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短編小説『やがて壱になる』

 山手線は相変わらずやかましかった。誰も彼もが大声でべらべら話していて、悟が迷惑していることに気づきもしない。まるで耳の入り口から奥の方まで、空気が圧縮されて詰め込まれているようだ。鳴りやまぬ騒音のせいでこめかみが痛んでいた。吐き気だってする。それでも悟は膝に乗せたノイズキャンセリング付きのヘッドホンを使わぬよう、震える指で握りしめていた。

 一件きりしかアドレスが登録されていないスマホが震えたのは十九時のことだ。それが鳴る時はスクランブル――アーサーさんが悟を使う時と決まっていた。送られてきた短いメッセージに目を通してから悟は急いで山手線に飛び乗り、それからほぼ二周分を電車に揺られながら過ごしていた。

 俯いて通路を見つめ続ける悟を気にしたふうもなく、乗客は乗ってきたり降りていったりを続けている。また列車が停まった。勤め人風の男女が降りていき、顔ぶれは違ってもほとんど内実も行動も変わらない男女が乗り込んでくる。悟の正面にやって来て両手を網棚の枠にかけた男が言った。

(ちっ、ガキが。中学生か? 大人に席譲ろうとか思わねえのかよ)

 ちらりと目を上げると五十代と見える禿頭が見えた。その下についている垂れ目はまっすぐに悟を見つめている。さらに下の唇はといえば、これはへの字になっていた。

(なんだ。その反抗的な目は)

 男が言ったので悟はすぐに通路へ目を落とした。いや、正しくは男が言ったのではなかった。男の唇はあくまで不満そうに曲げられているきりだ。言ったのは通路に落ちる男自身の影だった。通路に落ちる影がそのうすねずみ色のそこかしこに唇を生じさせて一連の言葉を吐き出したのだ。

(どいつもこいつも俺をなんだと思ってんだ)

 罵声を吐き出し続けている影から悟は目を逸らし、男の隣に立っている若い女の二人連れ――その影を見た。このふたりも影のそこここに唇を生じさせて、お互いについて論評している。どうやら、互いに互いを格下だと見ているらしかった。

 それだけではない。狭い車内にすし詰めになった人々、彼らが落とす影すべてに唇がついていてぱくぱくと好き勝手に言葉を吐き散らしている。影の持ち主は皆、口を閉じて他人の迷惑にならぬようと大人らしく振る舞っているが、影の方が言うことときたら、てんで勝手ででたらめである。

 そのうるささときたら、今すぐにでも列車から降りたいくらいであったが、それでも悟はシートに腰掛けて影の声に耳を傾けることを己に強いていた。探しているのは悪いやつだ。殺しても構わないような、誰かを傷つけて笑ってられるような、人間のクズだ。

(ったく、なによ。な~にがタシにしてくれ、よ!)

 不意にそんな声が聞こえてきた。怒りをありありと音に滲ませた、女の声だ。

(馬鹿にしてんじゃねえよ。百万ぽっちでなにができるって言うの。金だけが取り柄のくせに、そうよ、良識ぶりやがって。鼻息荒いあしながおじさんがどこの世界にいんのよ!)

 狭い車内には男女がぎゅうぎゅうに身を寄せ合っている。そんな状況で、重なり合った影の中から声の主を探すのは実に骨が折れる作業だ。なにしろ、聞こえるのはその女声だけではない。家庭への不満からこの後の予定から、年代も性別もバラバラな大声がまるで混声合唱かのように巨大な音のうねりとなって耳から体の芯まで震わせている。その中からたったひとつの声、その主を見つけ出すのは並大抵のことではなかった。

(ふん! せいぜい巻き上げて捨ててやるんだから! これ以上は絶対触らせねえからな! 有り金全部吐き出せ! そんで死ね! キモいんだよ、クソオヤジ!)

 声が聞こえる方をなんとか探り当てて悟は席を立った。先ほどの男が――正確にはその影が途端に歓声をあげる。体を捻りこむようにして突っ込んでくる男をかわしながら、悟は手刀を切った。

「すみません。通してください。すみません」

 悟が言うたびに影たちはいったん言葉を吐き出すのをやめる。ほとんど同時にその主が迷惑そうな顔をして、悟が通り過ぎるなり、今度は影がたった今強引に通っていった少年について非難の声をあげた。

(あーあ。次はなんて言お。父親の治療費がっての、これ以上言ったら変かな。でもなー。ほかの言い訳考えるのダルいし。病気が重くなったとか? いやでも、お見舞いに行くとか言いだしたらなー。そっちのがダルいかなー)

 優先席前のつり革にその女はつかまっていた。白いシャツにオーバーサイズのニットを合わせた女だ。顎下までの茶色の髪の先端を――なんという髪型か悟は知らなかったが、くるりと内側に丸めていて、ニットの肩と髪の内側から甘い匂いを漂わせている。

