バッティング=守備=バント:バッティングは右打者のほうが難しい?
バッティングの到達点
結局、バッティングは
「センターの保持」と「ガイドハンド=押し手でボールをキャッチする」
この2つが最終到達点だろうと思います。少なくとも、最終到達点に近い境地であることは間違いないという確信があります。
感覚論で考えてみても、科学的に分析してみても、結局はここに辿り着きます。最終的には
バッティング=守備=バントになる
ということです。
あとはこれをどの程度無意識レベルに落とし込めるか、どの程度突き詰められるかになります。寝起きでも完璧にできるようになれ=完全にコンフォートゾーンにしてしまえ、ということです。
右打者と左打者の違い:左打者は軸足重心、右打者は前足重心
「センターの保ち方」についてですが、ほとんどの人は右の骨盤が前に出ているので(鴻江さん談)、
左打者→軸足側に重心を寄せるとバランスがとれる=センターの感覚が出る
右打者→前足側に重心を寄せるとバランスがとれる=センターの感覚が出る
ことになります。
世界最強打者との呼び名が高いボンズ・トラウトを並べてみると、前足のヒールプラント・バットローンチ時の重心位置が少し異なっていることが見て取れます。ボンズは軸足側に重心を寄せており、トラウトは前足側に重心を寄せています(ここではRからR'を予測しています)。
鴻江理論を私なりに解釈すれば、少なくとも、バッティングで超一流になりたいなら、重心の寄せ方を調整して、疑似的にでも「あし体」の動きを作る必要があるということになります。
鴻江理論について知りたい方には、ビギナーズガイドとして以下の書籍を推薦します。
右打者のほうがバッティングは難しい?
ただ、
「前足側に重心を寄せておく」ほうが、感覚的に難しい
というのはあります。要するに右打者の方がバッティングが難しいんです。というのも、「軸足一本で立っている状態で、前足側に重心を寄せる」というのは感覚的にやや高度(=打席の中で不安定な状態をあえて保ち続けることになる)であるためです。
どちらかといえば右打者の方がガチャガチャしたぎこちない打ち方になりやすいのはこのためです。
ボンズ・王さん・イチロー・ベーブルース・タイカッブなど、打撃の歴代記録1位にはどちらかといえば左打者が多いですよね?
MLBの超一流になるには「センターを保持」&「ハムを使う」
さて、
センターの感覚が出る=体幹が締まっている&仙骨の前傾も保てている
ということでもあります。そして、
体幹が締まっている&仙骨の前傾が保てないと、ハムは使えません。
バリー・ボンズのいう「バランス」は、「センター」と言い換えてもよいでしょう。センターを保持しておけば、ハムを使いやすくなるため、瞬間的な動きに対応しやすくなります。
ピッチャーなら多少ハムの使い方が甘くても結果が出せる(2020シーズンはMLBで日本人投手が二人サイヤング賞最終候補に残りました)のですが、バッターはほんの少しのロス=ハムがうまく使えないだけで簡単に打てなくなります。
つまり、ピッチャーだと左重心でなくても活躍できる可能性はありますが、バッターは左重心(=右打者の前足重心感覚・左打者の軸足重心感覚)が必須ということです。後天的にでも「あし体」を作って、ハムを使って打てるようになる必要があるのです。
日本のアマチュア野球レベルであればハムが使えなくても打ててしまいますが、MLBでトップクラスの打者になろうと思ったら「ハムを使って打つ」は必須です。
歴代の打者でいえば、これができているのは1990年代後半~2000年代のイチローくらいです。松井秀喜ですらほとんど使えていないというレベルです。大谷翔平ですら部分的にしかハムを使えていません。
ハムを使えている打者は「短い間合いのローディングからクルッと回転して打つ&フォロースルーで頭がホームベース側に倒れる」という特徴があります。比較GIFを出しておきます。
バッティングは守備・バントと同じ
右利きで左打ちの人なら、
「左手のグローブがそのままバットになった」
と考えます。これはそのままイコールで守備になりますよね。
逆に、右利きで右打ちの人なら、
「利き手=右手でそのままボールを直感的に捕ってしまう」
ということです。グローブを持つ側の手ではありませんが、利き手なので直感的に捕りに行けます。
そして、キャッチボールで「グラブをはめた手だけを前に突き出してボールを掴みに行く」のは、守備が上手ではない人や、初心者の人がやることですよね?
