パソコンから離れて、余白を遊ぶ。12年目のリモートワーク。(前編)
先日、共同代表のポチエ真悟さんが、雑誌PEN取材からご縁をいただき、
Waseda Neoさん主宰の「WORK AT HOME 〜家で働く、心地よく」に登壇しました。
この記事では、講座の内容を含めて、真悟さんのリモートワークについての考えをシェアしていきたいと思います
真悟さんのリモートワーク歴はなんと12年目。
ときには国を跨ぎながら、県を跨ぎながら、人生での引越し回数は21回以上。スタートアップ起業に携わったのは9回目。
思考家であり、空間デザイナーであり、考える時間を大事にしています。
家で働きはじめた当初は、会社員時代よりも仕事時間が増えたこともありましたが、現在では半分以上が「ながら」または「遊び」の時間へと変化しました。
「閃き 新しいアイディア 創造性のある作業は、集中している時間にはできない」
「リモートワークにこだわったというより、自分たちの納得いく生活を考えてたどり着いたのがこのスタイルだった。」
と語る真悟さん。
イギリスで13年間の金融マン生活から、スタートアップに携わり、日本で起業。軽井沢での生活を経て、現在では飯綱高原に移住し、リモートワーク生活を送っています。環境を変え続けながら、たどり着いたリモートワークのスタイルについて、迫りたいと思います!
7年の寮生活で感じた 他人に自分をコントロールされたくないという想い
日本で生まれ、小学校を卒業した後、両親のすすめでイギリスに留学することになったのはわずか12歳のとき。生まれ育った日本を離れ、親元を離れ、ここから7年間の寮生活がはじまります。イメージとしてはハリーポッターの寮生活のようなものだったそう。想像ができないほどの大変さがあったのではないかと思います。
「寮生活で他人に自分の生活をコントロールされたくないと強く感じました。もともと、父親が自営業をしていて、家に事務所があって朝から晩まで自宅で仕事をする父を見てきていたので、家で働くのは夢だったんです。でもこの寮生活で勉強、作業時間の管理を12歳から経験したことが、現在のリモートワークに活かされている部分があると思います。」
13年間市場を追いかけ続けたロンドン金融業界時代
名門インペリアル大学を卒業したあとは、ロンドンの金融業界へ。そこから13年間ディーラーとしての生活が始まります。
「銀行に勤めていたときは、毎朝7時に出社していました。イギリスの朝7時はちょうど、東京マーケットの終値が見える時間なんです。東京の終値を見届けて、ロンドン時間で動き続ける市場を追い、ロンドンでの勤務が終わるころNYの市場が開始されるので、それを毎日確認して1日を終えていました。
お昼はサンドイッチをデスクでかきこみながら食べて、夜は接待や同僚との飲み会も毎日あるような生活を13年間送っていたんです。」
そんな中、リモートワークスタイルをせざる得ない事態がやってきます。リーマンショックで急に所属する部署が封鎖してしまったのです。
「当時の状況は、今のコロナの状況と似ている部分がありますね。心の準備を何もしていない状態で、いきなり独立することになりました。」
オフィス勤務から、急に自宅勤務を余儀なくされ、バタバタと制度が変わり、急な環境の変化で多くの人が困惑。みなさんも体感したコロナの状況から、リモートワークをはじめる状態の想像ができるのではないでしょうか。
当時はどんなリモートワークだったのでしょうか。
イギリスと日本のリモートワークは日本と何が違うのでしょうか。
独立と同時に始めたリモートワーク、しかし、労働時間はさらに増え・・・
「その当時、ロンドンの小さなマンションに住んでいたので、そのマンションの小部屋を仕事部屋にして、スカイプで仕事をしていました。いきなりはじまったので、かっこいいスタートではまったくありませんでしたね。
実は、金融時代より労働時間は増えたんです。深夜まで働くのは当たり前だったし、その当時は時間の管理よりも、とにかくやらなきゃいけない!というプレッシャーのほうが大きかった。」
銀行でのディーラー時代、朝7時からランチをゆっくり食べる暇もなく働いていたのに、その時間より多く働いていたとは。現在では、長時間パソコンに向かっているイメージがないので、この話も大変意外でした。
リモートワークのハードルが低い欧米。型から始める日本。
欧米と、日本のリモートワークの両方を経験している中、違いはあるのでしょうか。
「家で快適に働くためのインフラや仕組みが海外の方が整っていると思います。オンラインバンキングが日本で有名になったのは割と最近ですが、海外は20年くらい前からありました。日本のデジタル化は遅れているなと思う部分はありますね。」
「あとは自宅で仕事をすることはイギリスでは自由の象徴で、工場で働く身分とは違うステータスがあり、理想の形なんです。」
自由の象徴として、リモートワークが一種のステータスとなる欧米。また住居が職場から離れている人、お子さんの関係で働く時間に制限がある人、体が不自由で勤務先まで通えない人など、職場の多様性に対しての対応が日本よりも強化されているのも特徴のようです。
