【あややノート】第24回 ある男の子の変化と育ち~子どもたちの育つ力~
こんにちは。HUG for ALL代表のあややです。いつの間にか朝が冷え込んで、ベッドから出るのに気合いが必要になってきました。
今回のテーマは子どもの「育つ力」。「たいきくん(仮名)」という男の子の変化や成長にフォーカスして、子どもたちの育ちの豊かさや、HUG for ALLが子どもたちに寄り添うまなざしをお伝えしたいと思います。
2年前の出逢った頃
初めて出逢ったのはたいきくんが年長さんのとき。体はまだまだ小さいけれど、すごく大きなエネルギーを持ったお子さんでした。エネルギーがうまくコントロールできなくて、爆発しちゃうこともしばしば。
毎回のように癇癪を起こしてしまうたいきくんに、最初は私たちも少し戸惑いがありました。「この時間はたいきくんは楽しいのかな」「来なきゃいけないと思ってないかな」と不安を感じていた面もあったような気がします。
でも、しばらく経つと、たいきくん自身のエネルギーの向かう先が見えてくるようになりました。興味関心があるものや大好きなもの。それを初めて発見したのは、出逢って半年が経ったくらいでしょうか。
初めのきっかけはちょっとしたことでした。たまたまある日、zoomでクエストフレンドとつないで、プロジェクターで投影をしていたところ、入室するなりプロジェクターへまっしぐら。
少し戸惑いながらもたいきくんの行動を見守る担当のハリーさんを横に従えて、レンズからの光を遮ってみたり、つまみを動かしてみたり、覗き込んでみたりと、ずっと何かを試そうとしていました。
次にたいきくんが見つけたのは、プロジェクターを投影していたホワイトボードにくっついていたマグネットでした。ホワイトボードにはくっつくのに、机にはくっつかない。机の脚にはくっついた。窓は?床は?舞台の上は?と、無言で試し続ける姿に、たいきくんの探究心を感じました。
まだあまり話さなけれど、こちらから「これはどうかな?」と伝えると、こくんと頷いてやってみる。そんな感じでコミュニケーションができたのも、この日うれしかったことのひとつだったなと思います。
好きなものは恐竜と"ばぶちゃん"
自分が大好きなものへの探究心や一途さもたいきくんの素敵なところ。彼と出逢った頃から変わらない「好きなもの」はふたつあります。
ひとつは恐竜。特にティラノサウルスは大好きで、元々は「恐竜塗り絵」を準備しても、ティラノサウルスでないと取り組まないくらいの徹底ぶり。
そこからだんだん他の恐竜にも関心が広がり、いろんな恐竜の塗り絵にも取り組むようになりました。細かい色の塗り分けや、ちょっとした色の違いにもこだわりがあり、たいきくんの「恐竜愛」とあわせて、観察眼の鋭さも感じます。
そしてたいきくんがもうひとつ好きなものが「ばぶちゃん」。アンパンマンに出てくるキャラクター「だだんだん」のぬいぐるみなのですが、たいきくんはよく一緒に連れてきていて、大事なお友達なんだなと思います。
初めてばぶちゃんを連れてきた日は、一生懸命にばぶちゃんの絵を描いていたたいきくん。実物を隣に見ながら丁寧に描いたあとには、いろんな色でばぶちゃんを彩り「レインボーばぶちゃん」を仕上げて満足そうでした。
ばぶちゃんと絵を並べて見せながら、嬉しそうにしていた姿がすごく誇らしげだったのが印象深かったです。
その後もいろんなところで登場するばぶちゃん。塗り絵の空きスペースに描いてみたり、重さを測るおもちゃでばぶちゃんを測ってみたり、たいきくんのそばにはずっとばぶちゃんがいます。
最近は「ばぶちゃん」ではなく「ぶーちゃん」と呼ばれることもあるこの小さなお友達。たいきくんにとってはもちろん、私たちにとってもある意味かけがえのない存在だなと思います。
子どもたちの「好きなもの」をいっしょに好きになること、同じように大切にすること、そういうことから生まれる絆もあるんだなと、たいきくんの姿から改めて感じています。
たいきくんの成長
最近のたいきくんには、人とのかかわりを楽しむ様子や、自分の感情を抑えようとする様子が見られます。自分のエネルギーのコントロールの仕方や、自分の想いの表現の仕方が、上手になってきているなぁと、毎月会うたびに実感します。
この1年は、自分が見て楽しんでいた万華鏡を担当のクエストフレンドにも見せてくれたり、クエストフレンドが石鹸を泡立てるのを手伝ってくれたり、「クエストフレンドのために何かをしよう」という姿が見られるようになりました。
「あそびクエスト」での創作活動でも、自分のつくりたいイメージを形にできるまで、粘り強く取り組めるようになりました。11月のあそびクエストでたいきくんがつくった粘土の恐竜は、背中の羽やトゲトゲ、白い牙、赤い爪までこだわった大作になりました!
HUG for ALLの活動の意味
今回フォーカスしたたいきくんだけでなく、今いっしょに活動している41名の子どもたち、一人ひとりに変化があり、成長があり、そしてその先には限らない未来が広がっています。
子どもたち一人ひとりと丁寧に向き合い、寄り添いながら、その変化や成長を可視化し、定期的に振り返ってみていくこと。子どもの育ちの方向性を見て、そこにどう寄り添うかを考えていくこと。
月に一度のペースで子どもたちと関わり続けていくことで、一人ひとりの変化や成長に気づくことができるのは、私たちの活動の喜びであり、意味でもあるのかなと思います。
この一人ひとりの変化・成長をどのように見取っていくのか、どのように可視化していくのかは、これからまだまだ考えていきたいところです。これからどのように私たちの活動がアップデートしていくか、引き続き見守っていただけると幸いです。