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Sensory Percussionってなに?これまでにない可能性を秘めた革命的な楽器

 近年SNS上で特にアメリカ人ドラマーの投稿で目にする機会も増えてきたドラムトリガー、気になってる人も多いんではないでしょうか。

そのプリセットの不思議な音色や、実際のドラムプレイの強弱叩く場所に反応して音が変化する様に「どういう仕組みなの?」と思ったドラマー、あるいはドラムまたは楽器自体をやらない人は「どういうところが面白いの?」と思った方もいるかもしれません。

そこで今回はこの楽器の魅力を紐解いていきたいと思います。

ドラムトリガーとは

 まずいきなりトリガーと言われてもそもそも知らないって方もいると思うので簡単に説明したいと思います。

ドラムトリガー又はトリガーとは、ドラムに付けてある

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この黒い爪みたいなやつです。あ、黒とは限りませんよ。
トリガーそのものは大手ではRolandとかYAMAHAから結構昔から出てます。

この機械でドラムの振動を拾って信号に変え送って電子音を鳴らしたりします。要するにエレクトリックドラムの一種です。生ドラムをエレドラに出来ちゃいますよってやつですね。

Sensory Percussion

 米国ニューヨークのSUNHOUSE社からリリースされているこのSensory Percussion(センサリーパーカッション)。
以前からあるトリガーとまず決定的にどこが違うかというとその検出数です。

一般なドラムトリガーは、実際の生ドラムの(ヘッド)を叩いたか、金属の(リム)を叩いたかの2種類を検知し分けられるものが多いです。
これでも当初、叩いたか叩いてないかの1種類しか検出しなかった頃を思うとすげぇってなりました笑

ちなみにトリガーは音の強弱を検知できるものは少ないかと思います。
有名な用途としてはヘビメタのツーバスでドコドコ踏む時に音色を安定させるためバスドラにトリガーを付けて、機械からのバスドラ音を生の音に重ねて出すことで安定させるのがスタンダードになってます。強弱とか逆に要らないわけですね。


 で、Sensory Percussionはというと10種類検出します。そして強弱も検出します。

ちょっとドラムをやる人にしか分からないかもですが一応書き出してみると、
center (ヘッドの中央)
edge (ヘッドの端)
rimshot center (中央でリムショット)
rimshot edge (端でリムショット)
cross stick (クローズドリムショット)
stickshot (ヘッドに当てたスティックを叩く)
damped (ヘッドを手でミュートして叩く)
rim tip (リムをスティックの先で叩く)
rim shoulder (リムをスティックの太い所で叩く)
shell (ドラムの胴体、側面)

この10種類を認識してくれます。
トリガーでなくて一般的なエレドラでもここまで細分化して検出するものはおそらく無いかと思います。

実際の操作画面↓

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そしてここからが凄いんですが、この10種類の部位それぞれの中間を作れます。

例えば打面の中央から端に叩く場所を段々変えていくに従って、音も少しずつ中央の音色から端の音色に変わっていくようにできます。

これって限りなく生ドラムに近づいていませんか?

更にはこの動作を音色が変わる以外に設定するとこもできます。

これまでと何が違うか

 先ほど紹介した例で言うと、打面中央から端に向かって音色が少しずつ変化していく設定をしていました。
これを音程が下がるという設定にすれば、中央で叩いたときは元の音で端に行くほどその音程が下がっていくという形にできます。そしてその音程の変化をどの程度まで下げるか、更には段々と下がっていく段階を好きな音階に設定するとこもできます。

この設定は音程の上下だけではなくて、様々なエフェクターのかかり具合に置き換えることも可能です。

そして叩く部位の違いだけではなく、叩く強さ連打する速さでも同様の変化を設定することができます。

例えば強く叩くほどエコーがかかるようになり、速く連打するほど低音が削られていくといった設定ができたりします。

更に発展した複雑な設定も可能で、
(ここは専門的な用語連発になっちゃいますが、基本的に好きなサンプリングを持ってきて使えたり、プリセットで使われている音色は細かく別個で使える様になっている、設定数に制限がない、キットのスイッチャーや再生停止、MIDIとしての出入などもいずれかの部位に設定できるなど大抵思い付くことは全部ソフトウェア内でできます。)
とりあえずかなりアドバンスなことまで内蔵されているってことです。

