
鉄道模型が「車両を買う趣味」になっていないかという話
少し前、Xで、「鉄道模型はオタクに媚びて細密化しすぎて価格が高騰し、間口を狭めている」という投稿が炎上した。
このほか、エラーを指摘する投稿が議論を呼ぶだとか、某メーカーの生配信のチャット欄が世紀末だとか、鉄道模型に関するネットの話題の中心は、「車両」それも「新製品」に関することだと思う。
私は、「鉄道模型は車両を買う趣味」という風潮が、年々濃くなっていないかと思ってきた。
私自身、買って満足してタンスの肥やしにしたあげく、ヤフオクやメルカリで「さよーならー」となった車両は少なくない。
最近、2冊の昔の本を見て、そんな思いが確信に変わっている。
ひとつめは、「グリーンマックス総合カタログ Vol.14」。
2004年、グリーンマックスが完成品を出し始めた頃に発行された。
その扉ページに、こんな前書きがある。

……私にとっては、耳の痛い話である。
そんなグリーンマックスも、今や良くも悪くも湯水のごとく完成品を出すメーカーになったのは皮肉なことである*。
ふたつめは、「トミックステクニカルブック」。
1984年、TOMIXがレイアウト製作のガイドブックとして発売したもので、90年代半ばに絶版となるも、いまだに質の高さを評価する声がある。
そこには、鉄道模型の楽しみ方を提案する写真の数々がある。




車両のバリエーションもディテールも今の時代に全く及ばないが、断然魅力的で豊かな趣味に見えないだろうか。
昔のTOMIXは、車両、線路、ストラクチャーを買い揃えた先にある、「鉄道模型のある生活」の訴求がとても上手かった。
今の鉄道模型ユーザーには、私も含めて、「車両を買って満足すること」が趣味になっている人が多い気がする。
「しょせん趣味だしメーカーにも金落ちるし、いいじゃねーか」と割り切るのもアリだと思う。
しかし、なんだか趣味としていびつな気がするというか、本当に生活や人生が豊かになっているのか疑問というか。
子どもの頃、ボロボロになるまでカタログを見て、お小遣いやお年玉を貯めて、欲しくてたまらなかった車両を買って、家に帰って初めて走らせた時の喜びを振り返ると、今はポンポン買えるのに心が満たされないというか。
では、買うだけの趣味から一歩進むために、私のようなユーザーはどうすればいいのか。
いきなり、みんな加工しよう!キット組もう!レイアウト作ろう!となるのは無理がある。
うーん……
ちょっと机に線路敷いて、手持ちの車両出してニタニタしてみようぜ!
できれば、床に小判型エンドレスでも敷いて走らせてみようぜ!

(追伸)
冒頭でも触れたが、ここ2、3年の価格高騰は、正直キツい。
「被弾」した車両も、価格を理由に買わないことが増えた。結果的に、本当に欲しいものを厳選できていると言えるが……。
本論と矛盾している気もするが、この状況ではメーカーもいずれ商売に行き詰まるのでは?と思う。
(*)Xなどでの広報、ハイクオリティエコノミーキットや着色済キットの展開、30年ぶりとされる新規エコノミーキットのJR四国7000系の発売など、「祖業」のキットに触れてもらおうとする姿勢があることも事実。