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小さな守り手

 重たい扉が勝手に閉まった。蔵の中は真っ暗で、空気は随分とこもっている。土の匂い。
 手探りで進むと、すぐに脛に何かぶつかった。
 つんざくような笑い声が響く。闇がざわめく。打った脛が痛い。涙目で、なお進む。
「あった!」
 土埃でざらりとした木箱だ。目が慣れて、どうにか見える。蓋を開けると、どろんと雲が飛び出した。騎馬武者と雛人形たちが走り出る。掌に収まる大きさだが、皆、勇ましくこちらを取り囲み、見えない何かから守ってくれるようだ。
 急に、蔵の扉が開く。
「大丈夫か」
 助けが来た。雛人形を着物の裾にぶら下げている。雛飾りを出すだけでひどい目にあったが、雛人形とは仲良くなった。

これも怪異?心身ともにちょっと涙目。
第五十一回のお題「涙」#Twitter300字ss @Tw300ss

雛飾りを出すために入った蔵で、何かに絡まれる話でした。

登場人物は、第7回300字SSポストカードラリーに参加しているお話の人です。https://plag.me/p/textrevo08/6416

#小説 #掌編 #ファンタジー #300字SS

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