見出し画像

週刊オールライター第109号「路面電車と地下鉄を直通運転⁉︎」

突然ですが皆さんは、「路面電車」「地下鉄」と聞いて、どんなものを想像しますか?

地下鉄の例
(名古屋市営地下鉄名城・名港線)
路面電車の例
(都電荒川線・東京さくらトラム)

おそらく、写真のような車両や路線を想像されると思います。

では質問です。路面電車と地下鉄の乗り入れ運転はあると思いますか?

恐らく、ほとんどの方は「ない」と答えると思います。しかし実は、存在します。しかも日本に。そこで今回は、日本で唯一の「路面電車と地下鉄の乗り入れ運転」である、京阪京津線と京都市営地下鉄東西線を直通する運用と、その運用を担当する京阪800系電車を特集します。京阪京津線、本当に面白い路線です。ぜひ最後まで見てください。


1. 路面電車の定義

路面電車と通常の鉄道は、適用される法律が違います。通常の鉄道は「鉄道法」が適用されますが、路面電車は「軌道法」という法律が適用されます。簡単に言えば、「適用される法律が違う」とまとめることができます。基本的に道路の上に線路を敷くことが定められています。
実は、京阪京津線とそれに接続している石山坂本線(2路線を総称して「大津線」とも)の適用されている法律は「軌道法」です。なので、京津線と石山坂本線は路面電車扱いです。

2. 京阪京津線・石山坂本線はなぜ路面電車と扱われる?

おそらく、皆さんはこの時点で
「なぜ京津線・石山坂本線は路面電車の扱いなの?」
と思われていらっしゃるでしょう。京津線で運転される800系と石山坂本線で運転される600系・700系は車体長を除くサイズがほぼ通常の鉄道車両と同じ(京阪本線とほぼ同じ建築限界、地下鉄乗り入れにも支障のないサイズ)ですし、客扱いを行う場所も「駅」として案内されます。しかし、先述の通り京津線・石山坂本線の実態は軌道法に基づく「路面電車」です。なので、600系・700系・800系は「路面電車車両」、御陵駅を除く京津線と石山坂本線の「駅」は「停留所」の扱いです。この理由は、元々この2路線が大正元年(1912)から昭和2年(1927)にかけて路面電車として開業して以降、適用される法律の変更手続きをとっていないからです。このため、京津線・石山坂本線は軌道法の「例外」として扱われます。

きかんしゃトーマスのラッピングがされた石山坂本線600系。
600系は、地下鉄乗り入れが始まる前の京津線で急行や準急として運用されたこともあります。

3. 京阪京津線と京都市営地下鉄東西線を直通する列車が誕生したきっかけ

京阪京津線が地下鉄と直通する特殊な運用をするようになったきっかけは、京都市営地下鉄東西線の建設計画です。京津線の御陵〜三条の地下を地下鉄東西線の線路が通ることになった際、公営鉄道と民営鉄道の線路がほぼ同じルートでピッタリ並行して敷設するという状況は相応しくないと判断され、どちらかに絞らないといけなくなりました。その結果地下鉄が優先されたため、京津線は平成9年(1997)の東西線開業に伴い、路線縮小を余儀なくされました。その路線縮小の代替として、京津線の路面電車が通常規格の地下鉄に乗り入れてくるという日本初の形態が取られることになりました。当初は路線縮小の代替という意識が強かったため、京阪電車の乗り入れは京阪本線三条駅との乗り換え駅として設けられた三条京阪駅までを想定していましたが、カーブの関係で折り返し設備が作れなかったため、一つ隣の京都市役所前駅までとされました。しかし、京都市役所前駅は東西線と烏丸線が十字に交差する烏丸御池駅の一つ手前にあり、京津線直通列車が烏丸御池駅まで乗り入れないことから、地下鉄単体で見た場合の利便性は悪いものとなりました。その結果、平成20年(2008)に東西線が二条駅から太秦天神川駅まで延伸したと同時に京阪電車も太秦天神川駅まで乗り入れ区間を延長しました。ちなみに、京都市営地下鉄東西線を走る50系は、4両編成の800系より長い6両編成であるほか、800系より頑丈ではないので、京津線には乗り入れできません。

京都市営地下鉄側の車両50系。
東西線全駅にフルスクリーンホームドアが設置されている関係で、顔が綺麗に見れるのは蹴上〜御陵の前面展望だけです。

4. 「日本最強の路面電車」 京阪800系電車について

ここで、京津線と東西線の直通運転に使用される京阪800系電車を紹介します。この電車を一言で表すとすると、「日本最強の路面電車」です。野球で言えばソフトバンクの柳田悠岐外野手や元西武・ダイエーの秋山幸二氏のような「5ツールプレイヤー(ミート・パワー・走力・肩力・守備力全てが高水準で揃っている選手)」です。何が最強かといえば、「40‰級の急勾配」や「最大で25km/hまで制限がかけられるきつい急カーブ」が多く、おまけに道路の上を走る区間もあるという特殊な路線環境を持つ京津線に適しただけでなく、地下鉄乗り入れ運転もこなせるという、まさに「どんな路線環境でも走れる電車」だからです。

京津線800系。

また、800系は全国的に見ても珍しい設備が車内に2つあります。
1つは、座席の向きが異なる2+1の集団離反式固定クロスシートが設置されている点です。地下鉄車両にクロスシートは大変珍しく、京都市営地下鉄東西線以外で「(特別料金不要の)クロスシート車が走る路線」は都営浅草線、名古屋市営地下鉄上飯田線、大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)中央線の4路線だけです。

もう1つは、「京阪型跳ね上げ式吊り革」の採用です。持ち手を持つと、付け根部分に設置されたバネが動いて持ち手部分が下がるというギミックになっています。この技術は、京阪電気鉄道が特許を取得していることからファンの間では「京阪型跳ね上げ式吊り革」とも呼ばれます。

特許で作った吊り革。

むすびにかえて

今回は、日本で唯一の「路面電車と地下鉄の乗り入れ運転」と、その運用を担当する京阪800系電車を特集しました。京阪京津線はとても面白い路線です。琵琶湖観光をするのであれば、京津線にも乗るべきだと思います。ぜひ、乗ってみてください。

それではまた。

いいなと思ったら応援しよう!