『三千円の使いかた』を読んでみた
はじめに
あけましておめでとうございます!
昨年、僕の拙い文章を読んでくださった皆様におかれましては、本当にありがとうございました。
今年もマイペースに記事を投稿していく予定です。
楽しんでいただけますと嬉しいです。
皆さまはお正月をどのように過ごされましたか?
我が家では元旦に必ず初売りに行きます。
ここ数年はすっかりドライバー役で、本を数冊仕入れて、福袋やら何やらたくさん買い物をする母を車で待っているのが常になっています。
昨年FP資格を取得して、お金への関心が高まっていたこともあり、『三千円の使いかた』『家づくりのお金の話がぜんぶわかる本』という2冊を購入し、前者については読了することができました。早速紹介していきたいと思います。
どんな本?
Amazonでは中公文庫のベストセラーとなっており、その人気がうかがえる本書。
タイトルだけ聞くと、節約や資産形成の指南書かな?と感じられると思います。
私も調べるまではそう思っていました。実際には、小説の中に学びや気づきのフックとなるものが散りばめられています。
モノローグ調の小説ではなく、複数の登場人物それぞれの視点からそれぞれの社会的立場の中で抱える経済的な悩みを描写し、家族や友人との関わりの中でもがきながらも解決していく様が記されています。
社会人になりたての美帆からリタイアして余生を過ごす琴子まで、さまざまな視点を追体験できるため、大学生以上であれば主人公たちに自分の面影を重ねて楽しめるのではないでしょうか?
美帆は、堅実に貯金をしてきた姉の真帆と中々貯金ができていない自分を比べ、生活を変えることを決意します。節約の第一歩となる「固定費削減」を目標に、アクションを起こしました。美帆は成長することができるのでしょうか。
一見上手くいっていると思っていた真帆にも、きらびやかな婚約を発表した友人と会い、「節約がそんなに大切なのかな」と思案するタイミングが訪れます。
これ、周りに言われて何となく節約や貯金を始めた人ほど陥りやすいと思うんです。いま疑問を持ちながら貯金を続けている人は、ぜひ一度、真帆の物語を読んでみてください。
70代で1000万円を貯金している琴子でも、お金の不安は尽きないようです。毎年のように国民年金や厚生年金は目減りしていて、公的年金だけを頼りにしていると、老後に充実した生活を送るのは難しくなってしまいます。
家計簿を昔からつけていて、お金の動きに敏感だった琴子はそれに気がつき、資産の運用を始めました。しかし、それでも、もう数十年生きると仮定すると足りません。お金のことを考えていくうちに、琴子は、本当に足りないものがお金だけではなかったことに気がつきます。果たして足りないものとは何だったのでしょうか。
智子は、家事に無関心な「一昔前の夫」に嫌気がさしていました。仕事一本にも関わらず中々給料が上がらない旦那と二人暮らしでこのまま生活することが、本当に幸せなのか。そんな悩みを抱えていたところに、浮気を理由に離婚を決めた親友が相談を持ちかけてきて…。熟年夫婦の智子たちが辿る道はいかに。
感想
「人は三千円の使い方で人生が決まるよ」
祖母・琴子のこの言葉から始まる本作ですが、
実際にこの考え方が引用されているのは、物語中ものの数回でした。
タイトルに惹かれて購入した僕のような読者にとっては少し拍子抜けかもしれません。しかしながら、お金にまつわる問題提起や小説としては秀逸です。
2020年から現在まで続くコロナウイルスの蔓延、昨年初めから長期化しているロシア-ウクライナ間の戦争の煽りを受け、日本はここ数10年の中でも類を見ないほどの円安・物価高を経験しています。勤めていた企業が倒産してしまい、生活が一変してしまったという世帯も少なくないでしょう。
このような先の見えない時代では、優れた金銭感覚を身につけ、資産を眠らせるのではなく有効に活用していくことが、明るい将来を切り拓いていくための必須スキルといえます。
この本を読んで、僕自身が志望の大学を決めたときのことを思い出しました。
恥ずかしながら、高校3年生の7月まで部活動に打ち込んでおり、卒業後については漠然と県内の国公立大学に進学したいとしか考えていませんでした。
僕の高校では進学をする人の方が稀で、周りに勉強に勤しんでいる人も皆無だったので、それでもいけると変な自信がありました。しかし、現実は違います。他の高校の受験生たちは、それこそ高校に入学してからずっと自分より勉強に励んできて、受験に向けて努力をしてきました。勝てるはずがありません。
そこで進路指導の先生からは、協定校の指定校推薦を勧められました。
一応学年1位、部活動でも県大会優勝と、ペーパー上ではかなり優等生だったため(念のために改めて断っておくと、中堅の高校であれば学力は中の中か〜中の下くらいではなかったかと思います)、指定校ならどこでも受かるだろうと考えてくださったわけです。
先生の提案は非常に嬉しかったのですが、僕が通っていた高校の指定校推薦の提携校は私立しかありませんでした。小学6年生の頃から父の死別を理由に母子家庭で育ってきた我が家には、そんなお金はないと思いました。一方で、浪人してアルバイトしながら勉強をする余裕も、その覚悟もありませんでした。
泣いて帰りました。家に帰って自分の部屋に戻り、部屋を真っ暗にして布団の中に潜り込みました。母と祖母が心配して部屋に来ました。泣いている姿は見せたくなかったのですが、涙が止まらず、そのまま20〜30分ほど泣き尽くしてしまいました。
少し落ち着いて状況を話すと、祖母が、「ずっと黙ってきたけど…」と言って、封筒を出してきました。中学校から母方の実家に越してきたのですが、どうやら祖母が母に「住まわせてあげるけど、家賃を払いなさい」と言っていたそうなのです。実家に住むには結構な大金でした。母は毎月払い、祖母はそのお金に一切手をつけず、僕の大学進学の時の資金となるように取っておいてくれたのです。
母も驚いていましたが、思いがけない祖母の思いに、僕はまた涙が止まらなくなりました。
「ありがとう…ありがとう……」
そんな嘘のようで本当の話があり、指定校推薦を利用して大学に入学することになりました。
「祖母が、「家賃を払え」と言っていなかったら、絶対そこまで貯めることはできなかった」というのは、後で母から聞いた話です。今思うと、そこまで長期的に考えて行動していた祖母は、やはり偉大だったと思います。もちろん、そこで「家賃」を払い続けてくれていた母にも感謝しなければいけません。
僕自身、将来は所帯を持ちたいと強く思っています。
その時に家族と幸せな生活が送れるよう、お金と向き合っていきたい。
そう考えさせられる読書経験でした。
興味のある方はぜひ、書店で手にとって見てください!
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