フロリーss(仮) その2 冒頭前
※エレベーターシーンの前。ブリーフィングと自室のシーン。
Day2
13:04:11
ロドス本艦
ブリーフィングルーム No.5
椅子と大きめのスクリーンが並ぶブリーフィングルームについたフロストリーフは空いた端の席に腰を下ろした。満腹感と眠気で瞼が落ちわずかな眠りに身を委ねると、ガヤガヤした喧騒から切り離されコクリと船を漕ぐ。
これから戦場に行く事以外はいつもの日常が広がっていた。
だが小隊長が入室すると空気が一瞬にして張り詰めた。
地図と作戦フェーズが画面に表示され手元の資料に目をやると隊長が作戦概要を話し始めた。
「感染者含む民間人の救助。それが今回の任務だ」
戦闘を前に自らを鼓舞する者、深呼吸する者、武者震いする者、眉間に皺を寄せる者。皆緊張していた。
「当該地域から救難信号が発せられた。車両にて北から侵入し救援活動を行う。
この地域は先週まで危険度5と非常に危険であったが制圧が進み今は3まで落ちている。しかし依然として巨大な源石が数多く点在し敵勢力との遭遇も考えられる。武器の使用は自由だが民間人への攻撃には注意。速やかに進軍し必要なら応急処置、回収ラインまで撤退せよ。
廃棄都市のインフラは全滅している。日の入りすれば進軍は困難だ。
日の入り前までには戻れ。帰りはヘリで再び北のポイントで回収する。
以上」
質問が終わると各々最後の準備に向け部屋を出ていった。
フロストリーフは自室に戻ると隅に置かれたものに手をかけた。布が巻かれた持ち手と鈍く光る切先。軍にいた頃から使っている斧はいつも通りに重たい。彼女がそれを抱えると、とある物に袖が引っかかった。
「おっと」
年季の入った紙ラベルのついたマットブラックの瓶。危うく落としてしまいそうになりほっと一息つく。ボトルが彼女の手にずっしりと沈み込む。
いつものバーのバーテンに相談して選んだ、フロストリーフがドクターと一緒に飲むために用意した。味も喉越しも風味も二人の好みを合わせた特別なもの。フローズンワード。
ドクターと約束した酒だ。
「ドクター......」
フロストリーフはいつになく興奮と高揚の中に浸った。一方でどこか悲しいような寂しいような気もした。邪念を追い払うように頭を振った。
集中しろ。これから行くのは戦場だ、こんなことではいけない。せっかくの一杯も、今日を生きて帰らなければ意味がない。
甲板に向かうべくドアを開けるが足が止まった。机に置かれたそれは、開かれることはないのか埃をかぶっているようにも見えた。
ほんの少し前までにあったひと時が走馬灯の如く流れる。
話したい。話さないといけない。そんな気持ちばかりが溢れる。
いつも以上に感傷的になっている頭を無理やり切り替えようと再び頭を激しく振り、足早に廊下を駆けていく。
今から行くのは、戦場なのだから。