「春節は家族で映画」は今年もナシ!? 帰省自粛で中国映画産業の前途多難
2月12日の春節(旧暦の正月)の日が近づいてきた。中国では春節は1年で最も重要な祝祭日で、この日の前後1週間ほどが休みとなり、故郷へ戻る人々が大移動する。しかし、今年の春節はやはり通常通りにはいかないようだ。
昨年、新型コロナウイルスを抑え込んだかのように見えた中国。しかし冬を迎えてからじわじわと感染者が増加し続け、一部の都市ではロックダウンなどの厳しい規制が敷かれるようになった。そんな状況の中、1月20日に政府が「春節の里帰り自粛」を呼びかけ、春節の映画産業に暗雲が立ち込めている。
これまでの春節映画週間の興行収入をみると、2016年は30億元(約480億円)、2017年は33億元(約528億円)、2018年は56億元(約897億円)、2019年は68億6800万元(約1100億円)と順調に成長してきたことがわかる。観客動員数は平均1億1000万人に及び、毎年中国人の12人に1人が春節に映画を観ている計算になる。
特に地方都市では、里帰りした若者が家族と一緒に映画を鑑賞するのが春節の恒例行事となっており、チケットが入手できないほどの賑わいをみせていた。しかし新型コロナウイルスの影響で、2020年には映画館が休館に追い込まれ、興行収入もゼロになってしまった。
今年はその巻き返しをはかろうと、中国国内の映画館は、冒険ファンタジー「刺殺小説家」、中国版「陰陽師」の「侍神令」、アクションコメディ「人潮洶涌」、アニメ「新神榜:哪吒重生」(すべて原題)、「僕はチャイナタウンの名探偵3」などの話題作を用意していたが、移動制限などによって地方都市の映画館が大打撃を受けるのは必至とみられている。
地方の苦戦が予想される反面、「大都市に居残る若者らは現地で映画を観に行くのではないか」、という楽観的な意見もあるが、「故郷に帰って家族と一緒に」映画を観るのが習慣であることから、その見通しは甘いといえる。また、北京の映画館などは密集を避けて、入場率を75~50%に引き下げているため、観客動員数、興行収入ともに減少すると見込まれている。
昨年アメリカの年間興行収入を超えて、初めて世界一の映画市場となった中国。しかし今後もしばらくの間、コロナウイルスに振り回される状態が続きそうだ。