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Back to the Future: Wheels on Fire 和訳

Back to the Future: Wheels on Fire というバックトゥザフューチャーのVFXに関する記事を一部和訳したので、シェアします。

元記事:

上記リンクは、映画撮影の専門誌である「アメリカン・シネマトグラファー」1985年12月号に掲載された記事が、インターネットにアーカイブされたものです。無料で誰でも見られる記事です。バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)のVFXについて製作当時のレアな情報がいっぱい詰まっており中々日本語になっていない情報な気がします。後半の一部分から模型製作周りの文章を和訳しています。気が向いたら、他の部分も和訳しようかな。


内容は参考程度にしていただければと思います。出来る限りリサーチをかけておりますが、翻訳内容、人名専門用語がおかしい等あるかもしれません。もし見つけたらお知らせいただけると嬉しいです。

写真に関しては元記事のものではなく、私がネット上で収集したものです。元記事の説明を補足できる画像をつけて分かりやすくする意図です。元記事はPart1の時点でのインタビューですが、上記の意図のためPart2撮影時の写真も混ざってます、ご了承ください。情報が少なすぎて私も正確な情報が知りたいので、ぜひこちらも間違いありましたらお知らせください。

それではどうぞ!


モデル制作

"あの空飛ぶデロリアンは模型部門の責任者であったスティーブ・ゴーリー(Steve Gawley)が作ったんだ。アイラ・キーラー(Ira Keeler)とマイク・フルマー(Michael Fulmer)、動員できるみんなの総力を結集させてね。”

とローストン(Ken Ralston)は言います。

デロリアンのミニチュアを作るスティーブ・ゴーリー(左)とアイラ・キーラー(右)

ゴーリーはこのミニチュアカーを説明します。

”このタイムマシンの模型は、映画の最後のショットにしか登場しない。とても素敵な車だし、もし続編があるなら模型はもっと観客に見られることになる。ミニチュアだけど実物大のデロリアンと同じ事が出来なきゃいけなくて、しかも飛ぶときた。このプロジェクトは5人がかりで数か月かかったんだ。

制作途中のミニチュアとスティーブ・ゴーリー。
ミニチュアの背面。

ホイールはロケット噴射を表現するために光るんだ。そして実際に車体から伸びて変形できるようになっている。車体についているネオンライトは全て光る。背面の2つ並んだ大きなスラスターも機能する・・・プロジェクターバルブを使って光るんだ。楽しいプロジェクトだった。僕らに関係のある身近なものだからね。車さ。僕らにはそういうものが新鮮だった。僕らは経理部の持っているデロリアンをすぐ横で見られた。ロスアンゼルスで実物大のデロリアンを組み立てている間、僕らはその経理部の女性から本物のデロリアンを借りたり、写真を見たりしながらベースとなる車体の形を割り出した。そんな風にして車体から作り始めたんだ。僕らはホイールやタイヤがある事、車体がステンレスだって知ってた。けど後になってデロリアンの詳細な写真が手に入り、僕らのデロリアンに必要なスペックがやっとわかったんだ。そうして手に入れた側面や背面の写真を元にしてディテールを作っていったんだ。”

通気口のライトをチェックするスティーブ・ゴーリー。

ゴーリーはこの車がどういう風に作られているか、詳細を明かしてくれました。

”1/5スケールで作られている。全長約33インチ(約84cm)で、積層エポキシ樹脂で作った。強化繊維プラスチックより強く薄く作りたかったからね。5方向からマウントして車体を支える事が出来る。実は”ステンレス”仕上げは、塗装にスチールウールで表面をこすってテクスチャをつけたものなんだ。タイヤはゴム製じゃなくてアルミ製だ。ロケット噴射を表現するためホイールにハロゲンライトが入っているんだけど、これが尋常じゃない高温になるからだ。一時間ほどホイールのライトをつけっぱなしにしたら、スイッチを切って休ませないといけなかった。”

”ケンは内装はあまり見えないと思っていたので、車の中に人形は置かなかった。窓を青チョークでコーティングして、青空の反射を表現したりした。ショットは、最初の想定ではデロリアンが真上に浮かび上がってホバリングするものだった。ヘリコプターが飛び立つみたいにね。そこから変わっていったんだ。”

おそらくPart1の撮影時の写真。フロントガラスが青チョークでコーティングされているようだ。

撮影

モデルメイカー達の仕事が終わると、ケン・ローストンによって空飛ぶデロリアンが撮影された。彼はその時どうやったか教えてくれた。

ケン・ローストンとTIEファイター。BTTFの撮影をしているケンの画像は見つからず。。
こちらはおそらくPart2の撮影時のもの。フロントガラスが透明になっているため。手前にいるのはピーター・ドールトン(Peter Daulton)。ヴィスタ・クルーザーが手前に映っている

