セイウンスカイの魅力PartⅠ
※この記事は1998年の2冠馬セイウンスカイのファンサイトに掲載していたものの再掲です。
1.大らかな逃げっぷり
彼を初めて見たのはジュニアカップの映像だった。深夜のダイジェストで、最後のコーナーを先頭で回ってきた妙な毛色の馬が、他馬を突き放してゴールした姿が印象的だった。「セイウンスカイ、先頭でゴールイン」とかいう実況で「お、ちょっと良い名前だな」と思った。この時点でだいたい惚れ込んでいるのだが、しばらくは忘れていた。次に彼に会ったのは弥生賞。サニーブライアンの引退式を見に行った時のメインレースだった。彼はサニーブライアンを彷彿とさせるような逃げで、2着に粘り混んだ。ゴール寸前スペシャルウィークに差されてしまったが、その大らかな逃げっぷりに私はすっかり惚れ込んでしまった。逃げ馬にありがちな悲壮さがなく、かといって計算された逃げかというとそうも見えず・・・(もちろん鞍上には緻密な計算があるのでしょうが)、自然体の逃げ、という感じがした。
皐月賞もダービーも彼のその逃げっぷりが見られず残念だったが、次の京都大賞典はメンバー的に楽に逃がして貰えそうなので、おおいに楽しみだ。
(弥生賞でのパドック)
2.妙な毛色とキュートなしっぽ
彼を初めて見たとき、芦毛馬だとは思わなかった。灰色に茶色を混ぜたような微妙な色合い(色辞典で「薔薇灰 rosegray」と言うかなりよく似た色を見つけたのだが、こんな洒落た表現はヤツには似合わん。私の友人は「マーブルグレー」という言い方をしていて、これが割と気に入っている)。角度によって光の加減か、黒っぽく見えたり、灰色っぽく見えたり、見ていて楽しい。そしてちょっぴりかっこいいと私は思っている。
そして、唯一はっきりと「芦毛」と主張しているしっぽ。しかし、それさえ中途半端に先っちょだけが白い。走る動きにワンテンポ遅れながらなびく様が、まるで、どこまでもついてくる子犬のようで何ともキュートだ。しかし、弥生賞ではとても素敵だったそのしっぽが、皐月賞ではなんとぱっつり切られていた。テレビでその様を見た私は、ワカメちゃんカットの綾波レイを見てしまったかのように、都合1分はボーゼンとしてしまった。晴れの日に望んで厩舎なりのおしゃれを施したのに違いない。・・・が悲しいほどに似合わない。せめて、ダービーではそんな事の無いように、と私は祈ったが、願いが聞き届けられることはなかった。
セイウンスカイのしっぽはシャギーカットこそが似合うと私は断固主張したい。ホントは切らずに自然のままがいいと思うのだが・・・。
3.やんちゃな性格
ただの気性難でわ、何て野暮なことは言わないように。弥生賞のレース後の徳吉騎手のコメントが、おおいに気に入った。「カラスに気を取られて・・・」。ホントか?だとしたら、なかなかいい性格である。
そして、皐月賞はゲート入りをかなり嫌がった。嫌なものは嫌だっ!とでも言いたげなその態度。最後はしっぽを引っ張られてゲート入りしたが、彼はあれをされると更に嫌がるらしい。ダービーでも、少し嫌がっていた。レースが嫌いなのだろう、きっと。それでもレースが始まってしまえば、ちゃんと一生懸命走ってしまうのだから、意外と根は素直で単純なのかもしれない。見ている方は相当はらはらさせられるのだが。
ちょっと前に競馬中継で「セイウンスカイのなつやすみ」というコーナーがあった。牧場で休養中の彼の様子が紹介されていた。皐月賞馬となった彼は、他馬の倍の広さの馬房をもらっているそうだ。そこで、飼い葉桶から飼い葉をふんふんいいながら頬張る姿は、何となく「偉そう」だった。自分が特別、優遇されているのを知っているかのように。だとしたら、やっぱりいい性格である。
4.一番人気にならない(なれない?)
今まで5戦しているのだが、一度も1番人気になっていない。多分、次の京都大賞典でも菊花賞でも1番人気にはならないだろう。1番人気にならない方が、馬券的には嬉しいのだが(皐月賞の時は、単勝が5倍もついたので正直驚いた)、ファンとしてはちょっと悔しい気もするし、そこが、彼らしいというような気もする。彼が一番人気になるのはいつの日か。その日は雛を見送る親鳥のような、ちょっと寂しい気分になるのかもしれない。
5.地味な血統
・・・らしい。血統には全く疎いのだが、大抵そう書かれるので、多分そうなんだろう。血統表からは読みきれないような能力を彼が発露しているのだとしたら、それはそれで面白いし痛快だ。「残り物」だったらしい彼だが、その掌には父から幸運の星を授かっていたのかも、しれない。父は星を預けて何処かに行ってしまったようだが・・・。
6.関東馬
いや、別にこれ自体が魅力というわけではないが、たくさん応援に行けそうだ(秋は2戦続けて京都だが)。美浦トレセンも近いし、一度公開調教を見に行きたいものである。
7.胴長な馬体
芦毛馬にしてはあまりぽっちゃり見えない(そもそもまだ芦毛馬らしくないのだが)。胴長でなかなかプロポーションが良い。私は胴長のすっきりした馬体が好みなので。
-まだいろいろあるのだが、要は贔屓のひきたおしで、何をとっても魅力になってしまうので、今回はここまで。何はともあれ、惚れ込んでしまった馬がもう既にGI馬なのだから、ファンとしては幸せである。逆に言えば頂点に到るまでの過程を、あまり楽しめなかった訳で残念なような気もするが、これはもう贅沢というものだろう。先には厳しい戦いが待っている筈なのだから。
(9/29/1998記)