新人理系図書館職員奮闘記②:「優秀なことが大事なわけではない」ってどういうこと!? 上司の一言でチームの視点にチェンジ!
北海道大学附属図書館 奥田
--------------------------------------------------------------------------------------■この記事のポイント■
①個人で何ができるか、ではなく組織として何ができるかと視点を変えることが大事。
②筆者が考える、チームで働く上で大事な点。
一、誠実たれ。
二、意思をもち、責任をもて。
三、貪欲たれ。
四、自分の役回りを自覚せよ。
--------------------------------------------------------------------------------------
1年目のバタバタを乗り越え、2年目。ぴよぴよ感が多少は抜けてきたころだった。
なんのかんのあったものの、新入生を迎える春、引継ぎ、講習会などのドタバタも通りすぎ、夏が来ようとしていた。
その年は、北海道らしくないジメジメした夏だったと思う。
「北海道の夏は過ごしやすいハズなのに、、、詐欺ですよ~!」
と先輩にぶーたれていた。
そんなある日、私達は課長に会議室に呼びだされていた。
課長は会議室の中央に座っていた。私達が入ると、にこりと笑いかけた。
ユーモアを大事に、やるときはしっかりビシッとやる。そんな課長だった。
私達が席につくと「最近どうよ」といったような雑談から始まり、そして、話題はなにげなく切り出された。
「うちってさ、今、色々課題を抱えているじゃない? まず業務が多すぎる件。それに加えて光熱費や資料廃棄の問題。これらをチームを組んで解決して欲しいなって思ってさ」
内心「何を言われるんだろう、何か悪いニュースを聞かされるのかも?」と心配症な私はビクビクしていたのだが、予想の斜め上の話題に、心の中で首をかしげた。
『チームで解決する、、、?』
様々な問題を解決すべく、二人一組でチームを組み、業務改善などを行う課長直属のミニチームが、この時結成された。
私は先輩と、業務改善と光熱費などについて検討するチームの配属となった。
自席に戻って「さて、どうしようか」と話し合った。
とりあえず、具体的な課題をどうするかだよね、ということになり、課題の進め方は2週間後に決めることとなった。
私は、なんとなくだが、
「これはチャンスなんじゃないか」
と思っていた。
一年目を終え、先輩方や同僚にお世話になっていた私は、なんとか恩返しがしたかった。
「この機会に、みんなの意見を聞いて、みんながよりよく働ける環境を作ることができたら、、、」
カウンターに入ってみんなの姿を眺めつつ、そう、不安の中でも妄想が膨らんだ。
私は一年目の仕事を通して、「みんなが本当の意味で楽しく働いている職場は、提供できる仕事の質が最も上がるはずだ」、そんな思いを抱いていた。
でも、そんな思いはあれど、そこから先が進まなかった。
(課に貼ってあった毎週の標語。課長が北海道大学を去る時にお気に入りの一枚をカラー版にして私にくれた)
そんなとき、なんのきっかけだったか、ある方がこんなことをポツリと私に言った。
「一人一人優秀なのは素晴らしいことだ。効率も大事。だけど働く上で本当に大切なのはそこじゃない」
「昔は今ほどせかせかしてなかった。だからこそ、そういった大切なことは日々の業務の中で少しずつ教えることができた。
でも、いまはその余裕がない。それはとても悲しいことだと思う」
私は聞いた当初「?」と一瞬固まった。
「優秀なことが本当に大事じゃないってどういうこと?」
と。
私は超絶スーパー優秀な先輩方に囲まれ、「自分は全然できない、、、」と劣等感にさいなまれつつ、それでいて強く憧れてそこを目指してきた。
「優秀になることを目指し、質のいい仕事をすること」が、一番大事だし、みんなや学生さんや教員のためになるんだと思ってきた。
、、、でも、それが、一番に大切なことではない??
