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週刊オールライター第116号「MLBと産業」

イチロー氏の殿堂入りが決まって久しいMLB(メジャーリーグ・ベースボール)。実はこのMLBは、アメリカの産業とも関わっているということをご存知ですか?
今回は、MLBと産業の結びつきを、日本でも有名なチーム2つを事例に挙げてご紹介します。

1. シアトル・マリナーズと任天堂 シアトルは日系企業の街でもある‼︎

MLB全30球団の中で、最も多くの日本人が在籍したシアトル・マリナーズ。NPBを経由せずにMLBデビューを果たした初の日本人であるマック鈴木氏(1996〜1999)を皮切りに、大魔神と呼ばれた守護神・佐々木主浩氏(2000〜2003)、背番号51が永久欠番になった日米通算4367安打の世界最高の安打製造機・イチロー氏(2001〜2012、2018〜2019)、オリックス時代にイチロー氏ともチームメイトだった長谷川滋利氏(2001〜2005)、お笑いタレントの明石家さんまさんと交流が深いことで知られる木田優夫氏(2004〜2005)、アジア人初のMLB捕手である城島健司氏(2006〜2009)、現在は独立リーグでプレーする川崎宗則内野手(2012)、ノーヒットノーランを達成した岩隈久志氏(2012〜2018)、複数球団を渡り歩いた安打製造機・青木宣親氏(2016)、現ロサンゼルス・エンゼルスの菊池雄星投手(2019〜2021)、現オリックス・バファローズの平野佳寿投手(2020)と、その数なんと11人にも及びます。その要因として、「シアトルが日系人の多い街だから」という理由があります。ボーイングの本社工場があることから航空産業のイメージが強いと思いますが、明治時代に日米間の定期航路がシアトルを拠点に就航して以降、日本人・日系人が多く住む街になったという歴史的背景があります。それ故、日本系企業のアメリカ支部も多く存在しています。イチロー氏と親交の深いスポーツジャーナリスト・俳優の義田貴士さんが出版した「イチロー 果てしなき夢」を読んだことがあるのですが、その中にイチロー氏がマリナーズ入りを決めた背景として「シアトルが日系人の多い街であること」がしっかり掲載されていました。
実は、シアトルに日本系企業が多いことがきっかけで、マリナーズの経営にとある日本企業が関わっていたことがあるのを知っていますか?
それは、任天堂です。実はマリナーズ、1990年代前半に経営危機に陥ったことで本拠地移転が取り沙汰されていました。これを食い止めたのが任天堂でした。当時の任天堂社長の山内溥氏が買収を表明。任天堂が経営に参画した結果、移転を阻止できたのです。また、これにより山内氏はMLB史上初のアジア人オーナー(非白人初のMLB球団オーナー)になったのでした。これが理由でキャスティングができたのだと思いますが、佐々木主浩氏が携帯ゲーム機「ゲームボーイカラー」の通信用アダプターである「モバイルアダプタGB」のCMに、イチロー氏がテレビゲーム機「ニンテンドー ゲームキューブ」のCMに出演しています。また、MLBの試合が地上波局系のBS・CS放送で中継される際に使用される球場広告の差し替えCGが、任天堂のゲーム機の広告になっていたりもしました。


イチロー氏が出演したゲームキューブのCM。

その後、2016年に任天堂は球団の株式をほぼ手放し、球団経営から撤退しました。

2. ディズニーが経営に参加したチームがあった‼︎

世界の映画業界を牽引するウォルト・ディズニー・カンパニー。その本拠地はロサンゼルスにあります。「ロス」や「LA」とも表記されるロサンゼルスは、ディズニーのみならず、様々な映画会社が軒を連ね、さらにはハリウッドまであります。そんなロサンゼルスに本拠地を置く「赤い野球チーム」を知っていますか。ロサンゼルス・エンゼルス(LAA)です。2018年から2023年まで、二刀流・大谷翔平選手が在籍していたチームです。エンゼルスの日本人選手は、大谷選手以外にも、先ほども登場した長谷川滋利氏(1997〜2001途)、「ゴジラ(GODZILLA)」こと松井秀喜氏(2010)、酒にまつわるエピソードが有名な高橋光成氏(2011〜2012)、アマチュアFA(※)でMLBデビューした初めての日本人である田澤純一投手(2018)が在籍したことがあり、今年からは、大谷選手の高校の大先輩でもある菊池雄星投手がプレーすることになっています。

※MLBでのアマチュアFAとは、MLBドラフト対象国以外の国出身の16歳以上の選手のことです。田澤純一投手の場合はアマチュアFAとなりますが、マック鈴木氏の場合は、練習生からの昇格で契約しているので、これに含みません。

そんなエンゼルスですが、過去にディズニーが経営していたことをご存知ですか。1996年から2003年までの短い間でしたが、この7年間ディズニー傘下にありました。この間の2002年に、エンゼルスはワールドシリーズを制覇しており、優勝パレードをディズニーランドで実施しています。MLBの歴史上唯一となる、球団を
経営する会社のテーマパーク内で実施したワールドシリーズ優勝パレードです。ディズニーだからこそ、大がかりなパレードを実施することができたのですね。

むすびにかえて

今回は、MLBと産業の結びつきを、日本でも有名なシアトル・マリナーズ、ロサンゼルス・エンゼルスの2チームを事例に挙げてご紹介しました。プロスポーツチームと産業は、どの国もそうですが、結びつきは少なからずあるものです。これは、地理の勉強方法としてとても有効です。ぜひ、試してみてください。

それではまた。


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