新しい Human Interface Guidelines (HIG) for visionOS
Appleが発表したVision Pro用のHuman Interface Guidelines(HIG)は、従来のiOSやmacOS向けのガイドラインとは大きく異なります。Vision Proが提供する没入感のある空間コンピューティング環境では、ユーザー体験(UX)やインターフェースデザイン(UI)の設計に新たな考慮点が必要です。
1. 空間的レイアウトの重要性
Vision Proでは、UI要素が2Dの画面上ではなく、物理的な空間内に配置されます。ユーザーの目線や体の動きに自然に追従し、直感的に操作できるよう配置する必要があります。iOSとは異なり、視線追跡やジェスチャー操作が主要なインターフェースとなるため、フォーカスの取り扱いが非常に重要です。特に以下の点に注意が必要です:
視線の自然さ:UI要素は視線の正面付近に配置することで、ユーザーが無理なく操作できるようにする。
空間の階層:奥行きの概念を活用し、重要度に応じて要素を配置。
余白と可視性:隣接するUI要素が重ならないよう適切な間隔を確保。例えば、ボタンどうしが違いとフォーカスしている要素の誤認識が起きてしまいます。
2. フォーカスの取り扱い
VisionOSでは、ユーザーが視線やジェスチャーを通じて要素を選択・操作します。そのため、フォーカスの取り扱いが非常に重要です。
視線追跡:ユーザーの視線が自然にフォーカス対象に向くようデザイン。
アクティブ状態の明示:フォーカスされている要素は、視覚的な変化やアニメーションを通じて明確に区別する。
誤操作の防止:意図しないフォーカス切り替えが起きないよう、UI要素の配置を工夫。
3. UI要素の大きさと操作性
空間UIでは、従来のタップ操作ではなく、視線・ハンドジェスチャー・音声など複数の入力方法が考慮されます。
適切なサイズ:UI要素は視線や手の動きで簡単に操作できる大きさにする。
インタラクティブな応答:ボタンやスライダーなどの要素は、操作時に視覚的・触覚的フィードバックを提供。
ホバーステート:視線が要素に近づいた際に、操作可能であることを明示。
ホバーステートとは、ユーザーが視線やポインタをUI要素に近づけた際に、その要素が操作可能であることを示す視覚的フィードバックのことです。例えば、ボタンが光ったり、枠線が強調されたりすることで、ユーザーに「次のアクションが可能である」と知らせます。視線操作が主流のVision Proでは、このフィードバックが特に重要です。ユーザーが迷わず直感的に操作を続けられるよう、ホバーステートは明確かつ自然に設計される必要があります。
4. ユーザー疲労の軽減
Vision Proは長時間の使用を想定しています。そのため、UI/UXデザインにはユーザーの身体的・精神的疲労を軽減する工夫が求められます。iOS HIGでは主に画面上の操作に焦点を当てていますが、visionOSでは以下の点が強調されています
軽快な操作感:最小限の動きで最大限の効果を得られる設計。
視覚的負荷の軽減:過剰な情報表示を避け、必要な情報に絞り込む。
定期的な休息を促すUI:適切なタイミングで休息を提案するデザインも重要。
5. アクセシビリティへの配慮
Vision Proは多様なユーザーを想定して設計されています。そのため、アクセシビリティへの配慮も不可欠です。
音声コマンドの活用:視線や手の動きが困難なユーザーでも操作できるよう、音声入力を有効に活用。
カスタマイズ性:UI要素のサイズや配置をユーザーがカスタマイズできるよう設計。
視覚サポート:視覚障害者向けのサポート機能(例:音声読み上げ)を統合。
まとめ
VisionOS向けHuman Interface Guidelines(HIG)は、これまでのデバイス向けのガイドラインとは異なるアプローチが求められます。空間的レイアウト、視線フォーカス、UI要素の大きさ、ユーザー疲労の軽減、アクセシビリティなど、多くの新たな考慮点が含まれています。
デベロッパーやデザイナーは、これらのポイントを意識し、Vision Proならではの没入感あるユーザー体験を提供することが求められます。
今後もAppleからのアップデートに注目しつつ、より優れた空間コンピューティング体験を追求していきましょう。