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リーガルテック企業で法務パーソンは活躍できるのか?

Hubbleの取締役CLO(Chief Legal Officer)の酒井智也と申します。
初noteです。

Hubbleは、法務ドキュメント特化型のバージョン管理システム「Hubble(ハブル)」を提供しています。

これまで、1000人近くの企業の法務・弁護士の方々にお会いして、業務課題や理想の法務機能等についてヒアリング・ディスカッションをさせていただきました。

その中で感じたこと、考えたことを中心に、今年は少しずつnoteにまとめていきたいと思います。

1 リーガルテック企業で法務パーソンは活躍できるのか?

第一回目は、「リーガルテック企業で法務パーソンは活躍できるのか?」ということをテーマとして掲げたいと思います。

多くの法務パーソンとお話しをさせていただく中で、

・これから法務パーソンとして、どのように自分の価値を発揮していくべきか?
・次のキャリアステップとしてどのようなキャリアがあるのか?

ということに悩まれている方と接触させていただくことがとても多かったです。
そのような方に、自分の活躍できる領域が、過去に存在しなかった領域にまで広がっている可能性があり、自分の可能性を広げられるチャンスが自分の想像の外にあるかもしれないということを少しでも感じてもらいたいという思いがあり、第一回の投稿では、このテーマを掲げたいと思いました。

Hubbleにも2020年1月から企業の法務で活躍されていたメンバーがチームに参画してくれました!その思いもぜひ読んでいただければと思います!

2 リーガルテック企業で必要とされる能力とは何なのか?

そもそもリーガルテック企業(特にセールスやカスタマーサクセス等のビジネスサイド)で必要とされる能力とは何でしょうか。
この点について、私が考えるところを整理したいと思います(多くのリーガルテックサービスがスタートアップから生まれていることから、スタートアップを前提とした見解が多めです)。

(1)課題を抽出する力・理解する力

そもそも、スタートアップの初期セールスにおけるセールスは、単にプロダクトを売り込むものではなく、「顧客と話してビジネスモデルを検証する」こと、より具体的にいえば、ユーザーとなる方と話しながら、課題を抽出し、課題に対しての解決策を共に考えていくプロセスだといわれています。

Y CombinatorのfounderのPaul Grahamも「私が営業と言っているのは単に電話をかけて売り込むという意味ではない。外へ出て顧客と話し彼らが何を求めているかを知ることだ」と述べています。

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さらに、リーガルテック企業が提供するサービスにおいては、SaaSモデル(月額課金制)のビジネスが主流となっています。ユーザーに売って終わりではなく、売ってからいかに使っていただくかが重要になります。

そのため、セールスの初期段階から提案先の企業の法務業務の課題を抽出し、抱える課題を理解し、実際の利用イメージ、利用するメリットを具体的に想像してもらいながら提案することが重要になります。

この点、法務業務は中々経験がないとそもそもの課題を理解・イメージしづらいところが多いと思います。例えば、契約業務に関していうと、依頼部門から契約審査の依頼があり、法務で検討を行い、稟議を経て、締結がなされ、契約書の管理を行う等のフローがあります。そしてその全体のフロー・各フローにおいて多くの課題が潜んでいます。

私自身も法律事務所での弁護士としての経験しかなく、企業の法務(部)が抱える課題を明確にイメージできるまでに、本当に時間がかかりました。

これらの現場の業務フローの中に潜む課題について、実体験をもとに、ヒアリング先の企業の業務をリアルに想像しながらヒアリングをして、抽出することができることは、法務パーソンならではの、他の業界にいた人にはない大きなアドバンテージだと思います。

さらにいえば、大企業に対しての提案の場合、システム導入に関わる人数が多くなるので、担当者の方に導入メリットを感じていただくことはもちろんのこと、その先にいる意思決定者の方を含めた関係者全員に、メリットを伝える必要があります。
そのため、より企業の課題を深掘りし、組織・経営上の導入メリットを提案する必要があるので、経営課題に結び付くような課題に接する経験を持っている法務パーソンの方であれば、さらに活躍可能性が高まると思います。

