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~『北緯43度から見た二つの椅子』という演劇作品が出来上がるまでの創作日記~ 作家のひとりごと 第3信

2024/2/15
 
 資料を見て、衣食住の食について考える。

「レストラン通いは辞めにして、小さなガスコンロを役に立てた。私が料理をし、フィンセントが家からそう遠くないところに買い出しに出掛けた。一度はフィンセントがスープを作りたいと申し出たこともあったが・さてどんな風に調理したのかわからない。おそらく、カンヴァスに絵の具を塗りつけるのと同じ調子でやったのだろう。いずれにしろ食えた代物ではなかった。フィンセントは笑いながら言った。「やれやれ、慣れないことはするもんじゃないな」。

 料理が決して得意ではなかったゴッホは子供の頃から慣れ親しんだじゃがいもを素朴に頂くスープを作ったかもしれない。

■向こうで食べてた可能性のある料理

ふかしジャガイモ
タマネギのスープ
ニシンの燻製マリネ仕立て
※5月になるとオランダには「ヘーリング」というニシンの酢漬けが出回る。
カニのクロケット
タルトタタン
木靴に入ったスプーン
アブサン
ジャガイモのスープ
ゲハクルト(肉団子)
ハットスポット
ゴーダのチーズトースト
パンネック
ローストビーフ
ヨークシャプディング
ゴーニッシュパスティ 
※コーンウォール鉱山で働く人のお弁当的な料理。
フィッシュ&チップス
ムール貝のワイン蒸し
ワッフル(長方形)
チコリのグラタン
チコリコーヒー
オムレツ
オートミール
フォンダンショコラ
※テオが好きなものはチョコレート。
ーアルルでの料理ー
プラリネ(アーモンドのキャラメル焼き)
アブサン
アイオリ(ニンニク風味のマヨネーズ)
スタッフドベジタブル
ホワイトアスパラガス オランデーソース添え
※春の楽しみ。別名マドモアゼルの指先
骨付きモモ肉のチキンロースト
手作りフランスパン
※常に傍らにあった。キリスト聖書より「このパンを食べるならば、その人は永遠に生きる」

ゴーギャンの目線から見た共同生活をしているゴッホの印象は下記のようなものだった。

「まず何よりも私が驚いたのは、彼の生活の乱雑さだった。絵の具の中身といえば、チューブの全てが押しつぶされ・蓋も開けっ放しといった具合で、満足に使えるものはほとんどなかった。その乱雑、そのようなガラクタの山の中にあって、彼のカンヴァスだけは光輝いていた。」

 関心したのは、最後の末尾の文章。

 「その乱雑、そのようなガラクタの山の中にあって、彼のカンヴァスだけは光輝いていた」

 食への関心は、その人の生き方を伝えてくれる。粗食もまた、画家の生き方の表れなのかもしれない。

 ここで追加の知識。
ゴッホから送られてきた自画像。そこに書かれた献辞を消したゴーガン。

下記はゴッホが弟テオに送った文書。
当時の食生活の状況がイメージ出来る。

1888/10/8

 木曜に金を使い果たしてしまい、月曜の昼までがすごく長く感じられた。
 この4日間というもの2、3杯のコーヒーとパンで命を繋いだ。それもツケで。
 いや、君のせいじゃない。責めるものがいるとすればそれはぼくだ。
 どうしても絵を額装したくて、予算も考えずに額を注文してしまった。
 家賃の支払いもあったし、掃除をしてくれる人に給金も払わなきゃいけなかった。
 今日も支払いがある。カンブァスも買わなきゃいけない。

 ……壮絶な極貧生活を繰り広げているなという印象。自分も笑い事ではない。

 この点については、三人でやる強みになるかもしれないと淡い期待を抱く。

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