私はその時、デスクの前でぼうっと開きっぱなしのExcelファイルを眺め、考えていた。
「憧れに目が眩んで、なにか大切なことを見逃している?」
私はその時、「あ!」とひとつのひっかかりを思い出していた。
話は唐突に変わってしまうが、私は中学高校と6年間、個人競技と団体競技の双方の良さを感じる部活に熱中していた。
中学校は吹奏楽部、高校は弓道部だった。
吹奏楽において、個人の演奏と団体の演奏はかなり別物であると私は思っている。
個人の演奏が、キリキリとしたまでに磨かれた自己の世界の表現、それを表現できるだけのうっとりとするような技術力が魅力だとしたら、
団体の演奏は、全体の調和の上にわっと音の質量が押し寄せる、鳥肌が立つような音が表現できる魅力があると思う。
団体でそうした演奏をするには、音をまず合わせる。何時間もかけて、合わせる。そわせる。それを通じて、作品を表現する。そういう世界だった。
弓道の個人戦と団体戦の戦い方もまるで違う。
こちらも個人は、純粋な技の洗練になるが、団体戦は違う。
個人では強かった選手が、団体戦では弱いなんてざらにある。
逆に個人ではいまいちな成績の選手が、団体ではレギュラーで輝いていることもある。
団体戦で勝つには、技術に加えて、このチームとしての強さが勝負の明暗をわけた。
『私が今戦っているのは、個人戦? それとも団体戦?』
----ただの個人の寄せ集めだったら、組織として働くメリットはどこにあるのだろう。
そう思った。
個人ではなく、組織としてなにができるかに考え方が変わった瞬間だった。
私は『チームで勝負をしてきた経験を、仕事に生かせないか』と思った。
特に、弓道部での経験を生かせるんじゃないか、と思った。
私が高校のときに所属していた弓道部は田舎だったが、伝説の顧問が赴任してきたことで、全国大会の常連校まで昇りつめたところだった。
しかし、私のひとつ上の代にその伝説の先生が異動になってしまい、私達に弓道を教えられる先生はそのとき誰もいなかった。
そんな逆境の中でも先輩達は、自分達で話し合い、考え、後輩を指導し、チームとしての強さを維持する努力をしていた。
自分達で部を守っていかなければならないという逆境にいたからこそ、『チームの力』については、より考えさせられた代だったと思う。
私は、その経験と照らし合わせて今回の業務改善を進めようと考えた。
一、誠実たれ。~チームの人間に誠実に接しろ~
チームとして強くなるためには、大前提として、仲間と接するときには誠実でなければならない、ということを当時学んだ(弓道の教本にも細かに書いてある)。
「は、そんなの綺麗ごとでしょ?😅」
そう言いたい気持ちはわかる。わかる、わかるけど、言ってる私自身だってちょっと恥ずかしいけど、、、。
実際、高いチーム力を発揮するためには、そうせざるを得ないし、それ意外に方法はない、そう、私は思う。
意外と人の嘘、慢心、虚栄、悪意に対する嗅覚というのは敏感なものなのだと思う。
四六時中練習を一緒にする。一緒に仕事をする。そうなってくるとなおさらに誤魔化しはきかないと私は思う。
私はまず、働いている人間ひとりひとりとまっすぐに向き合うことを心がけた。
気をつける点は簡単にまとめると以下の要素だった。
① 相手を理解しようとする努力を怠らない。
② 相手を評価しない、そのままを、まず受け入れる。
③ 相手の尊敬する点、良いと思う点を見つけ、学ぼうとする。相手にも伝える。
④ 自分を飾らない。よく見せようとしない。まんまの自分が相手に映るように心がける。
⑤ 相手に嘘はつかない。情報を出し惜しみしない。
⑥ 相手のためになることは自分のできる範囲でする。
⑦ まっすぐ接する心意気を忘れない。
二、意思をもち、責任をもて。~チームの共通の目標を確認する~
次にやったこととしては、チームの共通の目標を確認することだ。
弓道部では、入部して間もなく自分の目標を述べる機会がある。
私達の当時の目標は「全国ベスト4進出」。それを自分で述べることで、誰に言われたのではなく自分で目指すのだ、と責任を自覚する。
楽しくありながらも辛くてキツイ練習。逃げたくなるときもある。でも、やると決めたのは自分なのだと。
「これは、仕事だとどうだろう、、、」と考えた時に、ちょっと難しいな、と思った。
なぜなら、みんなが職場に求めること、理想の職場、やりたいこと、考え方は、バラバラで統一することは難しいからだ。
だったら、「みんなの理想の中で共通する部分を、全体の目標にすればいいのでは?」
そう思った。
そこでまず、「職員一人一人の理想の職場をさりげなく聞いてみよう!!」
と思ったけれど、コミュ力が低かったので、全然さりげなくではなく、めちゃくちゃ直球に
「理想の職場ってなんですか?」
と聞いてしまった。
そんなこんなでド直球の質問だったが、同僚のみなさんは快く答えてくれ、彼ら5人分の理想の職場像が見えてきた。
みな、目指すところは違うけど、その業務の過程として、
「無駄な作業をなくしたい」
「作業を効率化したい」
「仕事を共有して、どういった流れで全体の業務が動いているのか知りたい。そうすることで休みを取りやすい職場にもしたい」