 女は近づいてきた悟には気付かない。すらりと背を伸ばして立っていて、その体だけ見たのでは誰かを口汚く罵っているなどとはとても想像が付かなかった。

 悟は女が見える位置を陣取って――手が届くところにつり革も手すりもなかったので両足を踏ん張って列車の揺れをこらえながら――左右の降車口上にあるモニターを見た。女が乗ってきたところを見なかったので、彼女がどこまで行くのかわからない。もう一周することになるだろうか。そう考えながらしばらく揺られていると、駅を四つやり過ごしたところで女に動きが見えた。肩から斜めにかけた黒いバッグの位置を確認するようにしてから降車口を気にする仕草をし、そこで悟と目が合った。

(次の連絡、いつ来るかなー。父親が入院中で大変って言っちゃったし。遠慮とかされたらどうしよ。あーめんどくせー。早いとこ来るといいんだけど)

 女はそれを偶然と思ったらしく、そんなことをがなる影を足元にわだかまらせながらつり革にぶら下がった。悟はほっと胸を撫で下ろし、次にどちらの扉が開くのかを確認してから、また女を見張る作業に戻った。

 ほどなくして停車した駅でやはり女は降りるようだった。影の荒い口調と異なり、本人の仕草は楚々として控えめである。降車に手間取る老人に先を譲る気遣いさえ見せて、その出来事は悟の心をチクリと刺した。

 痛みを訴える心をねじ伏せ、悟は女の後について駅へ降りた。もう迷っている時間はなかった。スクランブルが送られてきてから――スマホを確認してみると、二時間半が経過していた。アーサーさんは待ちくたびれているに違いない。

「すみません」と悟がかけた声に女は最初気付かなかったようだった。エスカレーターに並ぶ列に横から入ろうとして、初老の男から体で防がれたことに悪態をついている――もちろん、影の方がだ。

「すみません、お姉さん。ちょっと良いですか」

 照明の位置を確認しながら悟は声を張った。列に並ぶ人のうち何人かが振り返る。その顔の中に女のものもあったので、悟は手招きをした。

「そうそう、お姉さんです。ニットを着たお姉さん。ちょっとすみません」

 女は自信の鼻先を指差して確認してから怪訝そうな顔をした。

「えっと、私ですか?」

 警戒する足取りで、それでも女は悟の方へ近寄ってきた。悟は目を上げてもう一度照明の位置を確認し、それから足元に伸びる自身の影――こちらは口のひとつも見えない。絵に描いたような普通の影だ――を見てから答えた。

「落とし物です。さっき電車の中で」

 そう言って悟はポケットからハンカチを取り出した。コンビニで調達した、何の変哲もないものである。女はちらりとその無地白を確かめるように目を落として答えた。

「私のじゃないと思いますけど」
「ええ? でも、あなたのカバンから落ちるのを見たんですけど」

(クソオヤジのかな? プレゼント? いやだったらなんかで包むっしょ。じゃあなに、気付かない間に入れられてたとか? うっそ。ヤダ。盗聴器とか付いてたらどうしよ)

 女が疑わしそうに首を捻っている足元では、その影が矢継ぎ早に叫んでいる。悟は素早く一歩を踏み出してその影に自分の影を重ねた。

「お姉さん。援交かなにかしてますよね?」

 途端に女は目をぽかんと見開いた。前後してその顎が落ちる。ピンク色に塗られた唇がだらしなく開いていくとともに、大きかった瞳孔が針で突いたような点になって細かく左右に揺れ始めた。

「聞こえてますよね。お姉さんは援交とかパパ活とか、他になんて言うのかな、とにかく男の人を騙してますよね? それでお金を巻き上げてる。そうですよね?」

 ピンク色の唇が開いたまま震えて「ち」とただ一言言った。

「百万円も貰ったんですよね? 騙したお金でどうするんですか? 美味しいもの食べるんですか? それとも欲しいもの買うんですか? いいなあ。その百万、俺にくれませんか」
「ち、ちが、ちがう。ちがうぅぅううう」
「違いませんよね。俺、ちゃんと聞いてましたよ。お父さんの治療費にって百万もくれた親切な人を、お姉さんたらひどい言い方してましたよね」
「ちがう。ちがちが、ちがうのお。ちがうちがががが」
「だから、違いませんよねって。大丈夫ですよ。俺、警察とかじゃないんで。安心してください。そんで、安心したら百万出して。ほら」

 悟が差しだした手を、女はぶるぶると顔面を震わせながら見つめていた。口は相変わらず否定の言葉を唱えている。しかし、体が裏切った。女の手が震えながら上がってバッグから茶封筒を取り出すと悟に渡してきたのである。

