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【あややノート】第1回「安心できる居場所」を掲げる理由

あけましておめでとうございます。
HUG for ALLの活動に関心を持っていただき、このブログを読んでいただいてありがとうございます。

2019年の4月から2021年の12月まで、「HUG通信」としてHUG for ALLの仲間や支援者の方々向けに、HUG for ALL代表としてメッセージをお届けしてきましたが、2022年からはより多くの方にメッセージをお届けしたいと考え、HUG for ALLのnoteでの公開ブログに形を変えて、月1回の「あややノート(※1)」を発信することにしました。

(※1)私たちHUG for ALLは全員がニックネームで活動をしています。子どもたちに対して「大人」として接するのではなく、一人の人として正面から向き合いたいという想いを込めて、子どもたちからもニックネームで呼んでもらっています。私のニックネームである「あやや」から「あややノート」と名付けました。

子どもたちへの想いや目指していること、私たちの活動などについて、代表である私自身の目を通して感じたこと・考えたことをみなさまとシェアできればと思っています。また、この「あややNote」では、少し個人的なことも発信していきたいと考えていますが、読んでいただけるとうれしいです。

第一回目となる今回は、なぜ私が「安心できる居場所」を大事にしたいと思っているのかについて、お話したいと思います。実は「安心できる居場所が大事」と思っている根っこには、幾つものエピソードがあります。今回はその中でも、初めてのボランティア活動で出会い、私の人生を変えてくれた、ある高校生の話をさせてください。

はじめての出会い

私が児童養護施設の子どもにはじめてかかわったのは、NPO法人ブリッジフォースマイルさんが実施されていた「カナエール」というプログラムでした。施設から進学する若者が、自分の「夢」についてスピーチをして、在学中に毎月3万円の奨学金を得るというしくみで、彼らのスピーチ準備に3ヶ月間伴走するボランティアとして、2013年、私ははじめてこの「カナエール」に参加しました。

そこで出会ったのが当時高3生だった女の子、Aさんです。Aさんは高校2年生でお母さんが亡くなり、兄弟とも離れて一人で都内の児童養護施設に入所。施設で生活をはじめて約1年。都立の進学校に通っていて、友人や先生たちとの関係性も良好。成績も優秀で、将来はキャビンアテンダントになりたいという夢を持っていました。

はじめてAさんと出会い、私は彼女の笑顔や強さにどんどん惹かれていきました。Aさんも私たちに心を開いてくれて、スピーチ準備をする3ヶ月の間、体育祭に呼んでもらったり、大学の下見に行ったり、一緒にたくさんいろんな話をしました。そんな中で、ある日彼女がポツリとつぶやいた一言が、私の心に残りました。

「私はお母さんが死んじゃっただけだから、だいじょうぶだって。」

高校2年生の女の子にとって、お母さんを看取ることがどれだけ辛く悲しいことか、想像するだけで私は胸が苦しくなります。Aさんもまだお母さんの死に向き合うことができず、当時の写真などを見ることができない状況でした。

でも、施設にいる他の子たちと比べてしまうと、少なくともお母さんに愛され、十分な教育も受けて、学校にも通えているAさんは「だいじょうぶ」な子どもになってしまう。そんな事実に衝撃を受けて、うまくAさんに言葉をかけることができなかったことを、今でも鮮明に覚えています。

安心できる居場所になりたい

施設では他の子に遠慮して職員さんに自分の悲しみや苦しさを訴えることもできないAさんだからこそ、安心して弱音を吐ける相手が必要なのかな…と思い、私はAさんに、日々のくらしのことや、悩みや心配事などを話してもらうようにしました。

進路選択に迷っていること、これからのお金の面で不安なこと、学校の文化祭で友達と楽しく準備していること、留学する友だちの話、施設で他の子に「学校行くなんてマジメ!」と言われたこと、その子の将来が心配なこと、職員さんが大変そうなこと。

Aさんの心の中にある、喜びも悲しみも楽しみも怒りも、不安もワクワクもどきどきも、なんでも聞くし、受け止める。「何を言っても味方でいてくれるし、この人は私を好きでいる」という安心感を持ってもらえるようになりたい。Aさんの「安心できる居場所」になりたい。それが私の願いでした。

Aさんのおかげで気づいたこと

3ヶ月のプログラムが終わっても、私とAさんはつながり続けました。「カナエール」が主催する定期的な交流会で会うことをお互いに楽しみにして、入試に臨む彼女を励まし、志望校への合格をお祝いし、学校生活や就労に悩みを話し、大学の卒業もお祝いしました。相続税の相談を受けたり、恋愛話や旅行の土産話に花が咲いたこともあります。

そして、初めての出会いから9年になり、Aさんは結婚して一児の母となりました。

母子手帳をもらった日や、初めての妊娠出産に不安を感じた日、新しい生活になれなくてつらい日など、しんどいときや苦しいときには、Aさんは今でも連絡をくれます。血のつながりはないけど、私にとってもなんだか妹や従妹のような、大事な大事な存在です。

3ヶ月の期間でAさんと仲良くなり、その後も彼女とつながり続けたことで「ああ、こんなふうに人と人は関係を作っていけるんだ」ということに改めて気がつきました。支援者と被支援者という関係でなく、人と人として対等に向きあうこと。「この人と一生つきあっていきたいなぁ」と単純に思うこと。そんなAさんとの関係性が、私の人生を変えたのだと思います。

「信頼できる”誰か”」=「安心できる居場所」

児童養護施設でくらす子どもたちは、どの子も心に大きな悲しみや痛みを抱えています。成長するにつれて、これから社会に出て一人立ちしないといけないという恐れや不安も生まれてきます。

どんなにしっかりしているように見える子でも、そんな話を聞いてくれたり、日々の自分のがんばりを認めてくれたり、何かを一緒に喜んでくれたり、励ましてくれる、信頼できる”誰か”の存在を求めているのだと思います。そしてそんな存在が複数いれば、それはその子の安心や強さにつながります。

私たちが考える「安心できる居場所」というのは、そのような「信頼できる”誰か”」のことです。子どもたちにとって一番大きな「安心できる居場所」は施設職員さんですが、私たちHUG for ALLの大人たちも、子どもにとっての「安心できる居場所」のひとつになっていくことができる。私はそんなふうに考えています。

でも、そのように信頼を築いていくことは、実はとても難しいことでもあると思います。「知らない大人」が「信頼できる人」に変わるには、長い時間が必要な子どももいます。だからこそ、私たちHUG for ALLは、幼少期から大人になるまで、ずっと子どもたちの人生に寄り添い、見守り続けることを大事にしています。

「安心できる居場所」は、なくならない。子どもたちがそう信じることができるように、私たちは活動を続けていきます。

私たちの活動についてはHUGノートで発信してまいりますので、よろしければぜひHUG for ALLのnoteをフォローいただけるとうれしいです。これからも応援よろしくお願いします。

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