
これまでは順調に伸びてきた様々なブランドも、今までのようにいかなくなってきた感覚をおそらく感じていて、それは売上であったり組織体制であったり、課題は様々ですが経営そのものの悩みを抱えるタイミングが到来している。
一方で第一世代を追う力を持った新たなブランドも次々に生まれてくる。チャンネルの変わる一つの転換点だと感じています。
僕自身が周りを見ていて一番感じている傾向は、長く続けるほど、顧客さんへアプローチする商売にどうしても傾倒してしまっていくということ。
いわゆるリピーターさんにどれだけたくさんの商品を買ってもらえるか、というのは、アパレル業界ではある意味一番のセオリーで、分かりやすいのが昔ながらの「ブティック」のスタイルです。
アクセスは悪くともこだわりの店主がセレクトするお店を信頼し、足繁く通ってくださる顧客さんのためにおすすめし、来店するたびにたくさん買ってくださる。
ウェブも同じことで、自社サイトで売れるのであればなおさら、大きな利幅になる。SNSを使えば顧客アプローチも容易です。
信頼関係の中で消費をしてくれることはある意味一番効率がよく、運営側にとって負荷がかからないため利益は圧倒的に伸ばしやすい。
産地でものづくりをして価値を伝えるという新しいムーブメントも、世の中全体としてはまだまだニッチな状態です。
その黎明期に、大きく売上を伸ばしていくために、ここに勝ち筋を見出していく、というのは経営の中でわかりやすい方向性です。そして、多くがそう進んでいっている気がします。
でも、そうした顧客さんもいずれ手持ちの服は溢れます。
必要以上のものを買うことに人は罪悪感を感じます。
提供する側にとっても本来そうでしょう、健全だったはずの循環がどこかからそうでなくなっていく。
日本全国どの地域にもあった「ブティック」という形態のお店の多くは、今ありません。
でもブランドは皆、今いる顧客さまに新たに買ってもらう新たな商品を、頭を捻って考えます。もうみんなこれは持っているから、新たにこんなものはどうか、そんな話をたくさん聞きます。
今まで売れてきた実績あるヒット商品がしっかりとあるのに。
僕は、HUISをはじめて10年が経ちました。売上は6億を超えるようになりました。
毎シーズン多くの人がHUISの服を買ってくれるようになり、経営は安定し、需要に生産が追いつくことがない状態が続くようになりました。
でも今も、東京に行って、名古屋に行って、大阪に行って、むしろ、浜松を歩いていて、通りすがる人が「HUIS」のこと「遠州織物」のことを知っていると感じたことはほぼ全くありません。
実際、誰も知りません。
売り場で出会った新規顧客さんに、HUISよりももっと有名な産地発ブランドの名前を聞いても、知らない、と言われます。
僕が考えるべきは、その人たちに、遠州織物のこと、そして日本のものづくりの誇りを伝えることだと思っています。
伝えれば伝えるほど伝わり、その誇りは伝播していきます。
本当の価値が、買い手に伝わり、消費され、作り手に循環します。
その道は、間違いなくまだまだ青天井です。
「今いる顧客さまに新たに買ってもらう新たな商品を」は、ユニクロや無印やUAが考えるべきことです。
「産地発ブランド」の第2フェーズが、僕は今から一層楽しみです。