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木を材料として流通させるということ 木材乾燥の役割
ウッドショックがやって来た。それっ!国産材の時代の到来だ! とはいかないらしい。。。
木は生物材料である。金属やプラスティックスといった他の材料のように流通させるのは容易でない。
森は木材の在庫とはならない。なぜなら、注文が押し寄せても、樹を伐って、木を製材し、水を抜かなければ(乾燥させなければ)、すぐにカビが生えたり、腐ったり、割れたり、狂ったりして、材料にならないからである。製材所は24時間365日フル操業できたとしても、わが国には、需要に応えるだけの十分な乾燥設備がない。
樹を伐った時の木の含水率は、広葉樹で60-80%、スギでは100%を超える場合が多い。これを含水率8-15%程度に乾かさなければ木材にならない。熱を与えて急激に乾燥させると、木材は割れたり捻れたりして使い物にならないから厄介だ。木は時間をかけてじっくり乾燥させなければ材料にならないのである。天然乾燥するには広い敷地が必要だし、乾燥設備は高価ですぐに数を増やせるものではない。乾燥の熱源には重油ボイラなど二酸化炭素を排出するといった課題がある。
広葉樹の樹形の話をしている(広葉樹のまちづくり、森と水とCO2と人の暮らしを繋げる)が、今日も、葉=森の木々、枝=伐出や製材、幹=木材乾燥、根=人の暮らし(需要)に例えると、CO2からの光合成産物=糖は、葉から幹を通って根に流れデンプンとして貯留されるが、CO2は木材という形で人の暮らしに貯留されている。「木材乾燥」は森と人との暮らしを繋ぐ根幹であることが見えてくる。律速要因 世界のユーカリ物語(5)で書いたように、乾燥が木を材料として流通させることのボトルネックになっている。
天然乾燥を省略し、安価な設備で地域の熱源を利用した木材乾燥を中山間地域に普及させることが出来れば、わが国にはウッドショックに対抗する国産材利用の時代を築くことが出来るであろう。
木という生物材料を広葉樹の樹形のように人の暮らしに太く流通させることが出来るとき、日本は脱炭素社会に近づけるに違いない。