子どもの肥満の治し方(1)

子どもの肥満は、ただの体重の問題ではありません。それは、健康、自己肯定感、そして将来の選択肢に影響を与える、大切な課題です。あなたの子どもが将来、笑顔で健康な生活を送るために、何ができるのか一緒に考えてみませんか? このノートでは、子どもの肥満解消に親子で取り組む皆さんに、この問題に長年取り組んできた小児科医としての気付き、役に立ちそうな情報とちょっとばかりのエビデンス(科学的根拠)を紹介していきます。

健康問題としての小児肥満

大柄な子どもは、かつては「健康優良児」などともてはやされていた時代もありましたが、大き「すぎる」体格は将来あるいは現在の生活習慣病リスクに直結しています。平成26年の文部科学省通知以降、小中学校の学校健診では子どもたちの身長・体重から作成した「成長曲線」を活用することが求められ、その中でも少なくない子どもたちが「肥満」の問題で病院やクリニックを訪れています。

メタボリック・ドミノ

糖尿病(690万人)、心不全(120万人)、虚血性心疾患(80万人)、脳卒中(29万人)などの主要な疾病の多くの背景には“メタボリックシンドローム(メタボ)”が関わっています。メタボは、まるでドミノ倒しのようです(下図)。一つの異変(肥満)が始まると、次々と関連する問題が連鎖し、最終的には重大な病気に至ります。たとえば、小児期の内臓脂肪型肥満がその最初の「ドミノの1枚目」だと考えてください。病院を受診した中等症以上の小児肥満の76%ですでにインスリン抵抗性が見られます。これは、血糖値をコントロールする力が弱くなり、将来糖尿病のリスクが高まる可能性を示しています。同様に68%に脂質異常症が、50%に脂肪肝が見つかっています(自験例)。肥満は小児期から健康を損ない、また、成人肥満の原因になって30歳代頃には生命をも脅かします。

どうしたら子どもの肥満を解消できるのか?


増えすぎた体重を減らすことは、理屈では難しいことではありません。摂取するエネルギー(カロリー)を減らし(食事療法)、使うエネルギーを増やし(運動療法)、早寝早起きなど健康的な生活を送り、それを続けることができれば肥満は解消するはずなのですが、実際にはその単純なことが、なかなか難しいことがあります。
次回は行動療法について書き留めます。

著者について:
山田克彦
私は小児科医として30年以上、子どもたちの健康に関わってきました。現在は、介護老人保健施設リハビリサポートひうみの医師として、また佐世保中央病院小児科の非常勤医師として勤務しています。「子どもの肥満」に悩む多くのご家族のお役に立ちたいと思い、このノートを始めました。

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