どうしてアレクサはお話しできるの?

4歳児に「どうしてアレクサはお話しできるの?」と質問されました。

「アレクサは、見えない線でつながっている頭みたいなものが他にあって、こうして話す言葉をよく聞いて、その意味を頭で考えてるんだよ。パパたちが『おはなしして』って言うと、頭で考えて、『じゃあ、こんな話どう?』って教えてくれるんだ。だから、アレクサは本当の人じゃないけど、言葉を覚えてお話しできるんだよ。」という一応の回答をしました。

この質問は、音声認識や自然言語処理の仕組みを聞いているようにも解釈できますが、今回はAlexaに質問してから回答を得るまでの処理の流れを聞いているものという理解で、もう少し深掘りして説明したいと思います。

Alexaが会話できる仕組み

Alexaが会話できる仕組みは、音声認識(ASR: Automatic Speech Recognition)、自然言語処理(NLP: Natural Language Processing)、そしてクラウドベースのインフラを組み合わせた技術で構成されています。

このプロセスは、ユーザーがAlexaに話しかけた瞬間から始まります。まず、Alexaデバイスに内蔵された高感度マイクが、音声をキャプチャし、アナログ信号をデジタルデータにローカルで変換します。「Alexa」というウェイクワードが認識されるまでは、音声はデバイス内でバッファされます。ウェイクワードが検出された時点で、データは次のステップに進みます。

フェイクワードが認識されるとバッファーされたデジタルデータが、インターネットを介してクラウドサーバーに送信され、そこで複数のプロセスを通して解釈されます。

東京の場合、東京リージョン(ap-northeast-1)のデータセンターで処理されるはずなので、東京周辺のデータセンターに送信されます。千葉や神奈川、埼玉などに配置されていると仮定すると、片道概ね数十キロメートル程度離れた場所に転送されます。仮に東京のデータセンターで処理が行われない場合、最も近いAWSの他のリージョンとしては、韓国のソウルリージョン(ap-northeast-2)やシンガポールリージョン(ap-southeast-1)が考えられます。韓国やシンガポールで処理される場合、数百キロメートルから数千キロメートルの距離を移動することになります。

最初のプロセスは音声認識です。クラウド上にある音声認識エンジン(ASR)は、送られてきた音声データを解析し、人間が発した言葉をテキストに変換します。この段階では、Alexaはまだ音声が何を意味しているのか理解していません。音声を文字に変換することで、次のステップで意味を解釈する準備が整います。

次に行われるのが、自然言語処理(NLP)の一部である自然言語理解(NLU: Natural Language Understanding)です。このプロセスでは、変換されたテキストデータが解析され、その内容が理解されます。

たとえば、「Alexa、今日の天気は?」というリクエストが送られると、NLUは「天気」というキーワードに注目し、ユーザーが天気予報を求めていることを理解します。また、NLUはコンテキストや意図を解析するために、文脈や過去のユーザーとのやり取りを参考にすることもできます。

リクエストが理解されると、バックエンドシステムが適切な応答やアクションを生成します。この応答は、AmazonのクラウドサービスであるAWS(Amazon Web Services)上で実行されるスキル(アプリケーションのようなもの)や、デフォルトのダイアログ管理システムを通じて処理されます。天気予報の場合、Alexaはクラウド上の気象データベースにアクセスして、現在の場所の天気情報を取得します。

最後に、取得したデータや生成された応答は、テキストから音声への変換(TTS: Text-to-Speech)を行うシステムを介して、自然な音声としてユーザーに返されます。この音声合成技術は、Alexaがあたかも人間のように話しているかのように感じさせるために不可欠です。音声のトーンやイントネーションは、より自然で人間らしい対話を実現するためにチューニングされています。

これらのプロセスはすべて非常に短時間で実行されており、ユーザーにとってはリアルタイムでの会話のように感じられます。往復の遅延は非常に短く、数百ミリ秒程度で完了するためです。(しかし、この間でデータは最低でも50kmは往復しているはずなのです!)

これが、Alexaが話しをするときの仕組みです。つまり、Alexaは、ローカルの音声認識の後で、クラウド上で高速に音声認識や自然言語処理のデータを処理し、リアルタイムで人間のように応答しているのです。

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