これを普通のドラムに装着して演奏するのももちろん色んな可能性がありますし、最近各メーカーから発売されているメッシュヘッドを装着して生ドラムの音は聞こえない状態でSensory Percussionからの音だけを出すこともできます。

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インスタでSUNHOUSE社のアカウント(sunhouseinc)を見てみたり#sensorypercussionで検索すると面白い使い方がたくさん見つかるかと思います。

何が言いたいかというと、この楽器はドラマーたちへの今までにない可能性を秘めていて、これまで電子化する音楽界でドラムだけがこういった分野に乏しかったんです。

エレキ進出に出遅れていたドラム

 エレクトリックギターが登場してエフェクターを多用したり配線にこだわったり、アンプから音が出ていて本体が鳴っていないことに違和感を抱く人はもうほとんどいないんじゃないでしょうか。

ピアノやベースも同じことで、確かにグランドピアノとエレクトリックピアノやシンセサイザー、ウッドベースとエレクトリックベースでは弾き心地も発音も別物ですが、
今となってはそういうものとして定着して、エレキ専門の道を極めた人が当然のようにいれば両刀使いもたくさんいます。

管楽器や弦楽器は今回含めず、バンドと聞いて思い浮かぶ楽器の中でドラムだけがこういった発展の流れに乗れずにいました。
多分生音がどデカいので特に問題なかったんでしょう(笑)

しかし音楽が進化するタイミングは新しい楽器の登場がきっかけだったりもして、ジャズの誕生当時はドラムセットは新しい楽器だったわけですし、エレキギターとロック、エレキベースとジャコパストリアスが残した影響など、
音楽史の転機で新しい楽器の達人がその後の音楽に与えてる影響って大きいですよね。

一方ドラムはというと、まずホントうるさいから家では静かにできるようになろうねってことでエレドラが発展したり、パッド(ゴム板、C-C-Bって言うと皆んなあぁアレねってなる)もどんどん最小化して最近では目がちかちかする小さなボタンが沢山並んだやつになったりと前述のギターヒーローたちとは少し路線の違う進化を遂げているのでした。

出音も生ドラムをどこまでも意識したものか、あるいは打ち込みで使う電子音を人力で鳴らそうという使い方で、後者は生のドラムセットにパッドを取り込んで効果的に使うのが近年再ブームになってるように思います。

その楽器のヒーローが出てくるか、もっと言うと楽器か楽器じゃないかのラインって難しいかどうかだと思うんです。極めがいがあるかどうか。

指でポンってスイッチを押したら音楽が再生される機械が置いてあって、僕はこれのプロ奏者ですって言われてもピンと来ないですよね?
それはDJ(チュクチュン回さない方の)とか音楽チョイス神みたいな方にベクトルが向いて行って、単純な楽器奏者としてのそれとはまた違った素晴らしさです。

高校生の時、神保彰さんのワンマンオーケストラの完コピをやっていた僕は「ドラムももっとギターみたいな進化しないかなぁ…」と内心思っていたのでした。
そして数年後インスタでたまたま見かけたのがこの動画でした。

以前からファンだったマーカス・ギルモアのソロでした。
見た瞬間「やられたー!」でした(笑)
まず何より音楽がカッコ良いです。

最後に

 長文になりましたが最後まで読んでいただけた方ありがとうございました。
今回このnoteでSensory Percussionの面白さと可能性をご紹介出来たんじゃないかと思います。

 今後は実際に僕自身でどう使っていくか、ソロもですが、バンドとのアンサンブルの中にどう落とし込んでいくか、生ドラムに付けて使ったらメッシュヘッドにしたら又はその混合か、など色々と実践編を見せていけれたらなと思っています。

それではまた。

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