【DAY 6】お気に入りのアニメーション映画 「インクレディブル・ファミリー」
DAY 6
your favourite animated film.
お気に入りのアニメーション映画
「インクレディブル・ファミリー」(2018)
ブラッド・バード監督
(声の出演)ホリー・ハンター、クレイグ・T・ネルソン、サミュエル・L・ジャクソン、キャサリン・キーナー
かつては地球の平和を守っていたスーパーヒーローの、”Mr.インクレディブル”のボブと”イラスティガール”のヘレンは結婚し、長女のヴァイオレット、長男のダッシュ、赤ん坊のジャック=ジャックと5人暮らし。しかし現在はヒーロー活動は法律で禁じられているにも関わらず、地底から現れた怪人を退治するために家族で大暴れしてしまい、ついには国の機関による保護の対象からも外されてしまった。
そんなとき、世界的大企業の「デブテック」がスポンサーにつき、ヒーロー活動を援助してもらえることになった。しかしオファーされたのはヘレンだけで、ボブは慣れない子育てと家事に奔走することになる。そんなある日、謎の敵・スクリーンスレイバーが現れた。
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ピクサー社の20作目の長編映画である。ピクサーは、もともと、スティーブ・ジョブズがILMのCG制作部門を会社として独立させてスタートした会社で、現在はディズニーの傘下になり、引き続き面白い3Dアニメを作り続けている。
僕は、基本的にピクサーのアニメを信用している。
理由は、まず第一に、その映像技術の高さだ。
最初の「トイ・ストーリー」(1995)で、まだまだCGが飛び道具にすぎなかった時代に、2時間の観賞に耐えうる精度のフルCG長編アニメを公開し、世界の度肝を抜いた。本物と見紛うような背景、なめらかな動作のキャラクター、そして実写映画のようにパンしたりズームしたりするカメラワークなど、そこにはそれまでのアニメとは全く異なる表現があった。もう15年も前の大昔の話だよ。まだまだ2Dの「アラジン」(1992)や「ライオン・キング」(1994)などが大ヒットする時代だったのだ。
その後も新作が出るたび、新技術を披露。そもそも、毎回グラフィックソフトの開発から行うみたいなので、一度完成したテクノロジーは蓄積されるし、他社はどんどん真似ができなくなっていく。
例えば、「モンスターズ・インク」(2001)では、以前の技術ではどうしたって固そうだった「毛」の表現方法を改善、サリーの毛なみが風に揺れて自然になびいた。「ファインディング・ニモ」(2003)では、海中を泳ぎ回る魚の自由なモーションや、サンゴ礁にゆらめく美しい光と泡の造形を顕した。
そして、前作の「Mr.インクレディブル」(2004)で、ついに「人間」のキャラクターを主人公とすることに成功。おもちゃや昆虫や魚なら、多少ごまかしがきくけれど、「人間」を作るには繊細な気遣いが必要で、表情やしぐさにちょっとでもコンピュータの演算結果が感じられてしまうと、一気に興醒めしてしまうのだ。しかし、きちんとデフォルメしたアニメ表現の人間たちが、いきいきと会話を繰り広げ、「性格」とか「年齢」みたいな、本来は役者が担当しなきゃいけない役作りを、CGが代行できることを証明した。
その後も、「レミーのおいしいレストラン」(2007)では「味」を抽象的に表現し、「ウォーリー」(2008)では逆転の発想でアニメ内に実写の映像を挿入したりと、新作のたびに驚かされる映像を作ってきた。
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ピクサーを信用している理由のもうひとつが、巧みなストーリーである。
この制作会社は、とにかくシステマティックに「分業」する大企業であり、ジブリみたいに宮崎駿個人の作家性に委ねられているわけではない。そしてそ仕組みは、映像の制作部署のみならず、ストーリーづくりにおいても採用されている。つまり、たくさんの脚本家が、的確なマーケティングに基づいて、毎日毎日会議をし、何度も練り直して「いい話」をつくるわけだ。だから、「カールじいさんの空飛ぶ家」(2009)とか「トイ・ストーリー3」(2010)、「リメンバー・ミー」(2017)みたいに、老若男女を感動させるようなプロットが出来上がる。
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ただ、そんな中、この「インクレディブル」シリーズは、他の映画とちょっと毛色が違うので、特別気に入っている。というのも、これ、純粋な「アクション映画」だからだ。
そこには、人を感動させようという魂胆があんまりない。ディズニーの「夢と魔法」という理念の遵守すらしない。古き良き西部劇やスパイ映画のように、勧善懲悪のヒーローがやりたい放題に戦うだけで、そこにはなんの教訓もありはしないのだ。
実写の、「ワイルド・スピード」(2001)、「ジョン・ウィック」(2014)のシリーズなどが、新作のたびに「そんなアクションがあったか!」と驚かせてくれるのだから、自由な発想を表現できるアニメには、さらにその上をいく責任がある。
そして、今回の「インクレディブル・ファミリー」は、きちんと、今までになかったアクションが目白押しだった。高速で疾走する電車の屋根の上を疾走するバイクとか、天井も壁も電光看板のような光の渦の部屋の中の肉弾戦とか。ヴォイドの、空間にワームホールを開けながらの戦いもすばらしい。過去に「X-MEN: フューチャー&パスト」(2014)のブリンクや、「アベンジャーズ」のDr.ストレンジなどが、同じような技を使ってはいるが、さすがに今回のスピードと手数の多さには勝てない。
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監督のブラッド・バードは、少年とロボットの絆を描いた2Dアニメの感動作「アイアン・ジャイアント」(1999)を作った。その後、ピクサーのアニメを手掛ける一方で、実写の「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」(2011)の監督をしたりもする。高層ビルをよじ登るグローブなど、いろんな遊び心に溢れたガジェットが出てきて、MIシリーズの中でいちばん好きな作品である。