「掴みに行く」というのは、要するに「センターが崩れてしまう」ということです。これは、バッティングで言う「手打ち=手だけ突き出す様なスイング」になります。
キャッチボールでもバッティングでも、「センターを保つ(手だけで掴みに行かない・迎えに行かない・とっさに反応できる状態を保つ)」かつ「ボールを捕る」というのは共通
なんです。普段のキャッチボールでもそうですし、内野守備のゴロ処理フライ処理・外野守備のゴロ処理フライ処理でも、タッチプレーやフレーミングでも一緒だと思います。
グラブをはめた手だけ前に突き出してボールを自分から迎えに行くと、捕ったと思ったのに弾いたり、小さいイレギュラーに全く反応できなかったりしませんか?
バントも同じです。落合さんも「バントができない奴はセンスがない」と言っておられましたが、強打者ほどバントが上手な傾向があります。「キャッチャー側の手で、迎えに行かずにボールを捕る」イメージでバントしているからだと思います。
手だけで迎えに行くと、よくある典型的なバント失敗=急にバットを動かして空振り・ファールになるアレになります。
そもそも、
バントでも守備でもバッティングでも「グラブをはめた手(ガイドハンド)が動くスピードよりもボールが来るスピードの方が絶対に速い」ので、手だけで迎えに行く理由が全くありません。
「センターを保ったまま、その場で待って捕ればいい」ということになります。
打席でセンターさえ保っておけば、ボールをガイドハンドで捕るイメージによって、身体は反射的に出力してくれます。
ニッチな話をすると、打者の頭の中(R')で「センターを保ったまま、ボールをガイドハンドで捕ろう」というイメージを持っておけば、自然に、軸足側の半身は初動負荷「ペルビス」「クラビクル」が組み合わさった形になりますし、投手側の半身は初動負荷「スキャプラ」「ヒップジョイント」が組み合わさった形になります。
ボールという高速飛翔体を周辺視野で認識(→到達時刻および位置を予測)しつつ、「ガイドハンドで捕る」という対応をしようと試みれば、自然に初動負荷マシンと同じ形が作られるということなんです。
そこから負荷が抜けて(バットという物体を持つことによる身体バランスの変化も利用)、筋肉が短縮=パワー発揮に転じれば、みなさんご存知の「バットスイング」が実現されます。
「センターを保ったまま捕る」なら、よく言う「8割の力感」も簡単に達成できますし、「アレコレ考えずに来たボールを打てばいい」という表現とも符合します。
ストライクゾーンは全て「インハイを捕る」で捌ける
キャッチボールで一番捕りやすいのって、右利きなら
「グラブをはめたほうの肩・顔の前あたり(左肩の前あたり)」
じゃないですか?
バッティングでも同じで、上半身の傾きを調整すれば、ストライクゾーン全体を「捕る」で処理できます。要するに、ストライクゾーンは「すべてインハイ(=キャッチボールで一番捕りやすいところ)」なんです。
ただ、身体の裏側の筋肉が硬いと、これは難しいですね。
身体の裏側の筋肉が柔らかいと「ガイドハンドで捕る」でバッティングが終わります。パンチャー(関節トルクを利用してヘッド加速)を究めると「ガイドハンドで捕る=バッティング・守備・バント」になるんです。
逆に、身体の裏側の筋肉が硬いと「捕る」ではなく「バットをスイングして、ボールにぶつける」になります。こちらはスインガー(運動依存力を利用してヘッド加速)的な方向性です。
もちろん、簡単なのは前者です。MLBの超一流どころも結局、背中側の筋肉が「柔らかい」、つまり「自然長が大きく、弾力性にも富んでいる」んです。