#恋愛小説
相思相愛 side he
触れる唇からはまだ、好機のぬくもりが感じられた。
うっすらと目を開けば、白い肌越しに夜の街のネオンが燦然と煌めく。ガラス戸の向こうのそれは、少し白ばんでいて、まるで俺たちだけ世界と隔たれた場所にいるみたいだった。
ポロロンと憂いをふくませたピアノの音色が部屋の中を一人歩きしては、ムードを越えてはいけない世界へと引き込んでいく。俺はまた目を閉じ、のせられるがままに己の欲情をうねらせる。
相思相愛 side she
月が弾けたような光が夜空を走って、あの人との通話が途絶えた。見上げると月はまだそこにいて、ほっとした気持ちになる。
照明が程よくしぼられた薄明かりの部屋に視線を戻すと、彼はすでにベッドの上で眠りについていた。静かに脇に寄り、彼の寝姿を眺める。
アルコールの回った身体に下品な匂いはさせず、少しの疲労感だけを漂わせて、ベッドに身を委ねていた。首筋まで伸びたキャラメルマキアートに染まった髪が、