「ありがとう。じゃあ、行きましょうか。もう一度電車に乗ってください」

 女の口はとうとう諦めたらしかった。声を出すことをやめると、またぽかんと馬鹿のように開く。女の体はおもむろに振り返ると左右に揺れながら歩きだした。乗車位置まで歩いていってその真ん中で立ち止まる。待機位置で待っていたサラリーマン風の男が女を睨んだ。しかし、女は左右に揺れながら立っているばかりだ。その姿を見届けて、悟はふうと息を吐いた。

   * * *

 女を『操縦』しながら悟は飲み屋街を歩いていった。九時をまわった駅近の街はなおも元気だ。独りで歩いている女の数こそ減ってはきていたが、男女の集団や女同士、男同士の酔っ払いなら右を見ても左を見てもすぐにみつけることができた。

「課長!」(クソ野郎が)「もう一軒行きましょうよ」(もう帰りてえよ。でも、誘わねえと明日キレられるし)

「あらあら、元気だこと」(どうせ私の財布目当てでしょ。でも)「仕方ないわねえ。もう一軒行っちゃいますか!」(家には帰りたくない)

「お姉さんたち」(良いムネぷるぷるさせちゃって)「ウチどうっすか」(あーあ、仕事じゃなかったらなあ)「お安くしときますんで。ね? ね?」(襲いてえ。ああ、襲いてえなあ)

 飲み屋街は夜闇を突き上げるほどの声で満ちている。男も女も影たちも大口を開けては喋りまくり、その開けっぴろげな様子といったらある種の祭りのようであった。誰もが理性をなくしていて、それでも最後の最後でその手綱を握りしめている。

 こういった風景を見るにつけ、悟は酒とそれを呷る人々自身について考えてしまう。酒なんて危うい綱渡りを楽しいと誤認させる毒にほかならない。だというのに、大人たちは望んでそれを飲むし、飲めないとなると暴れ出してしまう大人すらいる。悟の母は後者だった。そんな母を父は病院に連れて行き、なんとかいうプログラムを受けさせることにした。けれども母は酒から離れられなかった。プログラムに行っては真人間になると宣言して酒を捨てる、そうして数日間は普通のお母さんになり、しかし結局はコンビニに駆け込んで震える手でカップ酒を呷る。その繰り返しに耐えかねて父は――。

 街灯の放つ十字の光が目を刺して、悟はハッと我に返った。いつの間に飲み屋街を抜けたのだろう。すっかり暗闇に呑み込まれた通りの左右には、アパートと古くからある一戸建てがずらりと並んでいる。等間隔に点る光に照らされた女の影が後ろから前、後ろから前と着実に円弧を描いて、しかしいまだに悟の影響下にある証拠としてふらふらと左右に揺れ動いていた。

「そこの角を右に曲がって。直進したら次の角を右。まっすぐ行ったら階段があるんで、それを降りてください」

 危うく行きすぎるところだったことに慌てながら悟は軌道修正を試みた。本来なら飲み屋街を出てすぐを右手に曲がって坂を下っていくところを、まっすぐ坂を登ってきてしまった。あまり詳しい場所でもないのでスマホを取り出してナビゲーションを立ち上げる。

 言ったとおりに歩いていく女の後を歩きながらだったので、悟はすぐには気づけなかった。

 どっと鈍い音がして、驚いて目を上げると黒く大きなものが逆しまに落ちてくるところだった。次いでなにかが倒れる音がする。呆然としてしまった悟が黒いものが横切った夜空を見上げている間に布の破れる鈍い悲鳴が聞こえた。

「今日はずいぶんのんびりだったねえ」

 黒いものが密やかな声でそう言った。それは女を真上から押し倒したと見えて、干からびたカエルのように潰れた肢体の上に文字通り覆い被さっていた。コールタールというものを悟は見たことがないが、本の描写を見るにきっとこういうものなんだろう。その黒は歪んだ体に平たくねっとりとまとわりつき、尋常の物質ではない証拠に意志を持って女の手足を押さえ込んでいた。

「アーサーさん。遅れて申し訳ありません」

 悟が言うと、黒の中央がぐうっと盛り上がって瞬きのうちに白い人間の上半身を形取った。

「いいよ。こうして会えたから。心配したんだよ。あんまり遅いから。なにかあったんじゃないかって」

「その」と悟が口ごるとアーサーは歌うように言った。

「いいってば。考えてのことなんだろう。君なりにね。僕は僕の猟犬を信用してる。だから、言い訳なんておよし。耳を塞いであっちへ行っておいでよ」

 平たく粘る黒がさらに盛り上がり、人間の下半身を形作る。素裸のそれに黒が薄く這いあがって衣服を形成していくのをぼんやりと悟は見守ってしまい、黒がシャツやズボンやコートになってそれぞれ白や濃紺や茶色の色をまとうのを待ってから立ち上がったアーサーに軽く指を振られて慌てて頭を下げた。