(2)当事者ならではの熱量ある訴求力

もう一点としては、法務パーソンとしての経験からもたらされる熱量を生かせる可能性があると思います。

現在のリーガルテック業界はまだまだ萌芽期であり、かつスタートアップの初期フェーズのプロダクトの価値を広めていくためには、セールスのウェイトが大きいと感じています。市場も成熟しておらず、未完のプロダクトの価値を認識してもらうには、現状のプロダクトはもちろんのこと、その先にある価値を強く伝える力が必要となるからです。

Hubbleの場合も、リーガルドキュメントをバージョン管理し、自身の知識経験を他の人のために残していくという価値を伝え、これがどれだけビジネス上重要かを訴求して、潜在的なニーズにしっかりアプローチしていく必要があります。

このような未成熟な市場における未完のプロダクトの魅力・価値を真に伝えていくためには、解決しようとする課題に対する強い思い(使命感に近いかもしれません)が必要となります。そして、解決しようとする課題を自分自身で体感した人であればあるほど、熱量を込めて行っていくことができると思います。

特にセールスの初期段階や新しい価値を訴求しようとする場面においては、ばっさり断られることも多かったです。
その中でも、自分たちが実際に体感した課題に対する解決策を世の中に広めていくプロセスであるとして、厳しい風当たりにも負けずに、継続してヒアリング行い、価値を訴求していくことができるというのは、自ら課題を体感したことがある人だからこそできることだと思います。

(3)個別具体⇔一般抽象という思考

当たり前のことですが、サービスを提供する以上、すべてはユーザーの方に使いやすいものでなければいけません。その意味でユーザーの声が何よりも出発点になります。Hubbleもユーザーの声をプロダクトに反映しながらよいプロダクトにしてきました。

ただ、ここで難しいのが、一つのプロダクトをあらゆるユーザーに使ってもらい、全ユーザーの課題を解決していかなくてはいけないということです。

つまり、個別のユーザーからの具体的な声をプロダクトに反映していくことは重要ではありながら、ユーザーの声をそのまま受け入れるのではなく、一度抽象化して、将来のユーザーを含めた全ユーザーが抱え得る一般的課題を解決するような機能・プロダクトにしていく必要があるということです。

この機能が、個別のユーザーの課題を解決しているのはもちろん、他のユーザーは喜んでいただけるのかについて、何度も思考を巡らせます。
イメージは、個別具体⇔一般抽象の思考を行ったり来たりするようなイメージです。

この点は、法務パーソンが行う思考と似ているのかなと思います。

例えば、ビジネス側からの具体的な相談があり、特定のビジネス上の法務リスクを検討する際、当該ビジネスの個別具体的内容を、法令という一般的ルールに照らして当該リスクを判断し、当該案件における具体的なアドバイスをアウトプットしていくと思います。

これらの思考プロセスは、まさに上記の個別具体⇔一般抽象というプロセスと非常に似ている
と思います。

その意味で、解くべき課題は変わると思いますが、それまでの業務と似た思考方法を駆使していくことができるという意味で、法務パーソンがこれまでの経験を生かしやすい可能性が高いと思います。

3 最後に

私としては、こんな感じで、法務パーソンの方がリーガルテック企業のセールスやカスタマーサクセス等のビジネスサイドで活躍する必要な力が備わっている可能性が高いと思っています。

もちろん、リーガルテックのサービスもまだまだ少ないですし、法務パーソンからリーガルテック企業に転職された方も圧倒的な少数派です。

そのようなまだ成功事例の少ない未開拓な領域に踏み込んでいくのは大きな勇気が必要であると思います。

ただ、実際に参画するかは別としても、そのような領域でのキャリアもあり得るということを考えてみるのは、自分のキャリア・能力の可能性を広げる良い機会になるかもしれません。
そして、まだまだプレーヤーが少ないからこそ、その分野での第一人者となれる可能性もあると思っています。

2019年はリーガルテックが盛り上がりを見せたといわれています。
しかし、向こう何十年、何百年と続いていく日本の法務業界からすれば、ほんとに小さな芽が出たばかりです。

この未成熟な領域において、ともにチャレンジする・チャレンジしたいという多くの同志と、引き続き社会・業界に対して、新しい価値提供を行っていきたいと思っています。

第一回から結構長文となってしましましたが、読んでいただきありがとうございました。
                                以上

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