上の点が共通していることがわかった、
そこに、私の「みんなが本当の意味で楽しく働いている職場は、提供できる仕事の質が最もあがるはずだ」
という考えを足して
「作業の無駄を減らし、作業を効率化し、仕事を共有化し、みんなが本当の意味で楽しく働ける職場にする」
を共通目標とした(結構当たり前のところに落ち着いた)。
その後、実際に改善を始めるにあたって、
「みんなが楽しく働けるように、業務改善すすめていきたいです!よろしくお願いします!」
と、この目標を掲げた。
共通目標は、忘れないように目に見えるロッカー横に貼った。
三、貪欲たれ。~よくするために、アイデア、工夫の追及を怠らない。~
結果を出すための工夫を怠るな、ということも先輩からよく指摘されていた。
漫然とただ弓を引いても上達なんてしない、と。
私はもともと運動音痴なのもあいまって、なかなか結果が出なかった。レギュラーなんて夢のまた夢だった。
ただ、先輩の言葉を受けて、自分なりに練習方法を工夫した。そうすることで、夢のレギュラーを獲得し、全道(北)2位まで成績を上げることができた。
同じように、この業務改善でも、どのように進めるかが大事だと考えた。
いろいろ考えた末、同時に集まることが難しいカウンター担当の事情を考慮し、以下のような方法で行った。
・職員が課題をファイルに自由に書き込む方式と直接聞き取る方式の両方を採用し、集まった意見をカテゴリ別に分けて整理する。
・課題解決のための作業時間を予め確保する(一回あたりは短く)。
・進捗報告は週一回とし、想定外の業務にも対応できるようスケジュールは緩めに。
・大目標のほかに小さい目標を立て、その積み重ねを心掛ける。
「こんな感じで業務改善やりたいです!!!」
と業務改善チームペアの先輩に聞いたところ、忙しいにも関わらず、
「いいね!それ! 面白そう😊」
とノってくださった。
二人というチームとしては最小の人数も、相談に時間がかからず効率良く進めることができた一因であったと思う。
四、自分の役回りを自覚せよ。
弓道の団体戦では、何番目に射るかで役割が違う。
例えば、先制パンチを取れるような選手は一番目に、などだ。
何的に入るかそれぞれに役割があり、その役割を理解し、そして、勝負の流れを作るように努める。
弓道に声かけはない。けれども、その背で行動で仲間の心意気がわかる。思いを矢にのせ、チームの的中をとる。
じゃあ、仕事では自分の役割って?
私が得意なのは、「やり方を考えること」で、引っ張ることはどうも苦手だった。
先輩はお姉ちゃんタイプなので、自然と引っ張ってくださる。
そこで下のように大体役割分担をして進めた。
~最後に~
今回の記事ではすべては書ききれないが、各チームで情報を共有し、お互いの得意なことを活かして業務改善に挑んだ結果、項目数だけで言えば下記の改善を行うことができた。
具体的には例えば以下のような結果を得ることができた。
・カウンターの配置を改良。少ない人員でも動線やポジションを変えることで業務が回るようになった。
・書庫の思い切った整理。作業スペースを逼迫させ、業務の効率を落とす原因となっていた書庫の整理を断行(魔窟とまで呼ばれ長年に渡って手を付けることが出来なかった)。
・まめに打合せ機会を確保して、お互いの業務内容を共有した。
空回ることもあったかもしれないが、少しでも、みんなが働きやすい職場になり、教員や学生さんに良いサービスを提供できるようになったんじゃないかなと思う(自惚れかも)。
「言うは易く行うは難し」とはよく言ったもので、学んだことを全て実践できているわけではない。
でも、この文章が少しでも誰かが『チームについて』を考えるきっかけとなれば、私は嬉しい。
--------------------------------------------------------------------------------------
■この記事のまとめ■
①個人でなにができるか、ではなく組織として何ができるかと視点を変えることが大事。
②筆者が考える、チームで働く上で大事な点。
一、誠実たれ。
二、意思をもち、責任をもて。
三、貪欲たれ。
四、自分の役回りを自覚せよ。
--------------------------------------------------------------------------------------
※この原稿は2021年3月に執筆されたものです。
▶北海道大学附属図書館の最新の情報がしりたい!そんな方はこちらをチェック★
Twitter
https://twitter.com/Hokudai_Library
Facebook
https://www.facebook.com/hokudailibrary/
________________________________________
※素材使用【画像提供:アイキャッチャー】
【Pixabay:https://pixabay.com/ja/】
#北海道大学附属図書館 #エッセイ #仕事