終わりなきストーリー
14歳の頃、ある物語をつくった。
それは、当時好きだった漫画やライトノベルの好きな要素だけ織り交ぜたバトルファンタジーで、設定も展開もつぎはぎだらけの借り物。カッコいいと思った言葉を意味もわからず使い、やたら登場人物が多い。全てが未熟を絵に描いたような駄作だった。
多分それが、私が一番最初に生み出した物語だった。
当時使っていたのはピンクのキャンパスノート。色褪せてところどころに傷が見える。ページをめくると、小さな文字が罫線の上でひしめき合っていた。けれど、その小さな文字は大きさとは裏腹にしっかりと自信に満ちた形をしていた。第10章まで書かれたそれは、クライマックスを前に途切れてしまっている。それで忘れ去られて終わりなはずだった。
きっかけはさまざまだった。
素敵な作品に出会った時、新しい音楽を聴いた時。
折に触れて、彼はひょっこりと顔を出す。たちまち頭の中に物語の世界が広がり、私の想像力を歩かせる。
「書いて!」と強引に導くのではなく、そっと現れてなにも言わずただ寄り添ってくれる。私はそんな心地よい居場所で新しいエピソードを加えていく。それはいつの間にか当たり前のことになっていた。
最初はあんなに歪で中身のなかった物語は、男の子が成長していくように月日と共に変化していった。
小学生から中学生へ骨格がしっかりしていくように、場所や所属の設定を細かく決めたり、一人一人の登場人物が物語にとって意味を為すか熟考したりすることで精密さを増し、構成は凛々しく固まっていった。幼い高音から深みのある低い声に変わっていくように、薄っぺらいストーリーは深みのあるエピソードに変わっていった。そうして立派に成長してくれた彼は、私にとってかけがえのないものになっていた。
そして、この物語の終わりは一向に見えなくて、まだまだ続いていきそうだ。
今日、誕生日を迎え、私は24歳。
この物語とは10年の付き合いになる。
今日は知らず知らずのうちに10周年を迎えたこの物語に「これからもよろしくね」と心の中で小さく呟いて、二人で笑い合おうかな。