週刊オールライター第72号 「あの感動から1年経過! WBC戦士の現在地(いま)」
昨年3月21日、何があったか覚えていますか?
答えは、「第5回WBC決勝」です。史上初の日米決戦となったこの大会で、指名打者解除となった大谷翔平選手が当時同僚だったマイク・トラウト選手を空振り三振に倒し、世界一を奪還した記念すべき日です。
あれから1年。すでにMLBが開幕し、NPB(日本プロ野球)もまもなく新シーズンが始まります。ということで今回は昨年の感動を呼び込んだ彼らの現在地を紹介します。
1. 第5回WBC日本代表の特徴
この大会の日本代表は、これまでの4大会と比べるとかなり異質なチームでした。
その中でも大きな特徴といえば
・大谷翔平選手の二刀流での参戦
・初の日系選手の招集
この2つが挙げられます。
まず、大谷選手の二刀流での参戦ですが、これは大谷選手にあった強い意志とその理由から話しましょう。大谷選手は2022シーズンに本格的な二刀流として大成功を収め、2001年のイチロー氏以来日本人2人目となるシーズンMVPをはじめとする数々の賞を総なめにしていましたが、その上でなお
「真の世界一決定戦であるWBCでてっぺんに立つ」
という固い意志を持っていたことで、世界一になる前の一番最初の準備の段階から侍ジャパン運営側は日本代表監督の選考から何から「大谷招集」を第1目標としていたほどです。大谷選手の日本ハム時代の監督で「育ての親」でもある栗山英樹氏が監督に抜擢されたのはこのためです。栗山氏も渡米して交渉した結果、何の大きな弊害もなく大谷選手の招集が決まったのです。
次に、日系人選手の初招集ですが、これは過去に前例のないことであったのでかなり議論を巻き起こしました。過去の大会を振り返ってみても、出生国とは関係なく他国の代表に選ばれた選手はアメリカ代表やメキシコ代表などに山ほどいます。
これは
・自身または親がその国の国籍を持っていること
・その国で2親等の親族が出生したこと
このいずれかの条件を1つでも満たせばナショナルチームの選択権が与えられます。
今回栗山氏は日本人選手以外にも目を向けて選考していました。この結果、セントルイス・カーディナルスに所属するラーズ・ヌートバー外野手が選出されたのです。ヌートバー外野手は母が日本人であるという理由で日本代表入りの資格を満たしています。
ちなみに、ヌートバー外野手の母・久美子さんの出生地は筆者の故郷の埼玉県です。
2. その後の彼らの動向
それでは本題に入ります。WBC祝勝記事と同様の紹介文スタイルで、彼らのその後を紹介します。
なお、山川穂高選手に関しては昨シーズンに書類送検される不祥事を起こしており、私自身かなり感情を揺さぶられてしまったこともあってどうしても私情を挟んでしまうので選手リストから削除しました。
紹介見方
名前
①背番号
②所属球団(→移籍先)
③ポジション
④プロフィール
ダルビッシュ有(本名 ダルビッシュ・セファット・ファリード・有)
①11
②サンディエゴ・パドレス
③投手
④「精神的支柱」として活躍した最年長。自らが胴上げ投手になった2009大会を知る唯一のメンバー。3試合に登板し4失点であったが、精神的支柱としての役割を全うした。また、球界きってのゲーマーでもある。
戸郷翔征
①12
②読売ジャイアンツ
③投手
④2018年ドラフト6位指名も、ポテンシャルの高さでエース格にまで上り詰めた。落差の大きいフォーク、ドロップカーブ、縦・横のスライダーと切れ味抜群の変化球を操り、野球ゲーム「プロ野球スピリッツA」愛好家からも好まれる。初戦の中国戦でロングリリーフした他、日米決戦でも好リリーフ。ちなみに「戸郷」という苗字は珍苗字らしい。
松井裕樹
①13
②東北楽天ゴールデンイーグルス→サンディエゴ・パドレス
③投手