「すみません。失礼します」

 そっと顔を上げて伺ってみると、アーサーは微笑んでいるようだった。金色の髪に色素の薄い肌、服の上からでもわかる隆起した筋肉の流れは美しく、いつも悟を魅了する。血のように赤い唇が上機嫌な弧を描くに至っては嬉しくてたまらなくなる。たまらなく、なってしまう。

「少しだけ待っててね」

 アーサーは笑って右手を振った。左手は女の頸を鷲づかみにして軽々と引き上げている。その左手をさらに持ち上げてニットのずり落ちた肩を眼前に持ってくると、彼はおもむろにそこに噛みついた。

 自身だって唐揚げや焼き肉を食うくせに、悟はいつだってその光景を怖いと感じる。皮膚を牙が刺し穿ち、がっちりと閉じた顎が力に任せて肉を引きちぎるその音は、何度聞いても自分が大型獣に襲われているその瞬間を見るような心地がした。骨が砕ける案外に心許ない音。筋繊維がバラバラに千切れ、脂身が血をまとってこぼれ出る。

 破壊がはらわたに至るその瞬間を見たくなくて、悟は急いでその光景に背を向けた。もと来た道を辿り、通りを渡って家々を数えて、咀嚼の音が絶対に聞こえない場所まで逃げていく。その間にも暖かな光を点す窓から声がこぼれ落ちてくる。そこに暮らす住人たちの何気ない日常の声だ。彼らはひとつ窓や通りを隔てたその場所で、今まさにひとつの命が奪われていっていることなど知りもしない。悟だってもとはそうだった。こんな現実があるなんて思ってもいなかったのだ。

   * * *

 母は酒飲みで父は浮気者だった。けれどもそれは悟のせいだった。

 アーサー曰く、悟のこの力は精神感応というらしい。他人の心だか本音だかを聞いたり操ったりする、いわゆる超能力だ。力は物心ついた時からあって、常に悟について回った。寝ても覚めても力に振り回される、それが悟にとっての普通だった。だから、悟は思い込んでいた。誰もがお互いの心を知り得ていると、その上でにこにこ笑い合っているものだと、そう思って疑わなかったのだ。

 のちにアーサーが与えてくれた本で知ったのだが、超能力者というものは能力を隠して生きるのが普通らしい。全部の本にそう書かれていたわけではない。しかし、超能力者の存在を人間が認識してない世界において、能力を明かした超能力者を待ち受けるのは大抵が悲劇の結末だった。

 だからきっと、悟もそうすべきだったのだ。

 今でも忘れられない、それは幼稚園に上がる前のことだ。悟は両親を上機嫌で見上げていた。とにかく嬉しくて仕方なかった。幼すぎる頃のことだから、どうしてそうだったのかは覚えていない。父が変な顔をして見せたからか、それを見た母が対抗してさらに変な顔をしたからか、とにかく両親ともに笑いながらなにか言っていたことはたしかだ。そして、それに負けないくらい彼らの影も叫んでいた。

(ドウキョ)(ホスト)(カアサンウルサイカラ)(シャッキン)

 誰がなにを叫んでいるのかもわからないくらいの大騒ぎだった。悟はそれすら楽しんでいて、やはりどうしてだかは覚えていないがその声を楽しいものだと思ったのだろう、声の言うままを口に出してしまったのだ。両親の顔が凍り付き、悟はおそらくショックを受けたはずだ。そうでなければこの記憶がこれほど鮮明であるはずがない。

 次に覚えていることは両親が変になったというだ。一切会話をしなくなった父と母は、それでいて相方がいなくなると怒濤のようにその悪口を言い始めた。内容は覚えていない。とにかく相方をあしざまに罵っていたことだけがたしかなことだ。

 その次の記憶では、両親は面と向かって罵り合っていた。その次では強ばった笑顔の両親が、その次では酒を飲む母が、その次では怒鳴る父が、まるで連続しないマンガのコマみたいに脳裏に焼き付いている。

 次に古い記憶は幼稚園での出来事だ。家の中もそれなりにうるさかったが、そこはその比ではなかった。頭が押し潰されそうな音の洪水に耳を塞ぐ悟を両親は叱りつけた。同じくらいの歳の子が不思議そうに悟を見てなにかをその母らしき人に言う、その声さえ聞こえないくらいに園内は騒がしく、悟はついに鼻血を吹いて倒れてしまった。

 以来、記憶のほとんどは家の中で占められている。幼稚園には行かなくて良いことになった。小学校には入学式にだけ顔を出し、そこでも卒倒してしまってやはり行かなくて良いことになった。中学はそもそも行けと言われなかった。

