八花鏡
日曜のお昼間に、芍薬の花びらが、どさりと音を立てて台座の上に散りました。
こんなに纏まって落ちるなんて、先刻触れたのが原因かしら。あたくし、誰にも分からないように撫でたり捲ったり突いたりしていたのです。芍薬の雄蕊が好きなのに、それがすっかり見える頃には、花は終わり間近だなんて寂しい。
不吉な解釈を好まない臆病さから、家族に見つかって仕舞わぬ様さっと片付けましたが、従姉妹の四花子さんにだけは、お茶の席でお話ししました。
「あ・・現実のお話しなのね。ご免なさい、淫靡なお話が始まるのかと期待していたわ。ね、百合葉さん。花びらの音だなんて、中々聴けないわ。片付けの煩わしさを上回る幸運ね」
あたくし、やっぱり四花子さんを好き。
「ねえ百合葉さん。八花鏡を見に行かない?」
「八掛鏡(はっけきょう)?」
「八花鏡(はっかきょう)よ。双鳳瑞花紋八花鏡(そうほうずいかもんはっかきょう)なんて貴女に似合いそうね」
自分の印象と重なるものを教えられることは、三面鏡を覗き込むより面白いわ。
愉しみをとっておくために下調べはせず、雅やかな響きに浮かれておりました。
私たちは古代鏡展示館へ。
見つけたわ、双鳳瑞花紋八花鏡。
解説を覗き込みます。
思想的背景が希薄ですって。
笑ってしまいました。
そういえば似た様なこと、どなたかに言われたわね。
イデオロギーがない、だったかしら・・・。
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Yuriha's Secret Diary
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