④高校時代から注目された名左腕で、故・星野仙一監督時代を知る数少ない選手。不動のクローザーとして最多セーブも獲得している。彼の武器である縦スライダー(筆者曰く「松井裕樹スライダー」)は縦に落ちながら横にもスライドするが故、全く打てない。そんな彼は今季より海を渡り、ダルビッシュと同僚になった。果たして、松井裕樹スライダーは脅威となれるか。
佐々木朗希
①14
②千葉ロッテマリーンズ
③投手
④説明不要「令和の怪物」。昨季は史上最年少完全試合までやってのけた大船渡が生んだ次世代最強投手。3.11にあったチェコ戦でマウンドに上がり、死球を当ててしまった選手へ謝罪するため、宿舎に大量のお菓子を持って訪れるなどのナイスガイさも見せつけた。準決勝のメキシコ戦でも登板している。
シーズンオフにMLB挑戦を巡ってひと騒動あったものの、まずは今季の活躍を見守ろう。
大勢(本名 翁田大勢)
①15
②読売ジャイアンツ
③投手
④初見では読めない珍苗字の持ち主であるが故、登録名を用いるジャイアンツの若きクローザー。2022年の新人王。サイドスローから火を吹く160km/h級の豪速球とキレのある多彩な変化球を操る。日米決戦にも登板し、危ない場面を作ってしまうものの、なんとか抑えた。この場面についてアメリカの監督マーク・デローサは今永と共に「手強かった投手」として取り上げて舌を巻いている。阿部体制になった今季も活躍できるか。
大谷翔平
①16
②ロサンゼルス・エンゼルス→ロサンゼルス・ドジャース
③投手・外野手(二刀流)
④日本が世界に誇るスーパースター。野球に存在した「概念」を全てぶち壊す規格外の男。性格の良さも評価の一つ。今大会では全ての試合で「3番・DH」で出場し、中国相手に開幕投手も務めた。決勝の日米決戦では9回にDH解除で抑えとして登板。先頭を歩かせるも1番・ベッツ選手を併殺に倒し、自身の同僚である2番・トラウト選手と対決。フルカウントからの6球目、外角に逃げる高速スライダーで空振り三振を奪い、胴上げ投手・大会MVPとなった。
そして始まった昨シーズンは勢いに乗り、なんとアジア人初のMLBでのホームラン王という歴史に名を残す大偉業を成し遂げてしまった。それを置き土産にエンゼルスからFAとなり、今季からは同じロサンゼルスの本拠地を置くドジャースでプレー。さらに先日、元女子バスケットボール選手と結婚していたことを公表した。
今季は肘の故障の影響で打者に専念する。この記事の執筆中に身内の大不祥事で心に大きな傷を負ってしまったことがかなり気がかりだが、ホームランをたくさん飛ばす元気な姿を見たい。
伊藤大海
①17
②北海道日本ハムファイターズ
③投手
④ロン毛が似合う北の若きエース。東京五輪金メダリスト。五輪期間中にロジンを大量につける姿が話題になり自らTwitterに「#追いロジン」と投稿すると流行語と化した。チームの大先輩である多田野数人氏を彷彿とさせる超スローボール「イーファスピッチ」など、変化球も多彩。今季もエースとして新庄監督を輝かせられるか。
山本由伸
①18
②オリックス・バファローズ→ロサンゼルス・ドジャース
③投手
④3年連続投手4冠という偉業を成し遂げた日本のエース。2年連続ノーヒットノーランという金田正一氏以来の偉業も達成、2年連続沢村賞を置き土産にポスティングシステムを行使。大谷が交渉に参加したことが決め手となってドジャースブルーのユニフォームに袖を通すこととなった。
なお高校時代は無名だったので、平成・令和のプロ野球におけるシンデレラストーリーとも言えよう。
栗林良吏(プールB終了後離脱)
①20
②広島東洋カープ
③投手
④広島不動のクローザー。腰のコンディション不良で登板がないままプールB終了後に山﨑颯一郎と交代で登録を抹消された。
昨季は一時、矢崎拓也に守護神を奪われたので今季は奪い返しができるかが鍵となるだろう。
今永昇太
①21
②横浜DeNAベイスターズ→シカゴ・カブス
③投手