「欧米の多くの都市がスタートアップ街になった背景のひとつには、個人が自宅から仕事をするという文化が昔からあったからなんです。いきなりオフィスを借りるのは難しいから、自宅をオフィスにするというマインドが元々あるのだと思います。反面、日本のスタートアップはいきなりオフィスを借りることも多いんですよね。海外はガレージや使っていない小部屋で起業するのは当たり前のことなんです。」
欧米では昔からリモートワークの文化があったんですね。まずは形からという風にオフィスから始める日本と、自宅からはじまる欧米の違いも印象的です。日本の都会ではガレージがついている家がそもそもなかったり、部屋が狭かったりという住居のスタイルも関係しているのかと思います。
クリエイティブさには余白が大事。パソコンを触らないことで高まる創造性
「いまは積極的にパソコンに向かう時間を減らしています。パソコンを開かない日があると幸せを感じますね。ひらめきや、アイディア、創造性のある作業は、集中している時間にはできないんです。
街をブラブラしていたり、カフェでゆっくりしたり、100%仕事じゃない時間を多くもつほうが、のちのちリターンが多いと長年の経験で分かりました。インパクトの高いアウトカム、余白の時間を日々どれだけ作るか、そのことに努力しています。」
リモートワークがはじまった当初は、パソコンに長時間向かっていたスタイル。そこから大きく変化。アイディアが枯渇しているときは、散歩にでかけたり、気分転換をすることでふっとひらめいたり、悩んでいたことの問題の解決の糸口が見つかったりする経験が、みなさんにもあるのではないでしょうか。
真悟さんの1日の作業時間は9:00-16:00でそのうち27%が打ち合わせ、20%がリサーチ、メール返信など、33%はながら作業で20%は遊びなんです。20%の遊びの部分には山登り、薪割りも含まれています。遊びの部分は「ながら」ができない活動になっているのですね。
「チームでの私の役割は、外から情報を収集してアイディアを形にすることです。新規案件の発想が生まれるのは大体、”ながら時間”に手を動かしているときです。」
20%の遊び時間は、真悟さんにとって、新しいビジネスのアイディアを集める大切な時間なのですね。
余白の時間を作る際のポイントを聞いてみました。
「遊びに使う道具を常にスタンバイしておくことです。機材を出したり、準備したりというのは案外時間をとってしまいます。隙間時間で薪割りもさっとできるように、作業がすぐできるような状態にしてあるし、ロングボードも玄関に置いています。
そうすることで、空いた時間の10−15分で作業をしたり、軽く汗を流して、パッとWebミーティングに戻ることができます。雪遊びの道具も玄関に置いてあって、隙間時間にこどもたちと遊んでいるんです。」
遊びと仕事の距離感がとても近いと感じました。地域での暮らしでは、都会のようにどこか遠くへ行かなくても、1日の中で細かく遊びの時間をいれることができるのはメリットですね。
納得できる環境づくりでたどり着いたのがリモートワークスタイル。
イギリス→東京→軽井沢→飯綱高原とさまざまな場所でリモートワークをしながらたどり着いたこのスタイル。そもそもリモートワークがしたいと拘っていたわけではなかったようです。
「なるべくしてこうなったというのがありますね、私たち夫婦の場合、リモートワークがしたいというよりも、自分たちにとって納得のいく生活が最優先でした。自然が近い、子どもたちにとって安全、いい学校が周りにあるなど求める環境を探し続けた結果、このスタイルになったんです。今は飯綱高原でのログハウスで自然に根差した生活を送っています。」
「リモートワークは向いている人と向いていない人が確実にいます。私も、もしかしたら向いていないかもしれません笑 集中力が続かなかったり、すぐ別のことを始めてしまったり。慣れるのに時間がかかってしまいましたが、今はこのスタイルしか考えられないですね。」
「オフィスに戻ることはもうないと思うし、生活の一部で、働く手段です。丁寧にやれば仕事の質があがります。こういったやり方をせよというより自分はどういう人間なのか、自分で掘り下げることが大事かなと思っています。」
国を超えて、環境を変えながら、納得のいく生活を優先することで、たどり着いたリモートワークのスタイル。パソコンに向かう時間を少なくし、余白の時間でのベネフィットを自ら体感、その時間の捻出を最優先に。
何かを新しく世の中に作り出す人たちは、余白時間を優先しているのかもしれません。仕事と遊びの区別がないようにみえて、その時間で新しいアイディアを産み出し、新たなビジネスを展開しているのです。
パソコンはできるだけ触らない経営者スタイルのリモートワークを垣間見ることができました。
後編ではImpact HUB Tokyoのチームのリモートワークについて書いていきます。お楽しみに!
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