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エッセイ『日本のいちばん長い日』(1171字)1967年映画 岡本喜八監督。70年代に初見。50年後改めて鑑賞。当時から抱いていた4つの疑問を解消。読み切り

 映画『日本のいちばん長い日』(1967年)を再び観た。一回目は学生の頃、七十年代。寮で呼びかけがあり、食堂に大勢集まって観た。白黒ブラウン管テレビの音が割れて、所々聞き取れない所があったのはご愛嬌。見終わって、四つの疑問点が残った。
 頭の片隅に「?」を抱えて50年。視聴する機会もなく、昨夏BS放送を録画。ビデオ再生を繰り返して、今回ようやく納得できる結論に達した。


疑問1:一日の始まりは正午か?

 疑問一点目。「いちばん長い日」とあるが、映画が詳細に描写したのは1945年8月14日正午から、翌15日の正午までの24時間。いったい一日の始まりは正午からなのかという疑問。
 欧米での「いちばん長い日」といえば、ヒット映画『史上最大の作戦(The Longest Day)』(1962年)で描写されたノルマンディー上陸作戦だろう。連合軍の作戦は深夜零時過ぎから始まる。
 調べてみた。結論から言うと、一日の始まりは正午の12時間前(深夜零時相当)と決められている。ただ一日の長さでいうと、正午から翌正午までの24時間をいう。曖昧に見えるがあくまでも基準は正午だ、正午と深夜零時の2基準ではない。本来一日の始まりは正午だったのだが(天文時)、生活の利便さを考えスタートを「正午の12時間前」に移動したとのこと(常用時)。
 くだくだ書いたが、結局「いちばん長い日」は心の中の長さなので、そもそもスタートラインに意味は無い。

疑問2:難解語

 疑問点二つ目。難解語がわからないという初歩的な疑問。例えば「しょうしょうひっきん」は今回初めて調べて分かった。「承詔必謹」は十七条憲法にあるという。上意下達の意味で映画では使っていた。しかし天皇を崇拝する青年将校たちは敢えてこれに抗うという、皮肉な行動を取っていた。

疑問3:昭和天皇の尊顔

 三つ目。昭和天皇を演じた俳優の顔を極力出さない演出をしていたのはなぜかという疑問もあった。1960年右翼による浅沼稲次郎暗殺事件があった。もしかすると、天皇を演ずるのは不敬であると考える右翼の、テロを恐れていたからなのではないかと思った。

疑問4:叛乱失敗の原因

 疑問点四つ目。青年将校の叛乱が失敗した原因が私には不明瞭に映った。戦闘シーンもなく尻切れトンボのように収束した不満があった。今回、何度も映像を巻き戻したりして漸く理解した。東部軍司令官田中大将、彼の果敢な行動が皇軍相撃つ事態を回避した。
 叛乱将校たちは、近衛第一師団長を殺害。師団長命令を偽造した。偽命令で近衛歩兵連隊を指揮、クーデターを画策した。叛乱に気付いた東部軍司令官田中大将は、戦闘による鎮圧をしなかった。僅かな部下を引き連れ、殆ど丸腰で宮城に入った。だまされた指揮官を説得。叛乱分子を個別に捕らえて鎮圧、対応していった。
            (完)

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