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トランプ当選で米国株式市場はどうなる?~アメリカ・ファーストはアメリカを強くするのか~

先週行われた米大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利しました。

トランプ氏のイラスト


トランプ氏は"MAGA"(Make America Great Again)をスローガンに掲げ、2016年と同様のアメリカファーストの政策を行うと公言しています。

これを受け米株式市場は急騰していますが、長期的に見るとこのまま上昇の流れは続いていくのでしょうか?

今回はトランプ氏が掲げる政策から分析します!

再び「トランプ減税」で市場は好感!?

トランプ氏の経済政策の目玉は、前回の政権時と同様に大規模な減税となる可能性が高いでしょう。

前回の政権でトランプ氏は法人税と所得税の税率を下げる通称「トランプ減税」を行いました。

この政策の期限は2025年末であり、バイデン氏が再選した場合は「そのまま失効する」と明言していましたが、トランプ氏が再選したことにより失効期限が10年間延長されることになりました。

さらに、トランプ氏はさらなる減税策を打ち出しており、
・法人税の最大税率を21%→15%
・所得税もさらに減税


ここがアメリカの貧困層の支持を集めた理由の一つにもなりました。

この減税により、
S&P500(アメリカを代表する500社)の企業は平均4%利益が増加
・購買意欲の増加*からGDPが+0.5%~1.0%引き上げられる

と言われており、株式市場がトランプ再選をポジティブに捉える要因の1つです。

トランプ当選以降、S&P500は4日で$270以上も上昇

*ちなみに需要が増えるため、モノの値段が上がるインフレが起こります。

貿易摩擦が白熱!? 関税爆上げへ!

トランプ氏はアメリカの国内産業を守るために、安い海外製品を排除しようと大幅に関税を引き上げることを公約にしています。

具体的には
・海外製品に一律10~20%
・中国製品には約60%
・メキシコからの自動車には100%

となっています。

米中貿易摩擦のイメージ画像

中国への経済制裁を加速させるのに加え、メキシコの自動車にはさらに厳しい関税を課すとしています。

これは、2018年の米中貿易摩擦から、中国の自動車会社が続々メキシコに移転し、メキシコからアメリカに輸出をするという事態が起こっているためです。

これにより、特に製造業の業績良化が見込まれますが、安い海外製品が減りインフレが起こるため、購買意欲が低下し、GDPは-0.4%ほど押し下げられる見通しです。

(他国が制裁措置を取った場合、最大-1.0%まで拡大見込み)

また前回政権時も米中貿易摩擦が激化したことで、株価は下落に転じました。今回も同様のシナリオが懸念されます。

ちなみに、トランプ氏は減税分の税収減少をこの関税引き上げで補うとしていますが

減税:10年間で-4.58兆ドル(≒700兆円)
関税引き上げ:10年間で2.5兆ドル(≒382兆円)

半分ほどしか補えない見通しで、米政府のさらなる財政赤字の拡大への懸念もあります。

年100万人強制送還!? 史上最大の移民政策とは?

トランプ氏は不法移民により米国の治安が悪化していると非難しており、アメリカ国内に1300万人いると言われる、不法移民を年100万人単位、10年余りで全員強制送還すると発言しています。

必要であらば軍隊も動員するなど強気の姿勢を見せているトランプ氏ですが、10年余りで9680億ドル(≒148兆円)がかかると見積もられるなど、現実的ではないとの声もあります。

また、トランプ氏はその他にも以下のような政策を実行するとしています。

メキシコ国境の壁の建設を継続・拡大
移民、難民申請の制限
合法移民、高度人材の受け入れ抑制

メキシコ国境の壁のイメージ画像

この移民政策によって、特に接客業や建設業など、移民労働者に依存する産業を中心に人手不足を引き起こされ、GDPは-0.4%~0.8%押し下げられると言われています。

また、人手不足により賃金が上昇し、インフレも起こる予想です。

さらに、GoogleやAppleのような大手ハイテクノロジー企業は、世界中から優秀な人材*を集めることで高成長を達成してきたことにも注意が必要です。

*ちなみに
・サルゲイ・ブリン(Google共同創業者):ロシア出身
・サティア・ナデラ(Microsoft CEO):インド出身
・イーロン・マスク(Tesla創業者):南アフリカ共和国出身

その他重要政策

AI規制撤廃:
バイデン政権はAIの安全性やセキュリティの新たな基準を設定し、テスト結果の報告を義務付けていました。

トランプ氏はこれがAI開発の足かせになるとし、撤廃予定です。(AI関連銘柄にはプラス

ただし、副大統領のバンス氏がGoogleやMiscrosoft(ともに世界最高峰のAIを開発)が力を持ちすぎているとして、会社の分割を提言しているためトランプ就任が一概にプラスとは言えません


環境規制撤廃・化石燃料拡大:

世界の石油産出量ランキング。既にアメリカは1位(筆者作成)

「気候変動対策は緑の詐欺」
「エネルギーコストの削減や雇用創出につながる」
「石油を掘って掘って、掘りまくれ!」

パリ協定脱退、自動車排ガス規制撤廃、火力発電所排ガス規制撤廃
 石炭・石油・天然ガス企業への減税

エネルギー関連上昇へ(原子力も推進、再生可能エネルギーは衰退へ)


EV(電気自動車)規制:
上記の通り、トランプ氏は環境政策を好まず、また化石燃料に力を入れたいと考えているため。

→電気自動車への投資・補助金・税額控除を縮小・廃止へ

イーロン・マスク氏のイラスト

Tesla(世界的EVメーカー)CEOイーロン・マスク氏はこれにも拘らず、トランプ支持を表明し、180億円以上を献金しました。これについては以下のnoteをお読みください👇
(coming soon…)

2016年との違いは?

前回のトランプ政権4年間でS&P500は70%弱も上昇したため、今回も同じような展開になるのではないかと期待されています。

しかし、2016年の大統領選時と現在では、状況が大きく異なります。

2016年当時は、米経済は低迷気味であり、インフレを引き起こすトランプ氏の政策はサプライズとして市場にポジティブに受け止められました。

それに対し、今回は米国経済は堅調であり、インフレは過熱しています。トランプ氏の政策である、減税・関税引き上げ・移民政策すべてがインフレを引き起こす要因になりうることには注意が必要です。

さらに、トランプ氏の勝利は市場である程度予想されたうえで株価が動いていた上、アメリカの主要な銘柄は割高な水準にあり、2016年当時のような劇的な株高は期待しにくい状況と言えるでしょう。

まとめ

トランプ氏の当選は米国株式市場にとって、短期的には大幅減税→景気良化・企業の利益増加への期待からプラスに働いています。

ですが、長期的に見るとインフレを引き起こし、GDPを押し下げる可能性があるなど、マイナスの面も多くあることが分かります。

2016年とはアメリカの状況も大きく異なり、前回のトランプ政権時と同様に米国株が大きく上昇するのは難しいかもしれませんね。


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(coming soon…)


Disclaimer: 本記事は、特定の投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。また、記事内のイラスト・イメージ画像は全て商用可能なAIで生成されたものです。

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