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並べるのが仕事ではなく、伝えるのが仕事

中川政七商店「大日本市」での出会い

先日、中川政七商店さんが開催しているB to B向けの展示会「大日本市」に出展させていただきました。

中川政七商店さんとはなにかと仲良くさせていただいていて、HUISはパートナーブランドという位置付けになっており、毎回こちらの「大日本市」には参加させていただいているのですが、今回もブースでもいろいろな方と、いろいろなおもしろいお話をいただきました。

「大日本市」会場

HUISの取扱店さんは、現在全国に約70〜80店舗ありますが、この大日本市で出会った取扱店さんもあります。
やはり出会い・ご縁は大事で、こういう場を作ってくださり、毎回熱心に声をかけてくれている中川政七商店さんに感謝です。

こうして毎回出展させていただいている中で、心苦しく思うひとつが、百貨店や商業施設のバイヤーさんなどから「うちでぜひPOPUPイベントを開催してもらえないか?」というお誘いです。

HUISを知っている方からは、「ものすごい量のイベントをこなしているよね」と言われることが多いのですが、実際多くて、現在も年間約100箇所でのイベントを開催しています。
その多くが以前からお付き合いのある百貨店さんや取扱店さんなどでのイベントで、現実、在庫と販売スタッフという資源の面から、これ以上新たなお話を受けるのが難しい状態です。

HUISブース

HUISでは、取引先の大小は関係なく、早くからお声をかけてくださっていたところや、想いを持ってHUISを扱ってくださる相手とのお付き合いを最優先しています。

最近HUISのことを知って、ぜひうちで、というお声掛けをいただけることはもちろんとても嬉しいのですが、こうした優先順位から、新たなお話に心苦しいお返事をさせていただいている状況です。


並べるのが仕事ではなく、伝えるのが仕事

さて、そんな年間100ヶ所でのイベントを開催しているHUISですが、ウェブサイトやアプリには半年間のイベント出展予定と、過去の出展一覧を掲載しています。

HUISウェブサイトより

多くが百貨店さんでのイベント開催ですが、取扱店さんで新たにイベントをやる場合などは、HUISスタッフが手伝いに入らせてもらうことがあります。
そして、そうするととても売り上げが伸びます。

多くの場合、そこで「やっぱりHUISさんが来てもらわないと」というお話をされるのですが、一方で、「同じことが起こるはずだからここで吸収しないと」と思ってくれる取扱店さんもいます。

HUISの取扱店さんは全国にたくさんありますが、大きな差が、ここで生まれます。
それは、僕自身が販売に立っていた頃と、全く同じ現象です。

HUIS渋谷ショールーム

そもそも、ブランドやメーカーの役割というのは、価値のあるものを作ることです。
そして、売り場の役割は、その価値を伝えることです。
HUISはたまたま、そのどちらの役割も果たしているブランド展開をしていますが、それは例外です。
売り場の専門職がその機能を果たさない場合、残念ながら先はありません。
それは、HUIS商品の取扱に限らない話でしょう。

売り場というのは、並べるのが仕事なのではなく、伝えるのが仕事です。


現代のアパレルブランドやセレクトショップが陥る罠

コロナ禍がはじまる直前の頃、ある百貨店さんに伺った時、館を取り仕切る部長さんが「松下さんちょっとお茶しませんか?」と声をかけてくれたことがありました。

百貨店の売上の中核を担うアパレルは近年ずっとジリ貧で、テナントに入るブランドの代表や役員の方と話す時に明るい話題はほとんどない。
先方から「話があるんです」と切り出されるとだいたい退職か、店舗の撤退・縮小・廃業などの後ろ向きな報告で、自分たちの身の回りというのはそんな風なんですが、松下さんはどうしてそんなにアパレルには明るい未来しかないって顔をしておられるのか?と。
僕が来る時に捕まえてどうしても話が聞きたいと思っていたということでした。

その時は、単純にHUISの活動をしている中での肌感覚とこれからの展望的な話をさせてもらったと思うんですが、その後コロナが訪れ、アパレルの状況も店舗の状況もさらに大きく変わりました。

百貨店さん・路面店にかかわらず、素晴らしいブランドさんやセレクトショップというのはたくさんあってそういうところはコロナ禍も関係なく伸びてきました。

一方、大きな魅力があるのに勿体無さを感じるブランドやお店もよくあります。
その歯痒さの要因の多くは、見事に画一的な分析経営をしていること。市場と消費者の傾向を分析して、売上と利幅を最大化できるよう、製品企画や配架の計画を緻密に立てて、売り場にそれを渡す。そうして製品を渡した売り場の傾向を分析する。

そもそも、これだけ巨大になり高度化したアパレル業界には、多くの経営理論やノウハウがあります。
皆がそうした高度な技術で、徹底的に合理的な経営を目指した結果、ジリ貧になっていく。近年の市場規模のグラフを見れば一目瞭然でしょう。

ホームセンターやドラッグストアのような業態ならそうした経営手法が活かされますが、その先にあるのは工業的な製品を作っていく未来です。

アパレルの本質的な価値は、文化的な要素を多く含んでいることです。
それだけに、一方で、アーティスト的な経営者の多くが行き詰まってしまうのもアパレルのおもしろいところ。

では、こうしたアパレル業界の中で、ブランドやショップは何を大切にすればよいのか?

その答えは、売り場における「肌感覚」だと僕は考えています。

肌感覚を元に逆算して製品を企画し、生産計画と、配架計画を立てる。
残念ながら、売り場にいない人間がいくら計画を立てても、空を切るだけです。


ではその肌感覚をどう身につけるのか?

その答えはお客さんとのコミュニケーションの中にしかありません。





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