【第7回】治療の流れ~細胞培養編②~
こんにちは、タロニャンです。
前回は「細胞培養編①」と題して、細胞培養のプロセスかみ砕いてお伝えいたしましたが、本投稿ではもう少し詳細なプロセスをお伝えしてまいります。
細胞培養プロセス
まず、細胞培養のプロセスは受診先病院と提携している細胞培養加工施設によって異なり、プロトコルには差異が生じます。中には、病院自体が培養設備を持っている場合もあります。したがって、本投稿はあくまで私が経験及び見聞きした上で、最善と思われるプロセスをお伝えします。
細胞培養の一般的なプロセスは以下の通りです。
採取した脂肪組織の受け入れと検査
病院から送られてきた脂肪組織を受け入れ、感染や汚染がないかを確認します。投与回数に応じた細胞の分割・凍結保存
必要な細胞を脂肪組織から取り出し、使用する回数に応じて分割し、凍結保存します。投与分の細胞培養
再生医療における肝のプロセスであり、カウンセリングを通じて決定した投与数(細胞数)まで細胞を増殖させます。培養が完了した細胞の発送
培養が完了した細胞を病院に届けます。ただ配送するだけかと思うかもしれませんが、細胞の品質を左右する重要な工程です。
*投与回数に応じて2~4を繰り返す。
細胞培養に関する重要なポイント
培養は再生医療の効果を左右する最も重要なプロセスであり、同じ数の細胞を投与しても、細胞「分化分泌能力」や「生存率」によって治療効果が異なります。理想的な細胞は「分化分泌能力と生存率が高い」ことです。
分化分泌能力
細胞の分化分泌能力は「継代数」によって決まります。
継代とは、培養皿の中で増殖した細胞を培養皿が満杯になる直前に取り出し、別の新しい培養皿や培養フラスコに移し替える作業を指します。この作業によって細胞が新しい栄養素や広い空間を得ることができ、健康に成長し続けることが可能になります。簡単に言うと、これは細胞が「引っ越し」をして、成長を続けるための新しい家に移る作業です。
しかし、継代を繰り返すと、幹細胞がその自己複製能や多分化能(さまざまな細胞に分化する能力)を失う可能性があります。細胞が高い継代数に達すると、次第に「老化」や「変質」が進み、幹細胞としての特性が失われていくことがあります。したがって、低い継代数で保持された幹細胞が、治療に適したものとされています。
生存率
生存率とは、細胞培養の過程で、一定期間内に生存している細胞の割合を指します。培養中の細胞が、どれだけ生き延びているかを評価するための重要な指標です。生存率が高い細胞は、治療効果を最大限に引き出し、患者の安全性を確保し、治療の持続的な効果を実現します。理想的には90~95%以上の生存率を維持できる加工施設が良いとされています。
細胞輸送
細胞を培養後にそのまま投与できれば理想的ですが、培養後や輸送中に生存率はどうしても下がってしまいます。そのため、培養が完了した細胞を凍結して送る施設もありますが、凍結・解凍の際に細胞が変質するリスクがあります。理想は培養完了後にフレッシュな状態で冷蔵配送し、生存率も培養完了時から大差ない状態で投与までもっていける輸送体制を整えている病院が良いでしょう。
カウンセリングでの質問のポイント
これらのプロセスは、カウンセリングの際に病院を評価するための指標となります。細胞培養について質問し、培養施設や輸送体制について確認することが重要です。また、昨今はネット等様々な媒体でも調べる事が出来るので、ご自身でも調べてみる事をお勧め致します。
次回は、培養が完了した細胞を投与する際のプロセスについてお話しする予定です。
治療の流れ~細胞投与編へ続く