 その間に母は酒に溺れるようになり、父は家の外に快楽を求めるようになった。それもこれも悟が馬鹿だったからだ。常識を知らなかったからだ。周囲の反応から学ぶという人間ならすべからく持つ本能の欠けた、最初から壊れた人間だったからだ。

 悟は言ってしまったのだ。両親それぞれに、それぞれが抱えるものが秘密だとは知らず、全て話してしまった。

 そもそも母が酒に溺れるようになったのは、父が祖父母との同居を密かに進めていることを知ってしまったからだ。母は父方の祖父母とは折り合いが悪く、特に祖母からはいじめられていたらしい。そうと知っていたにもかかわらず父は同居を強行しようとした、それは母にとってまさしく裏切りであった。父が同居話を取り消してなお母は収まらず、父の浮気を知り、父と離婚してからはなお激しく怒りを燃やした。

 父にとって母のホスト通いは青天の霹靂だった。母の言い分では男のキャバクラ通いと同じなのになぜ責められねばならないということだったが、父はそれは浮気だと断じた。かといって法的にどうこうすることはできなかったらしく、己の裏切り行為も重なって父はいったんは呑み込むことにしたらしい。しかし、母はそれで収まらなかったのは前述の通りである。外では仕事で忙しい、家では母に責め立てられる、苦しみのあまりに父が選んだのは刹那的な快楽を得ることだった。母と離婚したあとのことを悟は知らない。どこかで慰謝料だの養育費だの払っているらしいこと以外、母もその影もまったく話さなかったからだ。

 悟のせいで父は父でなくなった。そして、おそらくは母もそうだった。悟のなにかが悪かったから母は母であることをやめたのだ。
 


 その日のことはいまだに夢に見る。ある日、いつものように酔っ払った母が悟の部屋にやってきたかと思うと、家から出て行くように怒鳴った。中学にも行かない、働けもしない、そんな役立たずはいらないと影も言っていた。多少の抵抗は悟もした。けれども母は許さなかった。悟の腕を痛みを感じるほどの馬鹿力で掴むなりそのまま玄関からたたき出し、音をたててドアを閉めてしまったのだ。泣いても謝っても駄目だった。どうしても母はドアを開けてくれず、小一時間ほど経ったのちに悟は諦めることにした。

 街へは行かなかった。理由はもちろんひとつ、うるさくてたまらないからだ。とにかく人のいないところへ行こうと悟は思って、それではるか昔の記憶を頼って家の少ない方へ歩いていった。歩くうちにお腹が減ったが我慢した。食べるにはお金が必要というくらいの常識はあって、盗みがいけないことだとも教えられていたので、たとえ飢え死にしてしまうとしても仕方がないと思った。いけないことをする勇気を悟はどうしても持てなかった。

 歩いて歩いて、裸足の足が痛くてたまらなくて、もう歩けないと思ってそれでも歩いて、気づけば尖った木が一列に並ぶ長い道を歩いていた。しょっぱい匂いがあたりに漂っていて、なんだろうと悟は鼻をうごめかせた。時刻は昼で、けれども人間の声はひとつも聞こえなかった。かわりになにかがざあざあと雨に似た音をたてていて、不思議に思ってその出所を探してみると、巨大な水たまりが拡がっていた。

 海じゃないかな、と悟は思った。絵本の挿絵で似たような風景を見たことがあった。右を見ても左を見ても仮定海は途切れることなく拡がっていて、しかもその奏でる音といったら、今までに聞いたことがないほど美しかった。

 悟はしばらくぼうっとその光景に見入っていたが、しばらくして妙なものを大きな岩の影にみつけた。人間である。距離は離れているが影の声なら聞こえる範囲だ。だというのに、なにも聞こえてこなかった。寄せて返す水の音以外にはなにも聞こえない。こんなことは初めてだった。

 驚いて近寄ってみて、それでも声は聞こえない。さらに近寄るとその人間がとても美しい姿をしているのが見て取れた。金の髪の頂上に丸く光が集っていて、ちらりと見えた横顔の色はどこまでも白い。まるで絵本で見た王子様のようだった。

「あのう」

 興味のまま声をかけると王子様はバネでも仕掛けられているかのような勢いで振り返った。両眼が見開かれている。その美しさにまた悟は見蕩れた。両眼はややつり上がりぎみの丸い形をしていて猫のようだ。目の縁にある短い毛は両親や悟のような濃い色をしておらず、眉毛も同じでキラキラと自ら輝いているようだった。

