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【写真紹介】 第一話『飛立つインコ』

環世界写真展では自由に感じていただきたいという想いがあり、あまり言葉にしなかった一つ一つの写真紹介を今回から紹介していきたいと思います。

実際来場してくれた方で想像を膨らませて見てもらった方もいると思います。
その邪魔にならないようにその写真との出会いや、その瞬間になぜ惹かれたかなどを紹介していければと思います。
初回は環世界写真展のきっかけとなる写真です。
宜しければご覧ください。




第一話『飛立つインコ』

「いつ写真展をなぜやろうと思ったのですか?」
これが会期中一番聞かれた質問です。

実は今となっては確かな理由はどうしても思い出せないのです。

連日30℃越えだった去年の7月。その月の終わりに衝動に近い感覚でギャラリーを予約している自分がいました。

ただこの自分の世界に気づき始めたのは数年前に遡ります。


20歳くらいに出会った写真。
憧れた写真家もごくわずか。カメラ自体にもそんなに興味が無く、カメラを使ってのコミュニケーションが好きで続けてきた写真の世界。

この世界で色々な経験をさせてもらい、写真の楽しさと共に息苦しさも感じるようにいつの日かなっていました。それは、写真はこうじゃなきゃいけない。いい写真。悪い写真。良い悪いなんて誰が決めてるんだろう?どこかの偉い権力を持つ人?その権力を持つ人を決める人がいて、、、
楽しいで始めた写真が少し苦しくなっていたのだと思います。

自分はなんで写真を撮っているんだろう?
ある夏の日。そんな事を考えながら実家の裏の公園を歩いていました。
小さい頃から同じ風景のその公園には川が流れています。ボート乗り場の横にある、小動物がいる一角。
その檻の中にいつものようにインコがいました。

そのインコは目を瞑っています。
その静かな美しさに惹かれ夢中で写真を撮っていると、突然インコが目を開けました。
その瞬間、強烈な日差しが檻に反射し、光の反射がレンズに入りみました。
その光は檻の網の歪みにそって一瞬に広がり、
レンズに反射した光で檻さえも滲んで消え、奇跡的にそのインコの羽のように写りました。

檻の中にいるのに、光とカメラの偶然によって檻の外に飛び出してきたかのようです。


そこを歩く偶然。
檻の中で眠るインコ。
雲間から差し込む太陽の光。
その角度。
歪んでいる檻の網。
レンズに入り込む反射光。
羽のように見える偶然。
反応する自分。

偶然や奇跡が集まって撮れてしまったこのインコは、写真の良い悪い。経験から来るあれやこれやを意味のないものに全て吹き飛ばし飛んでいきました。
まるで自分の心を表してくれているようです。

こんなにも美しい世界が写真の世界にはある。
それに気づいた時に、写真をやり始めた頃の、何にも囚われず、美しいと思ったものに反応していた自分の写真を思い出す事ができました。

自分の世界はここにある。それを集めよう。

写真を始めて20年。
また写真が始まりました。

この写真はそのきっかけの始まりの一枚です。

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