”テストするのに一日、私の手で全部プログラムして撮影するのにまた一日と、合計二日でやった。映画の公開日に間に合わせるためにそうせざるを得なかった。最悪な事に彼らは公開日を早めたので、スケジュールを二週間もカットされてしまった。めちゃくちゃな要求を押し付けてきたんだ。「7月19日にバックトゥザフューチャー公開」・・だけど本当は7月3日なんだよ!だから僕らは締め切りに追われ、死に物狂いで撮影したんだ。”

”モーション・コントロールで動かしていて、従来の撮影と比べても特段新しい技術はない。しかし色んなものを光らせないといけなかったし、車はロケット噴射を出して飛ぶ必要がある。車の周りにスモークがある場面では、ホイールから光の筒が伸びるようになっていた。バックアップライトもついていて、その光がーパーツの名前がわからないが――あのレトロな四角いやつから光が出るようになっていた。実物大のデロリアンと見分けがつかないよう、全てを合わせる意気込みで作ったんだ。

BTTF1、劇中のシーン

”モーション・コントロールでの撮影は難しかった。車が完全に旋回して戻ってくるからだ。しかも旋回する車のマウントされる支持棒が観客に見えないように上手く隠す必要がある。照明とマウントの仕方を変えた2つのテイクを比べてみたけど、あまりにも複雑すぎた。ショットの連続性が無くなってしまうと私は考え、車の旋回を無くし、木の後ろに回り込ませてから飛んで戻ってくるようにしたんだ。”

デロリアンの後ろからマウント用の支持棒が出ている。おそらくPart2の撮影時。奥にはピーター・ドールトン。

”トラックを全て使い切り、装置のメモリーも全て使い切って撮影する必要があった。機材の性能ぎりぎり限界に引き延ばしてデロリアンを奥に飛ばした。そして車は戻ってきて、最後にはカメラに激突するかのように向かってくる。”

カリフォルニア州アルレタ(Arleta, California)

”背景はカリフォルニアのアルレタで撮影された。台風の過ぎ去ったあとの風が強い日で、LAは快晴になってくれてラッキーだった。空がとても明るく、おかげでデロリアンが後ろに回る木を切り抜きやすかった。車が戻ってくる時は実物の要素から切り抜いているが、車が奥へ行く時はアニメーション部門のバーバラ・ブレンナン(Barbara Brennan)が手掛けたアーティキュレート・マットが使われている。木の下に入る時は我々が切り抜いたマット、木の後ろから出で来る時のも我々のマットだ、しかし作り方が違う。僕らは前景の葉っぱをマットで切り抜いている、明るい空に対してとても暗い葉っぱだ、なぜなら車がこの葉っぱの後ろを通る瞬間があるからだ。

オプチカル・プリンターの光学合成で使われるマット素材(Matte)。日本ではマスクと呼ばれているらしい。

このラストには沢山のアニメーション・エフェクトが詰め込まれていて、車がタイムトラベルし出したらーバン!ー真っ白の画面になる。ジャック・モンゴヴィアン(Jack Mongovian)が地面に落ちる影のアニメーションをつけてくれた、とてもいい出来だよ。”

”映画の最後、ゼメキス監督は車が方向転換する時に、ウインカーをつけると面白くなると言った。誰が気づいてくれたかわからないけど、ちゃんとウインカーが点滅してるんだ――小さいのがチカチカしている。これは撮影時には無かったので、アニメーションで後から描き足したんだ。”

実はチカチカしているウインカー

”車が初めて離陸するとき、一瞬高速で液体窒素蒸気が噴射する映像を重ね、蒸気がが道路の上に漂っているように見せた。そしてそれを素早く吹き飛ばすと、まるでデロリアンが飛び去るのにあわせて吹き飛んだように見える。中々撮影の難しいショットで、道路のパースペクティブに合わせて煙を撮影するのが難しかった。”

画面下の白い煙が液体窒素蒸気だと思われる

通常このような精巧なエフェクトが作られるとき、時間が最大の敵となります。

”あのショットで僕らがどれだけ期限に追い込まれていたか言葉にできない”とローストンは言います。”彼らはフィルムを持っていくために僕らのラボに待機していて、それからフィルムをプリントしたんだ。だけどショットの中に入っていないものがある、誰も気づかなかったが、それはデロリアンに落ちるはずの木の影だ。最初はみんな車の後部を見ている。色んなものが動いているからね。だけど車が奥に行くとデロリアンに木の影を落としたいと思わせる間があるんだ。僕らは影を付けるのに必要な素材は全部持ってるのに、それを付ける時間が無かった。もし後2日あればできたんだけど、もし影がついてても誰も違いに気づかないから一緒かもしれないね。監督が望んでいたのは、ギャグを第一に観客へ届ける事だったから、ご覧の通りこのシーンより前に実質的に映画は終わっているんだ。”

2024.9.29


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