
フィールドワークと追いコン(2/27)
京都には訪れるべき場所がたくさんありますが、つい後回しになってしまうのが市内に点在する博物館・美術館です。筆者も観光客として京都を訪れていた時には、なかなか京都まで旅行に来て博物館や美術館に行こうとは思いませんでした。京都は街自体が博物館のようなものです。
しかし、京都には国立博物館がありますし、京都国立博物館は市内所在の多くの大学の関係者が「キャンパスメンバーズ」として無料または割引で観覧できます。
外も寒いし、室内で「本物」の良さに触れられる京博に行かない手はない。そのような事情で2月のフィールドワークは京都国立博物館+街ぶらに決定しました。
加えて、王朝文学研究会では今春、大学院の修了生が一人、学部の卒業生が三人出ます。ちょうど良いので、夜は追いコンも企画されました。ここまで、学生諸君が話し合って色々と決めてくれました。
京博は現在、特別展の実施がなく、平常展のみの時期です。この時期、キャンパスメンバーズ加盟校の関係者は無料で入館出来ます。参加者諸氏はほぼ全員、今回が初めての京博だそうです。

展示は絵画を中心にとても見応えがありました。特集展示「雛まつりと人形」では、現在ではなかなか見られない御殿付きの雛飾りが二セット展示されており、思わず見入ってしまいました。京博所蔵の「御殿飾り雛」の御殿にはなんと平安貴族住宅さながらの渡殿までついており、そこを三人官女が渡っているように飾られている芸の細かさ。とても気が利いています。欲を言えば、研究会の活動に関係のある和歌関係の古典籍などを実見出来たら良かったのですが、墨跡の展示は紺紙経の特集でした。しかしこれはこれで、平安鎌倉の古いものが多く眼福でした。昨夏に五島美術館で開催された古筆の展示で見かけた典籍も何点かあった気がしました。
せっかくこのエリアに来たので、至近に所在する三十三間堂と法住寺にも参詣しました。法住寺は後白河法皇が院御所として用いたところ、三十三間堂は平清盛が寄進したその宝蔵です。三十三間堂にはかつて平安文学作品『土左日記』の作者自筆本も所蔵されていたとか(現三十三間堂は十三世紀の再建)。古典文学とも深い関係があります。法住寺とその裏手にある後白河天皇陵を見学しているうちに三十三間堂は受付時間を過ぎていました。こちらはまたの機会に取っておきます。


この後は夜の飲み会まで街ぶらです。七条から河原町三条の会場までのんびり歩きました。途中、七条周辺では豊国神社、方広寺、六条界隈では河原院趾に立ち寄りました。河原院は平安前期の公卿源融の大邸宅です。一方で、融没後は幽霊屋敷化した伝承もあり、『源氏物語』夕顔巻で惨劇の現場になった「なにがしの院」のモデルとも言われます。裏手がちょうど鴨川に面していて、往時の河原院の風光を偲ばせます。


京都の学生は何故か歩くのが好きな人が多い印象です。結構な距離をずんずん歩いて飲み会の会場まで移動しました。途中どうしても時間が余るので、梶井基次郎『檸檬』で有名な丸善本店にも行きました。ふらっと立ち寄っただけでしたが、何人かついでに書籍を購入していたのは、さすが文学部といったところでしょうか。
夜は追いコン。今回門出を祝われたのは四年生と大学院生です。大学院生は佛大 王朝研の発起人でもあります。在学生からの記念品は和紙を使ったブックカバーです。「文学部ならではの贈り物を」というテーマで選んでもらいました。また、「これからもたくさん勉強してください」というメッセージも込められていそうです。院生の彼は春から高等学校の教員になります。教育の現場はタフな毎日ですが、彼ならやっていけると思います。
卒業生諸君、おめでとうございます。
参加者のみなさん、お疲れさまでした。
(神原)