セイウンスカイの魅力PartⅡ -有馬記念直前すぺしある-

※この記事は1998年の2冠馬セイウンスカイのファンサイトに掲載していたものの再掲です。

1.大らかな逃げっぷり

 京都大賞典では3コーナーまで最大20馬身ほど離す、まさに大逃げ。3~4コーナーでぐぐっと引きつけ、「ああ、もう終わったか」と思わせておいて、最後の直線もう一度突き放す、大らかというよりは「小ずるい」とでも言いたくなるような、巧みな逃げ。一世一代の名演技「死んだフリ」に、見ていた私はすっかり幻惑されてしまった。あんなにドキドキハラハラさせられたレースは今までになかった。極私的年度代表レースは京都大賞典で決まり。
 で、幻惑されついでに、菊花賞も何故か現場で観戦。すっかり「逃げ」を体得したセイウンスカイは、今度は肩の力が抜けたような、やはり大らかな逃げっぷり。スケールの大きな逃げのスタイルは、39年ぶりの逃げ馬による菊花賞制覇として、セイウンスカイに2冠目をもたらした。しかも従来のレコードを大幅に塗り替える世界レコード付き。

 有馬記念も先行馬が掛からない限り、楽に逃げられそうだ。彼らしい大らかな逃げで、果たしてゴール板を先頭で通過できるのか。3~4角、誰がまず彼を捉えようと動くのか、興味は尽きない。もし勝つことがかなわなくても・・・あの大らかな気持ちの良い逃げっぷりが見られれば、そして無事ゴールすることが出来れば、私としては大満足である。

2.妙な毛色とキュートなしっぽ

 春先から比べると少うし、全体的に白っぽくなってきたようだ。特に顔。流星のように見える鼻筋の白が拡がってきたように見える。そのせいか、生来のすっとぼけたような顔が、ますますすっとぼけた顔に見える。やんちゃを働いていても、ゲートを嫌がっていても、その顔のせいで、どうも憎めない。困ったヤツだ。あの妙な毛色は、どうもお母さん(シスターミル)の栃栗の毛色の影響ではないかと思っている。菊花賞の日、晩秋の傾いた光の中で、あの毛色はとても綺麗だった・・・。

 そして、しっぽ。ああ、あんなに祈ったのにも関わらず、セイウンスカイのしっぽは毎度ぱっつりと切られてしまっている。
 セイウンスカイのしっぽはシャギーカットこそが似合う
と再度、私は断固主張したい。
 が、他にお洒落をするところもないので、仕方ないのかもしれない。やっぱり晴れの舞台には何かしたいだろうし。メンコに下手に模様を入れられたり、ラティールやアドマイヤコジーンがしているような、可愛らしいパステル調のわたりをつけられるよりは百倍ましと思っておこう・・・。だって、同じ芦毛でも絶対似合わないよ、ヤツには。

3.やんちゃな性格

 やっぱりやってしまった京都大賞典。しっぽを引っ張ろうが、鞭で叩かれようが、頑としてゲートに入らない。豪快に尻っぱねを見せてレース前にブーイングを浴びてしまった。ある記事にあった調教助手さんのコメントによると、先にゲートに入っていた馬が気に入らなかったからだそうだが・・・スノーボンバーの何が気に入らなかったというのだろう。まさか、自分より格下の馬が先にゲート入りしたのが気に入らなかったのか?いくら何でも、そんなに賢くも性悪でもない・・・かな?
 また、パドックでは決まったある場所で、立ち止まっては歩くのを嫌がっていた。彼の視線の先には何があったのか?厩務員さんが、その方向を見ながら笑っていたが、そこに何があったのだろう。謎は尽きない。

 そしてゲート試験をクリアして挑んだ菊花賞。パドックでさんざん煩い様子を見せておいて、あまりにあっけないゲート入り。周囲の期待(?)を裏切った。しかし、美浦トレセンに帰った彼はしばらく暴れていたそうな(暴れるって、どう暴れていたのだろう・・・?)。外で大人しくしている代わりに内弁慶になりつつあるのかもしれない。

 有馬記念もゲートに入るまで何をやらかしてくれるやら・・・ちょっとだけ楽しみである。何故って、ゲートに入る前どんなにお馬鹿をしでかしても、彼はレースではちゃんと一生懸命走るからね。

4.一番人気にならない(なれない?)

 つ、ついに、有馬記念では一番人気に推されそうだ。その日は雛を見送る親鳥のような、ちょっと寂しい気分になるのかもしれない・・・などと書いたがこんなにその日が早く来ようとは。新聞紙上を連日賑わしている彼を見る度、確かにちょっと寂しくなる(これで、いざ当日一番人気でなかったりしたら大笑いである)。マイナー時代から追っかけてきたグループが、突然ブレイクしてしまったかのようだ。何も変わっちゃいないのだが、距離感だけがちょっと拡がったような・・・。まあ、せっかくこんな人気馬になったのだから、レース後、人気が大暴落しないよう祈るのみである。

 一番人気の逃げ馬は勝てないなどと、世間では言われているが、そんな言葉をあざ笑うように逃げて欲しい。馬には人気なんて関係ないのだから。関係有るとしたら・・・鞍上。頼みますよ、ノリちゃん。

5.地味な血統

 「残り物」だったらしい彼だが、その掌には父から幸運の星を授かっていたのかも、しれない。父は星を預けて何処かに行ってしまったようだが・・・。と書いたが、確かに彼は星を握っていたようだ。父の得意としていた2400mを、産駒としては初めて京都大賞典で勝ち、さらに3000mの壁をも突破した。祖父のポッセ、父のシェリフズスターと不遇をかこっていたが、いろんな巡り合わせを経て、ここまで彼はのし上がってきた。どうぞこの先も幸運が巡ってくるようにと祈らずには居られない。ささやかなきっかけ一つで、光にも闇にも転ぶ世界だから。

 最近、同じ父を持つ同期のセイウンエリアが2500mの美浦特別(900万下)を勝った。彼は差し、追い込みを得意とするようだが、大舞台で相まみえる日も近いかも知れない。セイウンエリアは最初の3戦、鞍上横山義騎手であった。最近はずっと岡部騎手が手綱を握っているようだが、もしまた横山義騎手に戻るようなことがあったら、馬、鞍上同姓(?)対決が見られるかも、などと勝手に妄想している。

6.関東馬

 いよいよなじみ深い中山に凱旋である。皐月賞を現場で観戦出来なかった私としては、中山で精一杯の応援をしたい。右回りの方がスムーズと言う話もあるし、是非またここで・・・。

7.胴長な馬体

 誌上パドックはいつ見ても、迫力のない馬体である。毛色のせいで平板に見え、他の馬と比べると筋肉のつき具合がよく分からないのだ。しかし菊花賞ではパドックで彼のお尻に惚れ惚れと見入ってしまった。桃のような割れ目が何とも言えないのだ。もし写真で見てみたい人がいたら、リンク集(馬を巡る扉)からぶりさんの「黄色いしっぽ」に行ってみると、彼のお尻のアップ写真が載っている。あの割れ目を指でなぞってみたいと思うのは私だけか?

-いよいよ年末の大舞台。好きな馬から買うのが正しいと言われる有馬記念だが、好きと言うだけでなく、彼には配当でも今年一年大変お世話になった。競馬歴2年の私だが、彼ほど私にお金をくれた馬は他にいない。ここで配当が低いからと買わないのは仁義にもとると言うものだろう。たっぷりと馬券を買わせていただきます。

(1998/12/24記)

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