日本維新の会は2021年の衆院選で躍進したのか?
はじめに
2021年に行われた衆院選にて、日本維新の会は41議席を獲得した。また大阪府内の公明党に譲っている4つの選挙区を除く15選挙区で圧勝し、日本維新の会は一気に注目される存在へとなった。この選挙で日本維新の会が獲得した票は小選挙区で480万票、比例区で805万票だ。しかし日本維新の会が獲得した41という議席数は2014年の衆院選にて前身の維新の党が獲得した議席数と同じである。ちなみにこの時の票の内訳は小選挙区432万、比例区838万だ。果たして維新の会は「躍進」したのか、それとも「回復」したのか。本稿ではそれを明らかにしていきたい。
1. 小選挙区の当選数
まずは小選挙区での当選数を見てみよう。先述したように2021年は大阪府内で立候補した全ての候補者は当選しており、15議席を獲得している。しかし大阪府外に目を向ければ兵庫6区の市村浩一郎を除けばあと一歩届かず、小選挙区で獲得できた議席は16議席にとどまっている。
一方2014年は大阪府内でも1区の井上英孝、14区の谷畑孝、17区の馬場信幸、18区の遠藤敬、19区の丸山穂高の5名のみが小選挙区で当選を果たした。大阪府外では福島4区の小熊慎二、東京15区の柿沢未途、神奈川8区の江田憲司、長野3区の井出庸生、愛知12区の重徳和彦、兵庫1区の井坂信彦の6名が小選挙区当選を果たしている。
このことから、大阪府内に限れば、2014年から獲得議席を3倍にしているので、躍進という表現は正しいといえるだろう。しかし大阪府外ではむしろ獲得議席を減らしており、小選挙区当選数に限っていえば回復さえしていない。とは言え当時は江田憲司代表が主導して一部選挙区で民主党と選挙協力を行っており、民主党の候補を破って当選を果たしたのは井出庸生と丸山穂高の2名だけである。一方2021年は民主党の事実上の後継者の立憲民主党と完全に対立しており、一切選挙協力を行っていない。よってもし2014年に維新の党が民主党との選挙協力を行っていなければ、大阪府外にて6議席獲得できたかはかなり怪しいといえる。
2. 比例区での獲得票数
それでは民意を鏡のように映すといわれている比例区の場合はどうだろうか?比例区での獲得票数は2014年衆院選にて
北海道ブロック
247,342(1議席)
東北ブロック
499,437(2議席)
北関東ブロック
816,014(3議席)
南関東ブロック
1,053,221(4議席)
東京ブロック
816,047(3議席)
北陸信越ブロック
432,249(1議席)
東海ブロック
964,240(3議席)
近畿ブロック
2,202,932(8議席)
中国ブロック
394,306(1議席)
四国ブロック
200,882(1議席)
九州ブロック
756,029(3議席)
である。一方2021年衆院選では
2021年衆院選
北海道ブロック
215,344(0議席)
東北ブロック
258,690(1議席)
北関東ブロック
617,531(2議席)
南関東ブロック
863,897(3議席)
東京ブロック
858,577(2議席)
北陸信越ブロック
361,476(1議席)
東海ブロック
694,630(2議席)
近畿ブロック
3,180,219(10議席)
中国ブロック
286,302(1議席)
四国ブロック
173,826(1議席)
九州ブロック
540,338(2議席)
となっている。
日本維新の会は2014年から2021年にかけて近畿ブロックにて100万票近く上積みしたことが窺える。しかし他の地域は東京ブロックを除けばどこも票を減らしている。近畿ブロックでの大勝で他地域の負けをカバーしているといえるだろう。比例票に関してはトータルで見れば回復したとは言えても、躍進したとは言えない。
では何故日本維新の会は近畿・東京の両ブロック以外で2014年の水準よりも低い票を取ることになったのだろうか。その理由としては、選挙前の日本維新の会が単なる地域政党と見られていたことが考えられる。選挙前の時点で日本維新の会の議員は11人と少なく、うちの8名が大阪府選出であった。そのことから報道で取り上げられることも少なく、その影響で2014年の水準よりも低い票しか取れなかったのではないか。
おわりに
2021年時点で日本維新の会はまだ本調子であるとは言えなかったものの、2023年時点では十分調子を取り戻していると感じる。次の衆院選にて全国で2014年時の水準を取り戻しつつ近畿では現状を維持し、比例区で940万近くの票を獲得する可能性は高いだろう。
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