④日米決戦の先発を任されたサウスポー。あだ名は「投げる哲学者」。2021年にノーヒットノーランを達成した際の表情が冷静だったことは有名。彼もまた山本由伸と同様ポスティングシステムを行使し、怪我で大会を辞退した鈴木誠也と同僚になった。
湯浅京己
①22
②阪神タイガース
③投手
④今季の虎のクローザー・セットアッパー候補。「京己」と書いて「あつき」と読む。独立リーグ出身の苦労人。昨シーズンは「アレ」を通り越して「アレのアレ」を達成した阪神だが、彼は大怪我に苦しんで一軍での登板機会が少なかった。その悔しさから「アレ旅行」を辞退してトレーニングを行ったという。今期は復活をかけて臨む。
宇田川優希
①26
②オリックス・バファローズ
③投手
④フィリピンと日本のハーフ。2022シーズン途中に支配下登録されたばかりの期待の若手。縦に落ちるボールと直球に自信を持つパワーピッチャー。昨季は勝ちパターンの一角として申し分なしの活躍。日本シリーズでは阪神打線に捕まったが、今季も期待は大きい。
高橋宏斗
①28
②中日ドラゴンズ
③投手
④20歳の若手。日米決戦では3番手で登板するも、現地の法律の関係でシャンパンファイトに参加できなかった。昨季は勝ち星に恵まれず7勝11敗と悲惨な数字に終わったが、今季は二桁勝利と一つだけでも勝ち越しをしてもらいたい。
宮城大弥
①29
②オリックス・バファローズ
③投手
④沖縄出身の左腕。2021年新人王。童顔で人気を博す。大会期間中、妹が観戦に来る度にSNSが賑わうこととなり、その結果彼女はスカウトされてタレント・モデルデビューするというとんでもない余波を生み出してしまった。
今季は、山本由伸が抜けたオリックスの先発投手陣を支えられるかが鍵となりそうだ。
高橋奎二
①47
②東京ヤクルトスワローズ
③投手
④ノーラン・ライアン、または同僚である小川泰弘に似たフォームが特徴の「左のライアン」。妻は元AKB48・板野友美。妻からは「けけ」と呼ばれている。
山﨑颯一郎(追加招集)
①63
②オリックス・バファローズ
③投手
④栗林の離脱で予備登録から招集された「吹田の主婦」。昨季マークした160km/hの豪速球が持ち味。登板機会が与えられなかったものの、「良い経験になった」と笑顔で金メダルを持ち帰った。
今季も持ち味の豪速球でフル回転する。
甲斐拓也
①10
②福岡ソフトバンクホークス
③捕手
④育成契約から這い上がった日本を代表する強肩捕手。2019年のプレミア12、2021年の東京五輪など、国際大会での経験も豊富。ソフトバンクでの背番号19は故・野村克也氏にあやかってつけたもの。まだまだ正捕手の座は譲らない。
大城卓三
①24
②読売ジャイアンツ
③捕手④
打力が自慢の捕手。ときとして一塁を守ることもある。依然として正捕手が定まらない巨人で正捕手としての地位を今季こそ、今季こそ築けるか。
中村悠平
①27
②東京ヤクルトスワローズ
③捕手
④2015年のリーグ優勝、2021・2022年のリーグ連覇を正捕手として支えた。顔が四角い。背番号27はチームの大先輩である名捕手・古田敦也氏にあやかったもので、2021年シーズン終了後に球団から提示された。
気がつけば彼も33歳の中堅で、筆者と同い年の内山壮真が台頭しつつあるが・・・。
山田哲人
①1
②東京ヤクルトスワローズ
③内野手
④言わずと知れた「ミスタートリプルスリー」「ミスター国際大会」。東京五輪MVP。今大会も重要な場面で輝くなど、中堅に差し掛かったがまだまだ若手には負けられない。
源田壮亮
①2
②埼玉西武ライオンズ
③内野手
④「たまらん」守備が特徴の守備職人。韓国戦で骨折する不運に見舞われるも最後までチームに帯同した。そのため、指の曲がりがおかしくなるという大きな代償を背負ってしまった。それでも守備力の高さは昨季も光った。
妻は元乃木坂46・衛藤美彩。筆者は交際発表後しばらく彼のことを「彼氏」呼びしていた。
牧秀悟
①3
②横浜DeNAベイスターズ
③内野手