「おや。地元の子どもかな?」

 王子様は声さえも美しかった。なめらかな音色は心地よく、これまでに聞いたどんな声よりもやわらかで、まるで毛布にくるまれてうっとりする時の気分に悟をさせた。

「えっと、違うんですけど。あの、あなたは」
「僕は。そうだねえ。旅の者、かな」

 ますます王子様みたいなのだった。

「どうしてあなたの影は喋らないんですか?」

 悟が尋ねると王子様は首を傾げた。そうしながら、岩場から少し体を離して歩いてくる。悟の視界は背の高い王子様でいっぱいになった。

「面白いことを言うね。影が喋る。ふむ。いったいどういうことかな?」
「えっと。普通の人は喋りますよね?」

「うん?」と、王子様はさらに首を捻った。こんなに美しい人を困らせたくなくて悟は急いで説明することにした。

「だから、えっと、普通の人間は喋るじゃないですか。それでその人の影も喋るじゃないですか。こう、口がいっぱい付いてて、わーわーって。でも、あなたの影は喋らなくって、口も付いてなくって。だから俺、どうしてかなって思って」
「ふうん。僕の影は普通じゃないのか。残念」
「い、いえ! だから悪いってことじゃなくて! むしろ静かで! とてもいいと思うんです!」

 一生懸命に言うと、王子様はちらりと肩越しに背後を見てから顎を撫でた。

「じゃあ、君は僕と一緒なのかもね」
「俺があなたと? たしかに俺の影は喋りませんけど。他の人を操るっていうのかな、そういうことはできて。たぶん、あなたの影とは違うと思うんです。ほんとにたぶんですけど」

 途端、弾けるように王子様は笑いだした。体を折って、かと思えば反らして、腹を抱えて大笑いしている。驚いて身を引いてしまった悟はそんな王子様の向こうに見た。大きな水たまりがそこだけ真っ赤に染まっている。よく見ると白いものが水上にぷかぷかと漂っていて、それは見間違えでなければ肉のように見えた。牛肉や豚肉の入った白いパッケージ、それがすぐに思い浮かんだ。

「あ、やっぱりダメか。隠せないよねえ」

 見上げると王子様が目に浮かんだ涙を拭い、それでもくつくつと肩を震わせながら同じ方向をみつめていた。

「あれね。僕が食べちゃったんだ」
「お肉食べてたんですか」
「お肉はお肉だけど。人間の肉って言ったら信じる?」

 きょとんと悟は目を丸めた。まるで意味がわからなかったのだ。

「僕はね」王子様は身をかがめて言った。「吸血鬼なんだよ。わかるかな? 人間の血を食って生きる化け物。怪物なんだ。正確には血を通して魂を食ってるんだけど。まあ、細かいことはいいや。とにかく人喰いのこわーい化け物さ。君のことも取って食っちゃうかも」

 どうする、と意地悪く王子様は微笑んだ。悟は王子様の言ったことを何度も頭の中で繰り返して、どうしようかと考えてみた。お化けは怖い。化け物、それも怖い。でも、それってなにか悪いことだろうか。

 対して悟はひとつだけ理解していた。自身がとても悪いことをしたということだ。それがなにに当たるかまではわからなかったが、そうでなければ母が自分を追い出すはずはないと考えていた。

 では、そんな悪い人間であるところの悟が食べられてしまって、なにか不都合はあるだろうか。父はシンケンは要らないと言ったそうだ。どういうことか尋ねると母は吐き捨てて笑った。あんたはあいつに捨てられたんだ、と。ならばきっと、悟は父にも悪いことをしてしまったのだろう。

 そして、父母に要らないと言われた悟には行く宛がなかった。例えば童話に出てくるような船着き場、主人公がたどり着くとそこの船長が言うのだ、坊主乗ってくかい、床掃除と飯の支度をするなら乗せてやるよ、そうして船に乗った主人公は船長やゆかいな仲間と大冒険を繰り広げる――そんなことは起こらなかった。あるいは親切なおばさんやおじいさんが声をかけてくれる、坊やゆく宛がないのかい、だったらうちに住まないかい、お腹はすいてないかい、このパンをあげるからお食べ――そんなことも起こらなかった。絵本や童話に書かれていることはなにひとつ起こらず、結果として悟はここにいた。誰からも必要とされず、誰もからも声をかけられることもない、中学にも通っていない中学生として。

「食べていいです」悟は言った。「美味しいかはわかりませんが、どうぞ食べてください」

 本心からの言葉だった。もうそうと言うしか、余地というものが悟にはなかった。王子様はちょっとだけ固まっていたようだった。が、再び弾けるような笑い声をあげると軽々と悟を抱き上げた。

「素敵だ。とっても素敵だね。怪物が二人。いや、一人と一匹だ。君、僕の猟犬になるのはどうだい?」
「りょうけん?」
「さっき言ってたよね。他の人を操れるんだよね。だったら、僕と組もうよ。いやあ、困ってたんだよね。最近ときたらやたら難しくって。なにがって、そりゃ食事さ。人間の技術ってば最近じゃ上がりすぎてて。捜査をかいくぐるのも一苦労だったんだよ」王子様は悟と頬を合わせて嬉しそうだった。「スマホだのなんだのはいいんだ。僕はカメラや鏡には映らないから。でも指紋は残るし。痕跡は消せないし。ほとほと困ってたんだよ。そこにこんなかわいい子犬が現われたんだ。僕ってすごくツいてる!」

 それって俺が必要ってことかな、と悟はぐるぐる振り回されたり、体を上げたり下げたりされながら首を傾げた。王子様は満面の笑みで言った。

「僕はアーサー・バーナビー・チャールズ・ドミニク・エドガー、あとなんだっけ。ともかくAからZまでの長い名前さ! アーサーって呼んでくれ! 君は? なんていうの?」
「悟です。ただの悟」

 なんとなく、苗字を名乗るべきではない気がして悟はそうとだけ言った。

「悟! なるほど! 日本にはサトリというモンスターがいたね! たしか人間の心を読むんだっけ。あはは! なんてぴったりなんだろう! 素敵だ! 本当に素敵だね!」
「えっと、ありがとうございます?」
「必要なものはなんだって用意するよ。だって、君は猟犬。僕はご主人様なんだから。何が欲しい? 大きなおうち? 立派なベッド? ごはんは大好物だけ出してあげる。君の安全は保証するよ。君が僕の猟犬であるかぎりね!」

 ぽつんとそこで涙が落ちたのはなぜだったのだろう。ともかく、これがアーサーさんと悟の出会いだった。

   * * *

 必要とされることは嬉しいことだ。しかし、本当にそれでいいのだろうか。

 アーサーさんは宣言通りになんでも悟に与えてくれた。悟が他人の影から聞こえる声を遮断できないと知るや否や、高層マンションの上階をまるごと買い取った。天空のお城だねと笑ったかつての自分を今となっては馬鹿じゃないのかと思う。ベッドだって食事だって服だって、なにひとつ不足なかった。悟が勉強をしたことがないと言うと様々な本を買い揃えてくれて、手隙の時間をみつけては自ら算数や理科を教えてくれた。

 そうして悟は知ったのだ。知るということは不幸なことだ、と。

 アーサーさんが悟に求めることは殺人の幇助、でなければ教唆だった。獲物となる人間を悟が操って監視の目がないところまで連れてくる、それだけのことさとアーサーさんは言った。だが、その人間は喰われるのだ。血肉をすすられ、魂まで食い尽くされる。

「あの世とか転生とか。宗教が語るその後なんて知らないけど」アーサーさんはなんでもない顔で続けたものだ。「僕に喰われた人間はどこにも行けない。血も肉も骨も。綺麗さっぱり食べちゃうからね。だって、仕方ないじゃないか。そうでなきゃ僕は魂を食べられない。伝説の悪魔みたいなことはできないのさ。ほら、魂だけ抜き取って後には綺麗な肉体が残るってアレだよ。そしたら少しは救いがあるかもしれないけど。僕はこういう吸血鬼だから。最初っからこうなんだから。仕方ないじゃないか。何事も、お互い諦めが肝心ってね」

 悪いことどころではない。犯罪だ。それを今の悟は理解している。だが、どうしたって必要とされると嬉しい。そして、嬉しいと感じれば生きていたいと思ってしまうものなのだ。

 あの海辺に行かなければとは何度も思った。アーサーさんに声をかけていなければ、そもそもどこかで歩くのをやめていれば、諦めていれば、飢え死にした方がずっとマシだったじゃないかと何度も考えた。

 それでも駄目なのだ。誰の声も聞こえない快適な暮らしを味わえばどうしても離しがたい。美味いものを舌に乗せればどうしても呑み込みたいと思うように、どうしたって今生きていることを諦めきれない。それが己を必要とされているという事実に立脚していればなおのことだ。

 それに、悟はアーサーさんという存在が好きだった。美しいものに褒められると心が喜びで満たされる。また役に立ちたいと思ってしまう。そのことを知ってしまった。なおのこと諦めきれない。

 そうして、今日もアーサーさんに『食料』をお届けしたわけだ。どこまでも自分は罪深い。根本的な性根が腐り果てている。せめてと思って悪いやつを探すことにしているが、それだって無駄なあがきにすぎないことは理解している。

 この世に悪役なんていないのだ。いなくなっていい人間なんて一人もいない。あれだけ酒に溺れていた母だって、その父母にしてみれば大事な娘だろうし、もしかすると親友とか命の恩人とかだったりするわけだ。浮気をした父なんかもっとわかりやすい。浮気相手からすれば父は立派な愛する人だったはずだ。今日、アーサーさんに捧げた女だって、一方では可哀想な男を騙していた。だが、老人を助けていたように、どこかで誰かに良いことをして、必要とされていたに違いない。

 もし、完全な悪役がいるとすれば、それはアーサーさんや悟のような化け物だ。ほんの一瞬、気の迷いで誰かを助けたとしても、次の瞬間にはその誰かを調理する方法を考えているような、正真正銘の犯罪者だ。