④ルーキーイヤーから活躍する中距離打者。ホームランを打った後の「デスターシャ」パフォーマンスでお馴染み。大会でも2度披露した。
昨季オフ開催のアジアプロ野球チャンピオンシップではWBC戦士として唯一参加し、優勝している。
牧原大成(追加招集)
①5
②福岡ソフトバンクホークス
③内野手・外野手
④オープン戦で故障した鈴木誠也に変わって追加招集された。内外どこでも守れるユーティリティさが武器。
中野拓夢
①7
②阪神タイガース
③内野手
④守備範囲は広いが粗さも多い内野手。昨季は岡田監督により二塁手へコンバートされた。骨折で一時スタメンを外れた源田に変わってスタメンに入り盗塁を全て決めてあわや大会盗塁王かと騒がれた。
昨季は名手・菊池涼介(広島)を抑えてのゴールデングラブ賞という快挙も達成。とはいえ、まだ荒削りな部分もあるので技術を磨いて見返してもらいたい。
岡本和真
①25
②読売ジャイアンツ
③内野手
④由緒ある(?)巨人の4番。大会でも本塁打を放つ活躍を見せた。意外なことに国際大会への招集はこれが4度目。
村上宗隆
①55
②東京ヤクルトスワローズ
③内野手
④史上最年少三冠王、日本人最多シーズン本塁打記録を引っ下げて代表入りも不振。イタリア戦から復活の兆しを見せ、メキシコ戦でサヨナラタイムリー、日米決戦では同点弾を放って復活した。まさに「村神様」である。
開幕前の欧州チームとの強化試合でも4番に座った燕不動の主砲は今季も神になれるか。
近藤健介
①8
②福岡ソフトバンクホークス
③外野手・内野手・捕手
④昨季オフに日本ハムからFA移籍。2017年には怪我さえなければ打率4割を達成したかもしれないくらいのバットコントロールの良さと選球眼の良さに定評がある。全試合「2番・ライト」でスタメン。
昨季はあわや三冠王という活躍。今季も主軸として奮闘する。
周東佑京
①9
②福岡ソフトバンクホークス
③外野手・内野手
④2018年シーズンに支配下登録された脚のスペシャリスト。2019プレミア12で代走で大活躍し、その勢いそのままに2020年に盗塁王を取る活躍を見せ、2021年は不振も昨季復活し、今大会でもメキシコ戦でサヨナラのホームを踏むなど、存在感を発揮した。
ラーズ・ヌートバー(日本名 榎田達治)
①23
②セントルイス・カーディナルス
③外野手
④初めてとなる「日系サムライ」。人柄の良さ、2試合にわたるスーパーファインプレー、トップバッターとして文句なしの選球眼・出塁率で疑問や批判を全て黙らせた。母の久美子さんも独特のキャラクターで人気を集めた。大会後は、Zoffや森永製菓のCMキャラクターにも抜擢されただけでなく、年末には「珍プレー好プレー大賞」をはじめとする特番にも多く出演するほど多くの注目を集め、スポーツ記事にされやすくなった。そんな「たっちゃん」は次回のWBCも侍ジャパンでの出場を目論んでいるとか。
吉田正尚
①34
②ボストン・レッドソックス
③外野手
④北陸からボストンにやってきたマッチョマン。本大会では元ヤクルトのバレンティン氏が持っていた大会最多打点記録を準決勝で更新。
昨季は一時首位打者争いに絡むも残念ながら打率3割を切ってしまった。今期こそ3割を目指す。
むすびにかえて
今回は、昨年のWBC戦士の現在地、つまり今何をしているのかをご紹介しました。
今年度も頑張ってください!!
お知らせ
それではここでお知らせです。本来であれば次回は月末の配信ですので、「月のまとめ」と称し、その月に起きたニュースを紹介する企画をしていましたが、ここ最近表現方法に大きく悩むことが多くなり、
「それは貴方の感想です」
と言われても仕方ないような質問をしてしまうことが多くなりました。そのためこの状態でニュースに関する持論を言い続けるのは危険を判断し、次回以降「月のまとめ」は執筆致しません。ご承知の程お願いいたします。
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