 どうせ吸血鬼や超能力者がいなくなって困る人なんてこの世にいない。だったら、消えてしまったって構わないはずだ。アーサーさんにその意志はないようだし、悟ではアーサーさんをどうにもできないからそちらは仕方ないにしても、せめて悟がいなくなったなら世界は少し良くなるんじゃないだろうか。

「やあ、待たせたね」

 やわらかな声が上から聞こえてきて悟は顔を上げた。空中には翼もなにも生えてないアーサーさんが文字通り立っている。こういう驚きにも、もはや慣れてしまった。だが、殺人の罪深さを忘れることは向後一生ないだろうなと思う。

「こんなのいつかみつかります」

 悟は真剣に言ったのに、アーサーさんはケラケラと笑い声をあげた。

「その時は高飛びだ。行き先は、どうしよう、南国がいいかな。バカンスを楽しみながら十年も過ごせば良いのさ。その頃にはみーんな僕らのことなんて忘れてる」
「警察はそんなに甘くありませんよ」
「なーんか君、頭が固くなっちゃったな」
「だったらどうしますか。俺も殺しますか」

 挑戦的に言い放った傍から震えた手を悟は握りしめた。ちらりとアーサーさんがそれを見下ろす。拾ってから一年、まだ十四の小僧の内実などお見通しなのだろう。

「そうだなあ。君がもうちょっと歳を取ったらね。どうこうしようとは考えてるけど」息を呑む悟を面白そうにアーサーさんは見ている。「だって、精神感応者って要は人間だろ。たったの数十年で死んじゃう。それどころか、あと六年もしてごらんよ。そこが君の全盛期。あとは落ちてくばかりだよ。だからさ。そのあたりをちょこっと細工をね」
「俺を不老不死にでもしてくれるんですか。ありがた迷惑って言葉、知ってます?」
「言うようになったねえ。あーあ。一年前はあんなにかわいかったのに。子犬ってすぐ大人になっちゃうんだから」

 言いながら、アーサーさんは腰を折って手を延べてきた。悟はそれを拒むことができない。命令されてもいないのに、どうしてもできなかった。手が重なるなり力強く引き寄せられて腰を抱かれる。重力から体が解放されるにつれて、頬を撫でていた風が叩きつけるような強さに変り始めた。

「君がまだ知らないことを教えてあげよう」

 反射的に体を強ばらせた悟のことなど知らぬふりでアーサーさんは続けた。

「人間が観測してないってことは、この世にないってことなんだよ。例えば並行世界。知っているかい? ある説によるとこの世は泡のひとつなんだそうだ。丸い泡の中に銀河も星々も太陽も地球も僕たちも閉じ込められてる。その泡の向こうにはたくさんの泡があって、それぞれの中に同じように世界が拡がっているそうだ。だけど、そんなの誰も信じていない。宇宙人がいたら面白いと思うように。だけど、いないと思うように。君は本当にいると思うかい? どこかの世界に。君の並行同位体が。思わないだろう? だから、それはないんだよ。宝くじの結果を見るまで手元のくじがアタリでもハズレでもないのと同じさ。この世は人間が観測するまで形を為さないんだ」
「だけどそれはゼロではありませんよね?」
「そもそも、ゼロですらないというのが正しいね」
「でも、人間が観測すればいずれは形になるんだ。だったら、それはあるのと同じです。そして、俺たちのやったことは現実として存在する。吸血鬼も超能力者も存在する。だったら、人間はいつか到達するでしょう。ゼロですらないものをきっとイチにしてみせる」

 頑固だねえとアーサーさんは笑い声をあげた。それ以外には風の音が聞こえるきりだ。点描のように地形を描き出す光の粒とそれが作り出す影たちの声は、雲のすれすれを飛ぶ悟には届かない。

 それでもそこにあるのだ、と悟は思った。いずれ全てが明らかになる時がきっと来る。それを思うと恐ろしいけれど、それでも絶対に恐れを表わすまい。全ての悪を宿したような顔で、せめて笑ってやろう。化け物と成り果てた己がこの世に善きことをもたらせるとしたら、それ以外にないに違いないから。

 アーサーさんはまだ笑っている。きっと明日も笑っているだろう。その隣には悟がいて、彼に獲物を捧げるに違いない。たしかなことはこれだけだ。今はまだ、これだけしか持ち合わせがない。

 やがて黒々とした四角い影が迫ってきた。星々を覆うその影は下方に小さな星を抱いて、けれどもずっしりとした闇に押し潰されて静かである。その一角、バルコニーに降りたって静謐の中に沈むリビングを見渡してアーサーさんは言った。

「おかえり、悟」

 悟はただ目を閉じて抗った。今はそれだけが悟にできることだった。

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保坂星耀
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